2018年05月14日 10:22 弁護士ドットコム
トイレの時間を「休憩時間」としてカウントしますーー。こんな規則のある会社で働く方々から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問が寄せられました。
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ある男性は先日、会社で「君はトイレに行く回数が多いから、その分を休憩とみなす」と言われてしまったそうです。男性は「(休憩が)なくなった場合、実質9時間休憩なしで働くことになり、辛い」と嘆いています。
また、パートで働いている女性は、上司から「店長からの連絡事項です。トイレは休憩です。お茶を飲んだら休憩です。そういうものです。休憩管理表にトイレに行った時間の記入をし、休憩(時間)の修正を行ってください」とメールが届きました。
女性の職場のトイレは、店外の2階にあるため「所要時間はどんなに急いでも6分」はかかるのだそうです。
このように勤務時間中にトイレを制限することや、トイレ時間分の賃金を支払われないことに、法的な問題はないのでしょうか。天田圭介弁護士に聞きました。
ーー「トイレの時間は、休憩に」というルールに法的な問題はないのでしょうか。
今回の相談事例で、会社の言い分としては、トイレに行く時間は休憩時間であり、労働時間に当たらない。そのため、その分の賃金を控除しようするものかと思われます。
休憩時間に当たるか、それとも労働時間に当たるかについては、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていると評価できるかどうかを基準に判断されます。
ーー今回の件では、どう判断されるだろうか。
一般に、トイレは生理現象によるものですし、かつ短時間で済ませてすぐに業務に戻るものです。そこで、トイレに行く時間は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれているものと評価でき、労働時間に当たると考えられます。
したがって、一般論としては、会社の言い分は認められないということになります。
ーー「一般論」ということは、そうではないケースもあるのでしょうか。
例外的に、会社の言い分が認められる場合もあると考えられます。
たとえば、頻繁に長時間トイレに行ったり、スマートフォンで遊んでいたり、業務と無関係の通話をしたりするなど、生理現象によるトイレとはいえないような事実が認められる場合です。
このような例外的な場合には、もはや労働者が使用者の指揮命令下に置かれているとは評価できず、休憩時間に当たると考えられます。したがって、会社が十分な証拠を取得しているのであれば、例外的に会社の言い分が認められるということになります。
ーーその場合、懲戒処分の可能性もあるのでしょうか。
このような例外的な場合には、労働契約上の職務専念義務違反として、注意や懲戒処分の対象となり得ます。実際に業務に支障が生じているのであれば、人事考査による評価に影響することもあり得るでしょう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
天田 圭介(あまだ・けいすけ)弁護士
企業による適正な人事・労務管理の結果、労働者の権利が確保されるとの理念のもと、企業から人事・労務に関する多くの相談を受けるとともに、主に企業側の代理人として、多くの労働事件を手掛けている。東京弁護士会所属
事務所名:天田綜合法律事務所
事務所URL:https://amada-law.com/