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小林太郎×NoBが語る、『仮面ライダーアマゾンズ』主題歌へ込めた熱い思い

2018年05月15日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 劇場版『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』が、5月19日より公開される。本作は、2016年よりAmazonプライム・ビデオにて配信された『仮面ライダーアマゾンズ』の完結作。タンパク質を好み食人本能を有する人工生命体“アマゾン”が潜伏する世界を舞台に、2人の仮面ライダーの壮絶な戦いを描く。


 リアルサウンドでは、本作で主題歌を歌う小林太郎とNoBにインタビュー。『仮面ライダーアマゾンズ』のシーズン1から本作までを振り返り、お互いの印象や、主題歌の制作秘話などをじっくりと語ってもらった。(編集部)


(関連:小林太郎が探る、新たなサウンドと表現方法 「挑戦したかったし、振り切ってみたかった」


■「『Armour Zone』のイメージは『Welcome To The Jungle』」(NoB)


ーーおふたりは『仮面ライダーアマゾンズ』(以下、『アマゾンズ』)のシーズン1から、NoBさんが主題歌を作曲し、小林さんがそれを歌うという形で参加してきました。最初に『アマゾンズ』という作品に関わることになったとき、どういう印象を持ちましたか?


NoB:僕は第1作目の『仮面ライダー』から観て育ったし、中でも『仮面ライダーアマゾン』のワイルドな造形が大好きで、「まさかあのアマゾンのリブート作品に関われるんだ!」と嬉しかったですし、すごくワクワクしながらスタートしました。


ーー小林さんは世代的に、『仮面ライダー』だとどのあたりになるんですか?


小林太郎(以下、小林):最初に観たのは『仮面ライダーBLACK』とか『仮面ライダーBLACK RX』とかで、物心ついてちゃんと最初から観たのが『仮面ライダークウガ』だったんです。そこから僕も仮面ライダーが好きになって。バイクもすごく好きだったので、それもあって『仮面ライダー1号』を……当時はまだVHSでしたけど(笑)、それを借りて観てました。


ーー『アマゾンズ』シーズン1の主題歌「Armour Zone」を作る際に、スタッフさんから楽曲のイメージについて何かお話はありましたか?


NoB:ありました。もちろんテーマもストーリーも聞かせてもらっていたし、「仮面ライダーだけど、今までと違うものにしたいんだ」ということで、ロックでいきたいというようなざっくりとしたイメージも伝わってきて。僕はもともとロックを作るのが一番得意なので、それで僕のところに話が来たんだろうなと。で、たまたま僕が書いていた曲をコロムビアのディレクターさんが聴いてくれまして、それが(Guns N’ Rosesの)「Welcome To The Jungle」みたいな曲だったんですよ。


小林:ふふふふ(笑)。


NoB:この雰囲気が『アマゾンズ』にハマるんじゃないかってことで目をつけてくれたようです。「この曲を『アマゾンズ』用に書き換えてくれないか?」というところからスタートして、今の「Armour Zone」が完成しました。


ーー確かにビート感や曲の持つワイルドな雰囲気は「Welcome To The Jungle」に通ずるものがありますよね。


小林:だからキーが高いんですね(笑)。


NoB:それもあるよね(笑)。


ーー小林さんは自身で作詞作曲をしながら活動する中、『アマゾンズ』には歌い手として参加しました。


小林:まず最初に、『仮面ライダーアマゾンズ』というタイトルとシーズン1のざっくりとした内容をいただきました。ただ、そのときはまだ曲は聴いてない状況で、自分も大好きな『仮面ライダー』の主題歌を歌えるという喜びと同時に、「僕で大丈夫だろうか?」という心配もあって。それで、あるときに事前確認として「(歌う際、一番上の)キーってどこまで出ますか?」という話があったので、「ああ、結構キーが高いのかなぁ……」と思いました。


ーーちなみにNoBさんは作曲するとき、誰が歌うか聞いていたんですか?


NoB:小林太郎くんという名前は聞いていたんですけど、申し訳ないですがそのときはまだよく知らなくて。それで、キーの話になったときにいろいろリサーチさせてもらって、「なるほど。ここまで出るなら行ってまえ!」とこの形に仕上げたんです。


小林:ギリギリでしたもん(笑)。そのギリギリ加減が作品ごとに上がっていったんですけど(笑)。


ーーでも、「Armour Zone」はあのキーの高さがストーリーの切迫感を表現しているようにも感じられて、毎回この曲がエンディングに流れると気分が高揚します。すごくピッタリな曲だと思いました。


NoB:迫力のあるやんちゃ感が欲しかったんですよね。そこを太郎くんが表現してくれたので、僕にとってはイメージどおりの曲になったなと。作曲する人って、出来上がったものを聴いたら「こうじゃないんだけどなあ」と感じることも多々あると思うんですよ。でも、「Armour Zone」は太郎くんの歌もアレンジも全部、自分の中のイメージを超えてきて。作り手としては嬉しかったですね。


■「観ている人にもこだわりが伝わっているんだなと感じた」(小林太郎)


ーーそこから、シーズン2の主題歌「DIE SET DOWN」で再びタッグを組むことになります。この曲はシーズン1を踏まえた上で……。


NoB:踏まえすぎですよ(笑)。1作目を超えなくてはいけないストレスたるや、それはスタッフも僕もみんな感じていたことだと思うんですけど。「Armour Zone」が勢いでできたぶん、スタッフと「ああでもない、こうでもない」と七転八倒の苦しみを味わって、やっとたどり着いたのが「DIE SET DOWN」です。


小林:僕は歌い手として、「あ、またサビの最後でシャウトさせていただけるんだ」と(笑)。そこはお決まりとして嬉しかったです。僕は楽曲の制作工程で最後に関わることになるので、作曲やアレンジでいろんな方が試行錯誤されていて、ある程度出来上がったものを聴くわけで、本当にいろんな方が苦労されたことが伝わってくるんです。曲ももちろんなんですが、シーズン2自体もシーズン1がすごく評判が良くて革新的だったので、それぞれプレッシャーを背負っていたと思います。なので、僕はその上に乗っかるじゃないですけど、僕は僕で何も変えずに自分の歌で表現できたし、すごく自由にやらせてもらえたと思います。


ーーそこまでの産みの苦しみを味わったからこそ、愛情も強いんでしょうね。


NoB:愛情という生易しいものじゃなくて、執念だと思います(笑)。


小林:確かに(笑)。シリーズ1、2ともに終わり間際に曲がかかるんですけど、スタッフさんと話させていただいたときに「あの曲の入り方にはめちゃくちゃこだわっている」と聞いて。SNSでも曲の中身はもちろん、かかるタイミングも話題になっていたし、観ている人にもこだわりが伝わっているんだなとすごく感じました。そういう素晴らしい楽曲を歌わせていただいて本当にありがたいなと思いつつ、いち『仮面ライダー』ファンとしてもめちゃくちゃ気持ちが高ぶりましたね。


■「その映像をいかにカッコよく見せるか、そのための主題歌」(NoB)


ーーそれこそ昭和の作品から、『仮面ライダー』と主題歌はワンセットになっていて、その作品の映像を観れば主題歌が頭に浮かんでくるぐらい強いイメージを持っていると思うんです。実際、『アマゾンズ』の主題歌も物語の世界観に直結したものになっていて、聴けばあの映像が浮かんでくる、王道の主題歌だなという印象があります。


NoB:やっぱり歌だけ良ければいいわけじゃなくて、その映像をいかにカッコよく見せるか、そのための主題歌だと思うんです。そういう相乗効果って、普段僕がやっている作業とは違う部分ですよね。通常は「とにかくカッコいい曲を書かなくちゃ」だけだったのに、主題歌となると映像もカッコよく見えるよう、そこにハマらなくちゃ意味がない。だから、「DIE SET DOWN」のときはスタッフとずっと「ああでもない、こうでもない」って、トラウマになるぐらいの作業でしたよ(笑)。それこそ、去年のお正月三が日はずーっと、うちのスタジオで曲を作ってましたもん。それぐらい入り込んでやることって今までほとんどなかったし、でもそれぐらいやらないと映像と楽曲のコラボってできないしで、みんなすごく苦労してやってるんだなと思いました。


小林:それこそ、「Armour Zone」の中盤ぐらいのところで臓物を食べるようなグロテスクな音が入っていますが、普通に音楽活動しながら楽曲を作っているとそういうことは考えつかないので、最初はすごく衝撃でしたね。


ーー一般的なアーティストの場合は楽曲を発表したらライブなどで歌うことで、お客さんと共有して曲が育っていったり、どんどん変化していったりすることがあると思います。でも、こういう主題歌ってストーリーが進んでいくうちに聴き手の曲に対する印象も変化していく。その違いが面白いと思うんです。「Armour Zone」も「DIE SET DOWN」も第1話で耳にしたときと、最終回のあとに耳にしたときとでは重みがグッと変わります。


NoB:作っているときはあとでどう感じるとか考えられないですし、そもそも「Armour Zone」を作っているときにシーズン2があるとも思ってませんでした。ましてや映画なんて想像すらできなかったですから。さっきも言ったように、とにかく映像がカッコよく見えるように、映像によってカッコよく聴こえるように作ろうと必死だったので、一生懸命やった作業があとあと効いてくるんでしょうね。


■「120%でぶつかり合うところが『アマゾンズ』とリンク」(小林太郎)


ーーそこから劇場作品『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』へとつながるわけですが、今回の主題歌「EAT, KILL ALL」ではNoBさんは作曲のみならずシンガーとしても参加しています。劇場版ならではの豪華さですが、この曲ではどのようなことを表現しようと考えましたか?


NoB:最初にオーダーをいただいたときは、「『アマゾンズ』のシリーズはすごくグロテスクだし、子供が見られないぐらいの映像世界なんだけど、伝えたいことは『生きろ』ってことなんだ」と。そこから、「前向きになれるよう、遠慮せずポップで明るいメロディを入れてほしい。それでいて、ヘヴィさも表現してほしい」と言われたんですよ。なので、歌い出しはヘヴィでロックな感じだけど、サビになると明るい雰囲気になるようにしました。たぶんここからいろいろ試行錯誤するんだろうなと思いながら、スタッフさんと何度か打ち合わせをしたら、今回は意外とバシッとハマってくれたので、仕上がりは早かったんです。「DIE SET DOWN」のトラウマから、ようやく解き放たれました(笑)。思えば、「DIE SET DOWN」はテイク15くらいあったんですよ。


小林:えーっ、そうだったんですね!


NoB:そう(笑)。なので、自分でも戸惑いながら、スタッフさんが言うように一回作ってみようと思ったのがよかったのかもしれないですね。


ーー小林さんは「EAT, KILL ALL」を受け取ったとき、どう感じましたか?


小林:最初にNoBさんとのデュエットになるという話を聞いて、まずびっくりしました(笑)。「大先輩と一緒に歌うことができるなんて」という嬉しい気持ちも強かったけど、NoBさんもめちゃめちゃカッコいいロックを歌うシンガーなので、どんな仕上がりになるか想像がつきませんでした。そもそもどういう楽曲で、どういうデュエットの仕方なんだろうって。でも、完成した曲を聴いたとき、良い意味での暑苦しさというか(笑)、それが全面に出ていてすごくカッコいいなと思いました。


NoB:わりと早い段階から2人で歌うと聴いていたので、デュエットすることを前提とした曲作りをしていたんです。なので、もともと存在する曲を2人で歌い分けるのではなくて、最初から「ここは俺が歌う」「ここは太郎くんが歌う」とパートを決めながら作りました。


小林:音楽史的にもメインボーカル2人がそのままメインボーカルで、それぞれのメロディをデュエットすることってないんじゃないかな。両者が120%でぶつかり合うところが、『アマゾンズ』に登場する2人の仮面ライダーとリンクしますしね。


ーー確かにアルファとオメガがラストでどう決着をつけるのかという結末も含めて、そこを歌のバトルで表現しているような印象を受けました。


NoB:まさに、アルファとオメガが戦うその場面を表現してほしいんだと説明されました。鷹山仁と水澤悠を、僕たち2人が歌うことで表現してほしいと。だから、今回の僕らの楽曲は“デュエット”ではなくて、あくまで“ツインボーカル”なんですよ。


■「今回はどこかポジティブなところを音楽で付与できた」(小林太郎)


ーーこの生命力の強い二つの声で歌われるからこそ、生きることへの執着を強く訴えかけるサビが映えると思うんです。そこが、映画のクライマックスにもうまくつながっているなと。


NoB:歌詞が上がってきたときに、「EAT, KILL ALL」という言葉が出てきて。僕、わざわざその「EAT, KILL ALL」という言葉を歌うためだけに、サビの最後のリピートを付け足したんですよ。それだけ強く伝えたかったので。


ーーそうだったんですね。しかも、曲中には過去2曲をオマージュ的に使っていて、集大成的なアレンジでもありますし。


小林:あれはびっくりしますよね。制作側もあそこでいろんな記憶がフラッシュバックするんじゃないでしょうか(笑)。


ーー『アマゾンズ』という作品にとって、自分とどう向き合って生きていくかは重要なファクターだと思いますが、そこをシリーズ完結編の主題歌「EAT, KILL ALL」で強く表現したことにすごく腑に落ちたところがありました。


NoB:作詞のマイクスギヤマさんも、よくこんなにイメージどおりの歌詞を書いたよね。天才ですよ。かと思えば、彼はスーパー戦隊シリーズで子供がすごく喜ぶような歌詞も書きますからね。


ーーそうですよね。ほかにも『ドラえもん』の楽曲も手がけていますし。


NoB:どれだけ僕よりボキャブラリーを持ってるんだって思いますけどね。


小林:言葉のチョイスがすごくカッコいいですよね。マイクさんとも何度もお話させてもらっているんですが、まず「Armour Zone」からそうきたかと。「Armour Zone」=「アマゾン」ですし、今回の「EAT, KILL ALL」もそもそものテーマである「生きろ」ということを伝えているわけですから。歌い手としても、「Armour Zone」と「DIE SET DOWN」はシリアスなフレーズが多いと思うんですが、完結編となる今回はすごくポジティブで。テーマとして結構シリアスになりやすいし、もちろんそこは大事なんですけど、今回はどこかポジティブなところを音楽で付与できたことがすごく素晴らしいなと思いました。


■「仁と悠のバトルをイメージしながら聴いてほしい」(NoB)


ーーちなみに、これまでの『アマゾンズ』シリーズの中で共感できる登場人物やキャラクターはいますか?


NoB:共感というか、今回は役どころとして完全に自分は仁だと思ってましたね。だから、自分から彼とシンクロしようと思っていた部分がありました。


小林:となると、僕は悠ですね。僕はシーズン2で、悠と仁が主役というところからちょっと外れたのが、個人的には『機動戦士Zガンダム』におけるアムロとシャアと重なって。あのときの悠くんの演技から、彼が本当にシーズン1からシーズン2の間で成長した感じがすごく伝わってきたんです。最初は訳もわからずアマゾンになって、今も答えは出てないんだけど、アマゾンとして人間もアマゾンも守らなければならない。で、仁さんはめちゃめちゃ破天荒になっているから(笑)、一番大人なキャラに見える。そういう意味でも、迷いつつも全力で進む悠くんの姿が好きですね。


ーーでは、NoBさんから見た小林太郎というシンガーの魅力はどういったところでしょうか?


NoB:僕と歌のスタイルが違うし、ビートの取り方やタイム感も全然違う。彼はすごく重くて、僕はジャストでいくタイプなので、結局は交わらないんですよ。だから、逆に2人で歌うことが面白かったのかな。「Armour Zone」のときから、僕が作ったデモテープとは全然違うカッコよさがあったし、同じように歌われたら、それはそれで「俺のほうがいいじゃん」ってきっと思う気がします(笑)。


小林:同じやり方だったら勝てないですよ(笑)。


ーー小林さんから見たNoBさんの魅力は?


小林:そもそもNoBさんが歌われていた「ペガサス幻想」(※NoBが80年代に在籍したバンドMAKE-UPによる、アニメ『聖闘士星矢』の主題歌)を、僕はカラオケで歌うぐらい好きだったんです。その時点でめちゃくちゃリスペクトしているんですが、今回一緒にレコーディングをしたときに、NoBさんの歌の存在感……どっしり構えていてオーラが漂っていて、引力がすごいなと思ったんですね。僕は高い声でシャウトすることが多いんですけど、NoBさんは本当に真逆の立ち位置で、それこそ『アマゾンズ』で言ったら、本当にアルファのような存在です。曲中ではいろんな絡みがあるんですが、NoBさんの世界観とどう絡んだらいいか、どういうふうに崩したり合わせたりしたらいいかというのも、NoBさんのプロデュースによってちゃんと形になったんじゃないかなと思います。この曲、最初からシャウトで始まるので、劇場の大音量で聴いたらどうなるんだろう?(笑)。


NoB:オープニングの2人でのシャウトを聴いたら、映画を観終わったあとも頭の中はこの曲のことでいっぱいなんじゃないかな(笑)。なので、映画の中での仁と悠のバトルをイメージしながら聴いてほしいですね。


(取材・文=西廣智一/写真=三橋優美子)