2018年05月14日 17:12 弁護士ドットコム
京都大学の吉田キャンパス(京都市左京区吉田)から5月13日、名物の「立て看板」(タテカン)が撤去された。だが、一夜明けた5月14日には早くも「タテカン カエシテ」と書かれた看板が立てかけられている。撤去に反発する学生側が設置したものとみられるが、立て看板をめぐる混乱はまだつづきそうだ。
【関連記事:迷惑セールス電話の撃退法「ねぇ、どんなパンツ履いてるの」、法的に問題ないのか?】
吉田キャンパス周辺の擁壁には、道路からも見えるかたちで、立て看板が設置されていた。これらの看板には、サークル団体やイベントに関する情報が書かれているもののほか、何らかの主張・表現がされているものがあり、自由な学風をうたう京大「らしい」と長年親しまれてきた。
一方で、京都市には、景観維持などを目的として、屋外広告物を規制する条例があり、原則として、擁壁に屋外広告物を設置することは禁止されている。市は2012年から、新景観計画にもとづいて、京大に対して、条例違反であるとして行政指導をおこなっていた。
市の担当者は、弁護士ドットコムニュースに対して「京大だから特別にするわけにはいかない」と説明。許可なく、屋外広告物を設置した者は「30万円以下の罰金」となる。ただ、「これまで適用されたケースは聞いたことがない」(同担当者)という。
京大は昨年12月、「立看板規程」を制定した。今年5月1日には、この規程を施行したうえで、看板撤去をもとめる通告を出していた。京大広報によると、5月13日午前中、吉田キャンパス周辺の立て看板約50枚を一斉に撤去した。大学構内で30日間保管した上で、設置者から返還の求めがない場合は廃棄するという。
だが5月14日午前、同大正門には「タテカン カエシテ」と書かれた看板が設置されていることを確認した。また、百万遍交差点近くの擁壁には、別の立て看板のほか、「条例を立て看板に適用するのが妥当かという点については議論の余地がある」などと書かれた張り紙もあった。
吉田キャンパス近くで働く女性は「新聞で読んで(立て看板の撤去)を知りました。昔からあるものだから、ちょっと寂しい」と口にした。また、ある学生は「構内でやるしかないのか」と肩を落とす。だが、大学側は昨日、構内に設置されていた立て看板もあわせて撤去したようだ。
規程によると、京大総長が承認した団体だけが、指定場所に立て看板を設置できる。団体名・責任者氏名、連絡先、設置期間を明記する必要もあり、ルールが守られていなければ、たとえ構内であっても撤去されてしまうのだ。条例と関係のない規制ともとられかねず、立て看板をめぐる混乱が止む様子はない。
京都大学職員組合は5月14日、白岩立彦中央執行委員長の名義で、大学側が学生団体と話し合いの場を設けないまま撤去に踏み切ったことについて「極めて遺憾である」という抗議声明をホームページ上で発表した。今回の撤去で、屋外広告物条例に何ら関係しないキャンパス内側に設置する職員組合の看板も対象とされていた、などとしている。(弁護士ドットコムニュース・山下真史)
(弁護士ドットコムニュース)