2018年05月15日 19:42 弁護士ドットコム
女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社スマートデイズが経営破綻した問題で、改ざんされた書類を融資審査に使ってオーナー(物件所有者)に融資していたと指摘されるスルガ銀行(静岡県沼津市)は5月15日、事態の重大性に鑑み、第三者委員会を設置して事案の徹底調査と原因究明を進めると発表した。
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第三者委は、中村直人弁護士を委員長に計4人の外部弁護士で構成。「説明責任を果たすため、当社から完全に独立した中立・公正な専門家のみで構成」(スルガ銀行)としている。調査をいつ完了させるかは第三者委に一任し、調査が終わり次第、すみやかに調査結果を公表するという。
NHKなどの報道によると、スルガ銀行の米山明広社長は5月15日に沼津市で開いた記者会見で、預金残高などの書類における改ざんなどの不正について、「相当数の行員が認識していた可能性がある」とする内部調査の結果を明らかにした。
スルガ銀行がこの日開示した2018年3月期決算は、融資を回収できないリスクが高まったとして多額の貸倒引当金を計上した影響で、純利益は210億円(前年同期比50.5%減)だった。高い収益力を評価する見方は少なくなかったが、今回の問題が業績に大きく影を落とした。
一方、東京・霞が関の司法記者クラブでは5月15日、オーナー側を支援する弁護団が会見に臨んだ。スルガ銀行や販売会社を対象とする刑事告発が5月21日以降になる見込みだと明らかにした。当初は5月14日にも刑事告発をする方針だったが、警視庁との協議を踏まえ、21日以降になりそうだという。
スルガ銀行が設置を決めた第三者委員会は、これまで弁護団が強く求めてきたものだ。山口広弁護士は「本件に関する一切の事情が明らかになることを期待したい」。弁護団として、金融庁に対し、スルガ銀行に対して厳正な行政処分をすみやかにするよう、申し入れを行なったことも付言した。
河合弘之弁護士は「最も犯罪性が強いのはスマートデイズで、最も責任が重いのはスルガ銀行だと考えている。なぜなら、スルガが関与しなければこのような大規模な詐欺的仕組みはあり得なかった。スルガがまともなら、このようなシェアハウスは売れることもなかった。スルガが融資してくれるから、みんな信用して入っていった」と指摘した。
弁護団は、スルガ銀行の決算をチェックする監査法人の対応にも苦言を呈した。
紀藤正樹弁護士は「監査法人から、スマートデイズの被害者に対する照会がされていないことに被害者側は不満をもっている。監査法人が決算に適正意見をつけようとすれば、紛争になっている債権について具体的な調査をするのが一般的だ。その調査がされていないのが現状。警察の捜査を踏まえれば、犯罪性は明らかだと容易に想像ができる」と話した。
この問題では、オーナーとなった会社員らに破産者が続出しかねない深刻な事態が続いており、自殺者が出たことも伝えられている。「長期の家賃保証」をうたうスマートデイズを信じ、多くの会社員は賃料収入を頼りにしてスルガ銀行から1億円超の融資を受け、シェアハウスを建築した。受け取るはずだった賃料収入は2018年1月に一方的にゼロにさせられた。
弁護団によると、5月15日付で、スマートデイズは東京地裁より破産宣告を受けた。山口弁護士は「破産宣告により、スルガ銀行の主体的関与を含む真相がさらに解明されることを期待する」と語った。
(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama
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