2018年05月15日 16:32 弁護士ドットコム
5月4日から6日にかけて徳島市内で開催されたアニメイベント「マチ★アソビ」に関連して、ある男性が飲食店のトイレ個室でおこなったとされる迷惑行為が、インターネット上で批判された。事態を重く見たイベント運営側の徳島県などは5月8日、参加者に対して「節度ある行動」をもとめる声明をホームページ上で発表した。
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「マチ★アソビ」は、アニメやゲームの複合型イベントで、2009年から徳島市で開催されている。人気アニメーターや声優が登壇するなどして、人気となっており、徳島県によると、今年は8万人以上の来場があったという。
ところが、ある男性がツイッターで、イベントに参加していた声優、高田憂希さんが使用した直後のトイレの個室に入ったと報告したのだ。すでに投稿は削除されているが、徳島市内の飲食店のトイレで、手で便座を触る画像とともに「高田憂希さんのお尻を触っている気分になってる」と投稿していた。非難の声が集まり、ネットで炎上した。
こうした事態を受けて、総合プロデューサーの近藤光氏と飯泉嘉門・徳島県知事は連名で、「開催期間中に、徳島市内の飲食店にて迷惑行為があったとされる件をWEB上で目にしました。もし本当にこういった行為が行われたのであれば、大変残念に思います」として、参加者に向けて「節度ある行動」をもとめた。
徳島県の担当者によると、あくまでウェブ上の情報ベース(ツイッターとネットニュース)でしか、事実を確認していないが、すでに県警に相談しているそうだ。徳島新聞によると、近藤氏と県職員が5月9日、徳島中央署を訪れて、男性の特定と本人への注意喚起を要請したという。
ネット上では、男性に対する非難の声があがっているが、はたして何らかの罪に問われるのだろうか。わいせつ事件にくわしい奥村徹弁護士は「刑法の建造物侵入罪に問われる可能性がある」と話す。
建造物侵入罪は、(1)正当な理由ないのに、(2)人が看守する「建造物」に、(3)侵入した場合、成立する(刑法130条)。今回は飲食店のトイレだったようだが、たとえ客であったとしても、用を足す目的でないのにトイレに入った場合は、この罪が成立する可能性があるというのだ。
なお、軽犯罪法では、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」も罰せられることになっている(同法1条23)。今回の行為は、この条文に触れないのだろうか。
「『ような場所』とは、衣服をつけないでいる可能性があれば足りるとされています。そのような場所であれば、人が衣服をつけていないかどうか、人がいるかどうかも問われません」
「堂々と個室に入って撮影した場合が『のぞき見た』といえるかが問題になりますが、最近では女性がふつうの入浴客のように公衆浴場に入り、持参のカメラをタオルで隠して、入浴中の女性らの裸体を撮影する行為についても『ひそかにのぞき見た』とする実務家の見解もありますので、警察が窃視罪を適用する余地もあると思います」
なお、高田さんは5月11日、ツイッターで「とても辛い気持ちになったのは事実ですが、そこは高田なので、やる気元気ゆうきでやってます!」と投稿。迷惑行為をおこなったとされる男性を特定する動きについては、「調べたり晒したりするのをやめてあげて欲しい」と呼びかけている。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://www.okumura-tanaka-law.com/www/top.htm