モリワキが2018年シーズン、2度目のポディウムを獲得した。雨と霧に翻弄されたオートポリスでの全日本ロードレース選手権第3戦で、高橋裕紀(モリワキMOTULレーシング)が3位表彰台。スリックタイヤの選択が見事に的中したレースだったが、これは悩んだ末の決断だった。
オートポリスの決勝レース前のグリッド上で、高橋裕紀はタイヤについて悩んでいたという。上位陣はほとんどレインタイヤ。路面状況はハーフウエットだったが、雨は上がっていた。ここでモリワキと高橋裕紀はスリックタイヤを選択する。
「天候に合わせてチームはスリックタイヤを選択しました。本当に賭けではありましたがスリックで行くと決めたなら『やってやろう!』と言う気持ちで臨みました」
スリックタイヤという選択に悩んだ高橋裕紀の背中を押したのは、チームのメカニックやピレリタイヤのスタッフだった。
「『裕紀なら行ける!』と半分おだてられて(笑)出ていきました」と高橋裕紀は笑う。しかし背中を押されたことで、迷いが晴れた。「そこで100%の気持ちに切り替えられたのが大きいと思います」
決勝日は雨と霧の天候によってスケジュールが何度も変わった。午前中に予定されていたフリー走行はディレイとなって決勝レース前に行われ、そのセッションも濃霧により赤旗中断。予定より20分遅れとなった決勝レースは、5周減算の15周でスタートした。
オープニングラップは濡れたコースコンディションで、高橋裕紀は10番手スタートから15番手に順位を落とす。しかし路面が乾き出すとともにラップタイムも上がっていき、トップ集団に迫った。
中盤にはレインタイヤを装着した高橋巧(チームHRC)、中須賀克行(ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム)、渡辺一樹(ヨシムラ・スズキMOTUL)をあっという間に交わすと、渡辺一馬、松﨑克哉のカワサキ・チームグリーンふたりに次ぐ3位フィニッシュ。自身としては2017年第8戦岡山大会以来の表彰台を獲得した。
「ピレリタイヤは柔らかいので少し濡れた路面であれば序盤はブリヂストンより有利に走れるのではと思っていましたが、路面が乾いてくると渡辺一馬選手、松﨑選手には追いつけませんでした」
レインタイヤを履いて序盤にレースをリードした上位陣はことごとく表彰台を逃した。今回のレースについて高橋裕紀は「天候に恵まれた」と語る。しかし、チームやピレリのスタッフがスリックタイヤを選択してライダーの背中を押し、高橋裕紀が信じてそれに応えた、チームの勝利だったとも言えるのではないだろうか。
「この状況の中で3位表彰台を獲得できたのはチームにとっても、ピレリタイヤさんにとっても嬉しいことだと思います」
高橋裕紀の3位表彰台により、モリワキは清成龍一が開幕戦もてぎレース1で獲得した3位表彰台とあわせ、今シーズンで早くも2度のポディウム登壇を果たした。名門モリワキが全日本JSB1000クラスで、その存在感を増していきそうだ。