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WEC:ACO、トヨタ優位のEoTを認めるも、シーズン中の修正は「いつでも可能」

2018年05月14日 12:01  AUTOSPORT web

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7号車トヨタTS050ハイブリッドとプライベーターの3号車レベリオンR13・ギブソン
ACOフランス西部自動車クラブのスポーツディレクターを務めるビンセント・ボーメニルはWEC世界耐久選手権のLMP1クラスのハイブリッド車両とノンハイブリッド車両のパフォーマンスを均等化するための技術規定、EoT(Equivalency of Technology/技術の均等化)は、“いついかなる時も”変更可能だという考えを示した。

 このEoTは、ハイブリッド車であるTOYOTA GAZOO RacingのトヨタTS050ハイブリッドと、ハイブリッドシステムを搭載していないプライベーターチームのLMP1マシンの性能差を調整するためのもの。

 具体的には、1周あたりに使用できるエネルギー量とガソリンの最大搭載量、最低車両重量、最大燃料流量などでパフォーマンスが調整されている。

 EoTはシリーズ開幕前に公示され、その後4月上旬に行われた公式テスト“プロローグ”の結果を受けて数値が調整。そのEoTをもって、トヨタのワークスチームと各プライベーターは2018/19年WEC“スーパーシーズン”第1戦スパ・フランコルシャンに臨んだ。

 しかし、この第1戦スパではトヨタが群を抜くパフォーマンスを発揮。ポールスタートだった8号車TS050ハイブリッドが優勝、ペナルティにより1周遅れでのスタートとなった7号車TS050が総合2位に入っただけでなく、プライベーター勢では最速だったレベリオン・レーシングのレベリオンR13・ギブソンを2周遅れにするほどの圧倒ぶりをみせている。

 これまでEoTの改定は毎年ル・マン24時間の後、シーズンに1回限り許可されていたが、この結果を受けて、ボーメニルはシーズン中に回数の制限なく数値を変更する可能性を示唆した。

「当初定めたEoTを優れた規定だと考えている。本質の部分では確かなものだ」とボーメニル。

「しかしデータとパフォーマンス分析を行った結果、変更が必要なことが分かった。もちろん我々はEoTをいつでも変更することができる」

「変更できなければおかしいんだ。そうでなければフェアにならないからね」

 ボーメニルはハイブリッドシステムを搭載している車両がLMP1の手本であるとしており、ハイブリッド車がアドバンテージを得られるようにEoTを調整。その目標は、ル・マン24時間のラップタイムで1周0.5秒のギャップをハイブリッド車(トヨタ)とノンハイブリッド車に設けることだとしている。

 加えて、ル・マンでは燃費で優れるトヨタ勢に1度の給油で5秒のアドバンテージ、1スティントあたりライバルより1周長く走行できるため、合計で8分近いアドバンテージが得られる可能性もある。

■トヨタの勝利が“普通”であり、負けるようなことがあればニュースになる


 この状況にもかかわらず、ボーメニルはEoTでノンハイブリッド勢に与えられたパフォーマンスは、ギャップを縮めるための“ギフト”であるとコメント。そのギフトがトヨタ勢のレベルを上回るものにはならないと語った。

「最先端のリファレンスマシン(TS050ハイブリッド)が遅れを取らないようにしなくてはならない。なぜなら、ノンハイブリッド車のほうが車重が軽く、燃料も多く使用でき、空力性能にも余裕があるからだ」

「プライベーターがワークスと競えるように手助けしながら、我々が掲げている主義をすべて守ることはできない。そんなことをすれば物事を制御できなくなり、混乱を引き起こしてしまう」

「こういった考えを持たない者がいることも分かっているが、それでもレースに参戦するプライベーターにはチャンスになっている」

 トヨタのテクニカルディレクターを務めるパスカル・バセロンは、このスーパーシーズンでトヨタが優勝できないレースがあったら驚きだとし、ノンハイブリッド勢に対してパフォーマンスと燃料の面で優位性があることを認めた。

「我々が勝つのは普通のことだ。もし負けるようなことがあれば、それはニュースになる」とバセロン。

「結局のところこれが今の状況であり、我々はそれを受け入れている」

「これまでと同じレギュレーションだったら、我々にはさらに多くのアドバンテージがあっただろう。今回のレギュレーション変更で得たものはないんだ」

 こう語るバセロンは第1戦スパでトヨタとプライベーターに課せられたEoTに“格差”があったことについて、「いまだ発展途上にある」と考えていると明かした。

「FIAとACOを信頼しなければならない。彼らはすべてのデータを持っているのだからね。すぐさま完全に正確なことを行うのは非常に難しいことだ」

■プライベーターからはEoTの修正を望む声も

 開幕戦をトヨタ勢に次ぐ総合3位で終えたレベリオン・レーシングに所属するニール・ジャニは、第1戦終了後に「『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』(新しいトレンドはオレンジ色)というテレビドラマがあるけど、僕たちにとっては、『新しい1位は3位!』がトレンドだ」とトヨタに対する“敗北宣言”とも取れるコメントを残している。

 レベリオン・レーシングはレース後のプレスリリースで、ル・マン24時間で各チームが“戦って、見ごたえあるショーができるよう”、EoTを修正する必要があることは明白だとの声明を発表した。

「ハイブリッド勢のアドバンテージが見直されないのなら、競技は魅力のないものになるだろう」とレベリオンの副会長カリム・ボウハドラは述べている。