2位表彰台を獲得した平手晃平(左)と嵯峨宏紀(右) 2018 AUTOBACS SUPER GT ROUND 2 富士スピードウェイ
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km
5月3日(予選)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:3万1300人
5月4日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:5万5000人
予選7番手から激しく追い上げ、2位入賞を果たす。これが自分たちの開幕戦として!
全8戦で争われるスーパーGTシリーズの第2戦、『FUJIGT500kmRACE』が富士スピードウェイで開催された。今年もaprは2台のトヨタプリウスZVW51を走らせ、#31TOYOTAPRIUSaprGTを、新たにコンビを組むことになった、嵯峨宏紀選手と平手晃平選手に託すこととなった。
岡山国際サーキットで開催された開幕戦では、ウエットの予選で「攻めのタイヤ選択」が裏目に出て7番手からのスタートとなったものの、そこからの追い上げはすさまじく、やがて嵯峨選手がトップ争いを演じるまでに。しかし、まもなくピットインというところでトラブルが発生。平手選手にバトンをつなぐことなく、無念のリタイアとなってしまった。しかし、その時、誰もが感じたハイパフォーマンスを、今回のレースで遺憾なく発揮してくれるのは間違いない。
今回の舞台、富士スピードウェイは国内随一の長さを持つストレートが特徴のサーキットではあるが、前半に高速コーナーを、そして後半に低速コーナーを重ねる、意外にテクニカルなレイアウトでもある。また、通常のレースより長い500kmで争われるため、ピットストップは2回義務づけ。燃費に優れるJAF-GTに、そのあたりでもマージンを稼げそうだ。嵯峨選手と平手選手が今回は笑顔でレースを終えることを、大いに期待したいところである。公式練習5月3日(木・祝)12:50~13:20
シリーズ第2戦は恒例のゴールデンウィーク開催とあって、予選日から多くの観客を集めたものの、予想外の事態に陥っていた。早朝まで降り続いていた雨は止んでいたものの、代わって濃霧がサーキットを覆い、スケジュールの大幅な変更を余儀なくされたからだ。午前中に行われるはずだったサーキットサファリの中止がまず発表され、さらに公式練習は午後に移されて30分間へ大幅に短縮。予選も20分間の一本勝負とされ、ドライバーひとりでの走行も許されることとなった。
公式予選が行われる頃には、すっかり霧も晴れてドライコンディションになっていたが、少ない時間を有効に活用しなくてはならない。そこで公式練習、予選とも平手選手に集中してもらうこととなった。もちろん、それは嵯峨選手のプリウスの経験を高く評価した上での英断だ。
一刻とて無駄にできないため、コースオープンと同時に平手選手は走行を開始。すぐにピットに戻ってセットアップを入念に行いつつ、スタートから10分ほど経過したところから、周回を重ねていく。平手選手は着実にタイムを詰めていき、1分38秒680に達したところで再びピットに。終盤に再度かけたアタックによって、1分38秒205をマークして6番手につけることとなった。慌ただしいスケジュールの中、順調な走り出しとすることができていた。
公式予選 5月3日(木・祝)14:45~15:05
Q1~Q2の順で行われる通常のノックアウト予選ではなく、ドライバーひとりが挑めばいい、一発勝負に改められた予選ながら、タイヤに関しては2セットの投入が可能に。そこで計測開始と同時にピットを離れた平手選手は確認のアウト~インを行った後、まず1セット目でアタックを行うこととなった。
まずは1分37秒204をマークした平手選手は、いったんピットに戻ってセットの微調整を行うことに。そして2セット目のタイヤを投じ、再度コースに戻ってラストアタックを行うこととなった。
よりコンディションに合わせたセットになっていたこともあって、さらに激しくコースを攻め立てる平手選手。その甲斐あって、決勝レースを見据えたタイヤ選択でありながら、1分36秒971をマークする。その結果、#31 TOYOTA PRIUS apr GTは決勝レースに7番手、4列目のグリッドから挑むことになった。
予選後コメント
嵯峨宏紀選手
「明日の午前中は、#31の選手紹介にご期待ください。午後は、#31の表彰台にご期待ください。その2点を完璧にやり切るのが、応援くださっている皆さまへの僕の使命ですので」
平手晃平選手
「高速パワーサーキットでGT3が得意としている中、これ以上ないアタックで7番手には、納得しています。決勝は、あわよくば表彰台、確実に5位以上が狙えるように作戦含めてチーム一丸で明日は挑みたいです」
金曽裕人監督
「富士ではこの順位でも100点。さすが平手選手と思わせる渾身のアタックであり、久しぶりにそれを間近で見れた事が、ファンの皆さまも今日は満足ではないでしょうか。前回の岡山では、平手選手が戦わずしてリタイア。そのこともあり、我々は決勝に向け、完璧なマシンを先ずは用意することが絶対である」
決勝レース(110周) 5月4日(金・祝)14:40~
前日の午前中の荒天がまるで嘘のように、決勝日は朝から爽やかな天候に恵まれることとなった。ここまで1周も走っていないドライバーで大半が占められるため、普段は20分間のウォームアップは25分間に拡大。
ここで初めて嵯峨選手が走行し、平手選手が仕立てたセットの確認を行い、やがてドライバー交代の練習も兼ねて、後半の7分間は平手選手が走行した。ちなみに嵯峨選手は1分39秒125をマークし、平手選手は1分39秒511をマーク。決勝を想定したターゲットタイムは、ふたりとも難なくクリアした。
スタート時の気温は18度、路面温度は36度と想定していたよりは高めだが、ウォームアップの感触ではレンジを外していないのは間違いない。期待を抱いてスタートを切った平手選手は、オープニングラップのうちにふたつ順位を上げて、5番手からレースを開始する。2周目には4番手に浮上した平手選手は、続いて3番手にも迫って激しいバトルを繰り広げ、17周目の1コーナーで3番手に。これが久々に走るGT300の決勝とは思えぬ、ハイパフォーマンスを披露してくれた。
そして31周目に、嵯峨選手にバトンタッチ。タイヤを4本換えてなお素早い作業によって、それまで2番手を走っていた車両の前に出たものの、コールドタイヤでガードし続けるのは困難と、嵯峨選手は瞬時に判断。すぐに再逆転を許したのは、やむを得まい。しかし、その車両が55周目にエンジントラブルでコース脇にマシンを止めたこともあり、嵯峨選手はついに2番手に躍り出ることとなる。
そして71周目に最後のピットストップを行い、再び平手選手が#31 TOYOTA PRIUS apr GTをドライブ。ここではタイヤ無交換として、ロスを最小限に。トップをとらえることはできなかったものの、これで後続には十分なマージンを築き上げることとなった。その後の平手選手は、まったく危なげない走りを見せて、2位でフィニッシュ。今シーズン初の表彰台に、嵯峨選手とともに立つこととなった。
しかし、そのまま余韻に浸り続けているわけにはいかない。わずか2週間余りで、次の戦いを迎えるからだ。舞台を鈴鹿サーキットに移して5月19~20日に行われる第3戦、もちろん目指すは表彰台の中央である。
決勝後コメント
嵯峨宏紀選手
「タイヤは最初に4本換えて、2回目は無交換という戦略でしたので、僕のスティントはタイヤを使わないように走っていました。最後の晃平のペースを見る限り、それはうまく行ったと思います。でも、55号車BMWと後方から追い上げてきた11号車GT-Rに対してはちょっと違う土俵で戦っていた感じがしたので、このコースではしょうがない部分はあったんじゃないでしょうか」
「戦う前は5位以内、3位以内だったらベストだね、と話していたので2位は御の字だと思います。晃平には前回悔しい思いをさせちゃったので、今回まず結果が残せてホッとしています。ここが僕らのスタート地点だと思って、タイトルに向けてテクニカルなサーキットでは勝てるように、高速サーキットでは今回のように、苦しいなりに表彰台や高得点を重ねていきたいと思います。
平手晃平選手
「前回は本当にいいスティントを見せてもらって、あわよくば優勝に手が届くところまで来ていたんですけど、不運なトラブルでリタイアしてしまって。正直、この富士でGT3のようなパワーのあるクルマに、直接勝負を挑むのは苦しい部分もあったんですが、本当にそこはブリヂストンと嵯峨選手のロングスティントで、しっかりマネージメントしてくれたおかげで、僕は最後まで安定して走れたので、本当にチームでつかんだいい結果だと思います」
「勝てなかったのは悔しいですが、条件見ればかなりやれた方だと思うので、次の鈴鹿もGT3が速いと思いますが、しっかりチームワークでポイントを積み重ねていきたいです」
金曽裕人監督
「100点以上の出来ですね。今年のチームは平手選手が加わりスタッフ全員が勝負にこだわる本来のaprに戻ったような気がします。それ位、影響力のある力強い選手であり頼もしい限りである。それに感化され、今シーズンは、嵯峨選手も完璧なドライビングで頼りになるし、速さも磨きがかかっている。2007年以来のチャンピオンを、今年はこの最強体制で狙いますので皆様ご期待ください」
ただ、今シーズン唯一の心配は、とどまることを知らない嵯峨選手の選手紹介だけです……。