トップへ

永野芽郁主演『半分、青い。』第2章突入! 「故郷編」が描いたもの、「東京編」が描くもの

2018年05月15日 10:41  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 『愛していると言ってくれ』(TBS系)、『ロングバケーション』(フジテレビ系)、『ビューティフルライフ』(TBS系)と、TVドラマ史に残る傑作ラブストーリーを数多く手がけてきた脚本家・北川悦吏子が朝ドラに初挑戦し、話題となっている『半分、青い。』(NHK)。セオリーに乗らない展開やユニークな会話劇に「今までの朝ドラとは違う!」と予感している視聴者も多いようで、視聴率としては平均19%台と近年の作品と比べるとやや寂しくはあるものの、評価は高い。放映開始から約1ヶ月半を経た現在は、「岐阜・故郷編」に別れを告げ、第2章とも言える「東京編」が始動したところだ。


参考:志尊淳&清野菜名から目が離せない 『半分、青い。』アシスタント役で物語を牽引


 本作は、1971(昭和46)年に岐阜県の田舎町で生まれたヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁)が、さまざまな困難を乗り越えながら、ある一大発明を成し遂げるまでの半生を見つめる物語。「岐阜・故郷編」では、朝ドラ史上初の母親のおなかの中にいるところから始まるという斬新なプロローグを経て、幼少期に突然の左耳の失聴、高校生になり進路に悩む中で漫画家を夢見、街を出て行くまでが描かれた。一貫していたのは、鈴愛の人物像を掘り下げるようなエピソードが多く描かれたこと。鈴愛がどんな性格で、どんな家族のもとで育ち、周囲の人々とどんな関係を築いてきたのか。主人公なので当然といえばそうなのだが、“いい子”に描かれがちな朝ドラヒロインには珍しく、ずるいところもあったり、おバカだったり、自分勝手だったりと、言ってみれば人間くさい部分も包み隠さず見せてくれた気がする。結果、視聴者に印象付けられたのは大らかで度胸があり、明るくハツラツとしている一方、世間ずれして掴みどころがない女の子。「了解いたした」「〇〇なのか?」と年ごろの女の子らしくない、ぶっきらぼうな話し方も独特で、どことなく『あまちゃん』(NHK)で能年玲奈(のん)が演じた天野アキを彷彿させる。


 特に深堀りされていたのは同じ日に同じ病院で生まれて以来の幼馴染・律(佐藤健)と、母の晴(松雪泰子)との関係だろうか。律は鈴愛にとって笛で呼ぶといつでも応えてくれる「マグマ大使」。イケメンで頭が良く、つとめて鈴愛の良き理解者であったが、時折、友情よりも親密な空気が流れる場面もあり、視聴者をやきもきさせた。晴は娘の破天荒さに手を焼きながらも、耳の不自由なこと、それゆえの将来を案じ続けた。物語上、敵役のような役割を担わせられもしたが、鈴愛の「夢見る力」を信じ、送り出すシーンは涙を誘った。


 あたたかな人たちに見守られ、のびのびと少女時代を過ごした鈴愛は、憧れの漫画家・秋風羽織(豊川悦司)のアシスタントとして東京で働くことになる。故郷のように自分に好意的な人ばかりではない中、夢だけを頼りに新しい世界に飛び込んだ。そんな「東京編」は、生まれて初めて“社会”を経験した鈴愛がどう変わっていくのかに主眼が置かれるのではないかと思われる。最も注目すべきはカリスマ漫画家・秋風羽織との師弟関係だろうか。天才よりも変人ぶりが勝る秋風と、漫画を描く以前の「メシアシ」「炭水化物要因」の鈴愛。「私には才能がある!」と堂々と言い切ったものの、漫画の用語や技法すら知らない鈴愛が、プロの世界を目の当たりにして何を思うのか。秋風と鈴愛、双方常識はずれなところのあるふたりだけに、掛け合いも楽しみなところ。また、秘書の菱本(井川遥)やアシスタント仲間のボクテ(志尊淳)、ユーコ(清野菜名)らも登場したことで人間関係も複雑に。加えて鈴愛自身も20代を迎えたり、律の友人・正人(中村倫也)も現れ、ドタバタ劇の中にいよいよ恋模様が描かれていきそうな予感。折しも時代はトレンディドラマ全盛の90年代に突入。北川悦吏子らしい青春ドラマ節とともに、名作にオマージュを捧げたシーンの登場にも密かに期待している。


 4月末には“第2の「東京編」”とも言える【人生・怒涛編】のキャストも発表されたばかり。それによると、夢破れた鈴愛がバイト生活を送る中で出会う「だめんず」たち(間宮祥太朗、嶋田久作、斎藤工)や、バイト先のオーナー姉妹(須藤理彩、キムラ緑子、麻生祐未)との出会いが、彼女の人生に転機をもたらすという。


 故郷を飛び出し、一層加速していきそうな鈴愛の生き様をしっかりと見届けたい。(渡部あきこ)