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坂口健太郎が追いかける“警察としてあるべき姿” 『シグナル』キーパーソンが変化

2018年05月16日 07:01  リアルサウンド

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 主要キャラクターのひとりであった桜井美咲(吉瀬美智子)の死で急展開となった『シグナル 長期未解決事件捜査班』(関西テレビ・フジテレビ系)の第6話。工藤雅之(平田満)の身に起きた娘の事故死や、工藤が現代で起こしている誘拐事件、さらに連続窃盗事件には真犯人がいることなど明らかになったことが多く複雑なストーリーとなった。


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 三枝健人(坂口健太郎)は大山剛志(北村一輝)から、連続窃盗事件の犯人とされていた工藤雅之は誤認逮捕であったと聞く。しかし、真犯人が判明する前に、工藤が現代で起こした誘拐事件の捜査中に桜井が殉職してしまう。桜井の死後、連続窃盗事件の解決に一層力を入れる健人。そのことで新たな事実が見えてくるのであった。


 連続ドラマの後半戦に入ったばかりだというのに、呆気なく殉職してしまう桜井に驚いた視聴者も多いのではないだろうか。桜井を必死で追いかけるスローモーションの健人の姿、ストレッチャーにのる布のかけられた遺体からずるりと落ちる桜井の左腕など、恐怖や悔しさ、精神的苦痛を与える演出の過剰さには目を背けたくなった。


 しかし、それらの演出で得られる苦しみを全て背負っていたのが健人ひとりではなく、岩田一夫(甲本雅裕)もまた同じように強い苦しみを感じていたとわかるシーンもあり、ドラマに新たな展開を予感させる風を吹き込んだ。岩田を演じる甲本の震える手や苦悶の表情は、セリフこそ少なかったが十分に感情が伝わる迫力があったと感じる。前半ではほとんど物語に絡んでこなかった岩田が、今後の展開で重要なキーパーソンになることは予告などからも予想できる。第6話での甲本の好演は、第7話以降に期待したくなる熱い芝居であったので今後の展開に注目していきたい。


 さらに、桜井の死後、廊下で三枝が事故について回想する場面では、炎の中の少女の姿に桜井の姿が重なるなど細かい部分でも精神的ショックをうかがわせる演出があった。これは、本来であれば工藤が矢部英介(小須田康人)に背負わせたかった苦痛を健人が背負ってしまったという事実を突きつけるような象徴的なシーンであったといえるだろう。


 事件後、「真犯人を捕まえれば未来を変えられる」と信じ、再度大山との通信を再開し、連続窃盗事件の真相解明に尽力する健人。桜井を亡くす事故をきっかけに、「事件は“解決”することが必ずしも正しいあり方なのか?」を問われるような物語が続く。上層部の圧力を受けて、強引に“解決”してしまった事件の歪みを、現代から正していくことは本当にあるべき姿なのか。思わず考えさせられる命題が浮き彫りになる。健人自身も、そして大山までも、無線を使って過去と未来を変えていくことに疑問や不信感を募らせている。


 そんな中、彼らが唯一信じているのは「警察としてあるべき姿」の追求ではないだろうか。時代は違えど目指している部分が重なっている彼らだからこそ、何かを変えられるかもしれない。思わず淡い期待を抱いてしまう。今後の展開で、彼らの追求する「警察としてあるべき姿」への考え方の変化にも注目していきたい。(Nana Numoto)