予選で2番手、3番手に躍進したヨシムラが、天候とタイヤ選択に泣いた。そしてさらにヨシムラのふたりの命運を分けたのは、レインタイヤのコンパウンド。スリックタイヤとレインタイヤ、そしてレインタイヤのなかでも硬め、柔らかめという、タイヤ選択の難しさがあった。
全日本ロードレース第3戦オートポリス、晴天の下ドライコンディションで行われた予選で、ヨシムラ・スズキMOTULの津田拓也と渡辺一樹がフロントロウを獲得した。2018年シーズン、ここまでで表彰台を逃し続けてきたヨシムラ・スズキMOTULにとって、光明が差したとも言える状況だっただろう。
ヨシムラのエースライダーである津田は金曜日のART走行で転倒し、「予定していたテストメニューをこなせなかったので土曜日の予選はぶっつけ本番に近い状態」。そんななかにあっての3番手タイムを、前向きにとらえていた。2番手の渡辺一樹も、ヨシムラがフロントロウに並んだことに「チームが成長して良い方向の流れにあると感じた」と手ごたえを語っている。
しかし決勝日は、懸念されたとおりの天候となった。雨と濃霧によりスケジュールが変更され、決勝レースは5周減算の15周。予定より20分遅れの12時30分決勝レーススタートになる。
路面は難しい状況だった。コース上は乾きつつあったともいうが、グリッド整列時には雨が落ちていたという。ヨシムラのふたりはここで、レインタイヤを選択。これがこのレースでのキモであったことはすでに言うまでもないが、津田が柔らかめ、渡辺一樹が硬めのコンパウンドを選んだことがさらに分かれ道となった。
津田はこのときのタイヤ選択について、「(決勝レース直前に行われた)フリー走行時の路面はまだまだ濡れていたので少し柔らかめのタイヤでセットアップだけすれば行けるかな、と思ったのですが、決勝レースを走り出すと路面は乾いて行き、雨が落ちてくることも想定して柔らかめのタイヤをチョイスしたのですが乾いて行く路面では序盤からタイヤが厳しくなりました」と語っている。
一方の渡辺一樹は最後までタイヤ選択について悩んでいたと言い、「フロントロウ3人と後ろにいるふたりのライダーがレインタイヤであったのでその中で勝負することを決断しました」ということだった。
結果的に見れば、レインタイヤではレース中盤以降にスリックタイヤ勢を抑えることはできず、柔らかめのレインタイヤを履いた津田は3番グリッドからスタートして11位でレースを終える。一方、硬めのレインタイヤをチョイスした渡辺一樹は6位だった。
表彰台を独占したスリックタイヤ勢に対し、レインタイヤ勢のなかでもコンパウンドで結果が分かれたのだ。津田によれば9位の中須賀克行(ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム)と13位の野左根航汰(ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム)は柔らかめ、4位の高橋巧(チームHRC)は硬めのレインタイヤを履いていたという。
「結果的にはタイヤチョイスを失敗した自分の責任です」と津田は認める。しかし今回のレース、グリッドに着いた時点では、タイヤ選択に明確な正解がなかったのも事実だ。
「あの時点でスリックタイヤを選択できたか、と言えば難しかったです。開幕戦もてぎでタイヤ選択を失敗したし、予選フロントロウだったので自分より上位の中須賀選手に合わせる選択をしました。これが予選下位だったり、フリー走行の走りが全然ダメだったら一発逆転をねらってスリックタイヤの選択もアリだったかもしれません」
ヨシムラ・スズキMOTULの加藤陽平監督も、「決勝レースではスリックタイヤを選択したチームがありましたが、よく決断できたな、と言うのが正直な感想」と語っている。
それでも津田、渡辺一樹が予選で見せた速さは間違いない。レース序盤は、渡辺一樹がトップ集団でレースリーダーの座を奪い合う一幕もあった。
「チーム全体として上昇気流に乗っていると思うので、この調子で上位陣と本当の意味で勝負したい」と加藤監督。今回は天候に翻弄されたが、次戦の決勝レースこそヨシムラが復調ののろしを上げるか。