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WANIMAが語る“不可能を可能に変える”原動力 初の映画主題歌「Drive」とドーム公演に向けて

2018年05月13日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 今、凄まじいスピードで“国民的ロックバンド”への道をひた走っているWANIMA。5月16日に配信リリースする「Drive」は、東出昌大×新田真剣佑出演の映画『OVER DRIVE』(6月1日公開)の主題歌として、初めて映画に書き下ろした楽曲だ。


(参考:WANIMA、国民的ロックバンドへの道を駆け上る! ツアー名古屋公演で新曲「Drive」初披露


 今年1月にリリースしたアルバム『Everybody!!』は、オリコンチャート含む6冠を獲得し、30万枚を超える大ヒット。また、収録曲「シグナル」は、発売後に広瀬すず出演のロッテ「爽」新CMソングに起用された。2月からはライブハウスとホールの両方で20万人を動員するツアー『Everybody!!Tour』を行い、8月にはツアーのファイナルとして、初のドーム公演である、7万人動員のメットライフドーム2DAYSの開催が決定している。


 これら事実を並べただけでも、今のWANIMAの勢いは一目瞭然だろう。めくるめくスピードでバンドの状況が好転していくなかで、KENTA、KO-SHIN、FUJIの三人はいったい何を感じ、どんな未来を思い描いているのだろうか? じっくりと話を聞いた。(編集部)


■「入り口は何でもいい」(KENTA)


一一まず幕張メッセ(『Everybody!!Tour』4月21日、22日公演)の感想ですけど、ライブハウスの延長にあると同時に、圧倒的なエンターテインメント性もあって。素晴らしかったです。


一同:ありがとうございます!!


一一ああいうスケールの大きな演出は、三人で考えていくんですか。


KENTA:「お客さんとの距離が離れるのは嫌だ」って話はずっとしていたし、アリーナでもスタンディングはNGにしたくなくて。だったら「お客さんとの距離を近づけたいならセンターステージや」っていう意見をスタッフの方からいただいたので、そこからはチーム全員で考えていきました。


一一みんなの顔を見るためには、ステージが回転するのも必然だった。


KENTA:そうです。ライブハウスの距離感とはどうしても変わってきちゃうので、その寂しさをどうやったら感じさせないようにできるかなって。そこは時間をかけて考えた気はします。


一一具体的に、どんな取り組み、心がけがあったんでしょうか。


KENTA:や……すごいシンプルでした。ただ歌を届ける!! そこにどんな照明や演出がプラスされるのかっていうこともあるけど、話せば話すほどシンプルになれました。歌。バンドの歌。それがベースにあって。やから精神性が鍛えられました。まず「届く!!」「やれる!!」って自分でも信じる。そしてそれに向けてしっかり練習する。じゃないとやれないと思うんですよね、あのステージは。どこにも逃げ場がなくて、他の音は一切入れずに三人だけでやるって、客観的に見ても結構な勇気がいることやと思います。


KO-SHIN:……360°全部見られとるけん、前に向かってやると同時に、後ろにも常に意識を持っていくというか、常に360°全員に歌を届けないといけない。あとは言葉も。やっぱり会場が広いからはっきり言わないと伝わらないんですよ。


一一昔あれだけ黙っていたKO-SHINくんが……。すごい変化ですよね。


KO-SHIN:(微笑)。僕、今回のツアーから叫ぶパートが増えたんですけど、そこも「もっと聞き取りやすく叫べたら」って修行しました。僕が叫ぶことによって会場の雰囲気も変わればいいなとか、二人の喉の調子も助けられたらなとか。三人の中での助け合いというか。それは今回のツアーで考えたし、ちょっとずつ成長できたと思うので。


一一あと、客層が広がったぶんバンドの理解度にも差がありますよね。たとえば「やってみよう」しか知らない子どももいるかもしれなくて。


KENTA:あの……僕も初期の頃はバンドだけやれればいい、って考えてたんです。あんまテレビとかも出ずに。でも、よりたくさんの人に届けたいっていうテーマを持ってからは、入り口は何でもいいのかなって思うようになりました。「やってみよう」がきっかけでも、ライブに来てくれたなら、ほんとに楽しんでもらえるように歌うだけ。僕らとともにこの先を信じてもらえるように。そういう人間でありたいと思ったら、もう入り口はどこでも良くなったんです。テレビとかラジオも自分たちから「やりたい!!」ってスタッフの方に伝えたので。で、実際にテレビで知って一曲しか知らない人も、ライブに来てくれたなら楽しんでもらえる自信はある。自信っていうか、そのための準備はちゃんとやってきたなって思います。


一一多くの人に届けるというテーマは、いつ頃から芽生えたんですか。


KENTA:だいぶ前ですね。バンドが上手くやれなかった時。ピザ・オブ・デス(WANIMAが所属する事務所<PIZZA OF DEATH RECORDS>)に出会う前です。やっぱり聴いてもらわないと気づいてもらえない。それがすごく辛かったし悔しかったから。今も僕たちのことをまったく知らない人がいるって思うと、それが励みになったりします。


FUJI:最初にバンドやり始めた時から、どうせやるなら大勢の人に聴いて欲しいっていう気持ちが強かったんで。みんなが持ってる気持ちだと思うんですけど、WANIMAはそれが特に強かったのかなとお腹がへった時によく思います。


一一悔しさや向上心はどんなバンドも持っていますけど、WANIMAは見ている夢の大きさが違うなと思います。今のロックシーンでは、ライブハウスを飛び越えてアリーナに進んでいく人のほうが珍しい。


FUJI:あぁ……お腹すいた……じゃなくて、飛び越えたっていう感じはないです。ライブハウスも好きですし、アリーナも好きですし。どっちでもやれるバンドでありたくて。


KENTA:正直、場所は関係ないのかもしれないですね、WANIMAにとって。そこを貸し切ってみんなと何ができるか、どうやって開催できるか、のほうが大切で。


一一貸し切ること。対バンではないワンマンの形も大事ですか。


KENTA:あ、もちろん対バンも大好きです。やっぱり対バンがいないと寂しいんで。でも一般の人からすると「対バンって何?」って話で。対バンという言葉の意味もわからない人もいると思うんですよね。


一一あぁ……確かに。その通りです。


KENTA:バンド界隈での「当たり前」が、当たり前じゃないんだって気づいてから、いろんなところに目が行くようになりました。「あ、そうなんや!!」って思うことがいっぱいあって。最初はびっくりするんですけど、「みんなそれぞれの楽しみ方があるんだな」って。そこに気付けるか気付けないかが、より大きいところでやるかやらないか、に繋がっていくと思う。


一一そこに早く気付けたのが凄い。私、普段はライブハウスにいるから「あのバンド、売れてデカくなって、今じゃステージが回ってるんだって」って聞かされたら、たぶん小馬鹿にするタイプなんです(笑)。


KENTA:はははは!! いや、わかります!! (笑)。


一一「全員イヤモニしてるんだって~。なんだそれ?」みたいな。


FUJI:自分たちもそうでした(笑)。


一一それがごく狭い世界の偏見だっていうことを、今、WANIMAによってリアルに気付かされてる(苦笑)。


KENTA:でも言ってること、わかります。僕らもそういうとこありました。


FUJI:それが意外と。やってみたら……なんか意外とハマりましたね。


KENTA:そう!! そういうのは全部お客さんから気付かされた。なんか人に対しても自分に対しても決め付けすぎだったなって。ほんとは決め付けないのがロックなんだと思いますね(カッコつけながら)。


FUJI:だって今、ミーティングで「絶対こう!!」とか言うとKENTAに怒られますもん。「絶対、じゃなか!!」って。なるべく凝り固まらないように。


■「三人でテレビに出てるって気はしない」(KENTA)


一一その結果が『Everybody!!』の30万枚セールスになっていて。本当に幅広い層に届いた一枚になりましたね。


KENTA:ありがとうございます。昨日、練習終わりにスタジオの前で職質を受けたんですけど。まぁ23歳くらいの若い警察の方が「何してたんですか?」って言うから、ここで練習してましたって答えたら「あれ? お兄さん、あの……『紅白』に出てた、なんだっけ? あの元気な歌のバンド、あの人に声似てますね!!」って。


一同:ははははははははは!!


一一声なんだ(笑)。顔じゃなくて?


KENTA:顔はマスクしてたから。で、「あら、それたぶんWANIMAじゃないですか?」「そうそうWANIMA!! WANIMAの歌の人にお兄さんすっごい声似てますよ!!」って。こういう若い、目のキラキラした警察の方にも届いてるんだなって嬉しくなりました(一同爆笑)。


一一え、結局KENTAさんだって気付かないんだ!!


FUJI:だから、まだまだです。


KENTA:嬉しいけど、まだまだだな、と(笑)。だから、いろんな認知の仕方があるんだなと思って。そのギャップもあるんですけどね。


一一テレビで見るWANIMAはとにかく元気ですよね。みなさんピースサインで「イエーイ!!」って出ていく。あれは、あえて、なんですか?


KENTA:はははは。まぁでも、さっきのイヤモニの話もそうですけど、なんとなくのイメージで決まっちゃう、いわゆるミュージシャンの立ち居振る舞い? そういうのを覆したかったところはあるんですよね。


一一アーティスト気質とか、ちょっとミステリアスぶる感じの。


KENTA:そうそう。そういうのが僕らに合わなかっただけですね。僕らはみんなと変わらないし、みんなと同じような生活をしてるんで、テレビに出た瞬間からスカしたり飾ったりするのは違うのかなって。だから自分たちも楽しみながら、自然体でやれたらいいなって。そういう人に憧れもあったので。


一一憧れ? 前例ってなくないですか?


KENTA:いや、僕の周りには多かったです。表面・表情ではわからない、すごい辛い過去を持っとったりするのに、めちゃくちゃ明るい人。そういう人たちに僕らは支えられてきたので。


一一そこも精神力ですよね。テレビで「イエーイ!!」ってやってる人たち、どうしたって馬鹿に見えますから(笑)。


KENTA:そうですよね!!(笑)。


FUJI:まぁ実際、馬鹿なのかもしれないです(笑)。


一一誤解を受けるのは平気ですか。


KENTA:いやいやいや!!


FUJI:辛いっすよ!! 当たり前に(笑)。


KENTA:やっぱヘコむ。「よく……そんなこと平気で言えるよね?」みたいに思うこともあります(笑)。でもそれも、短い人生で考えたら。そういうことはグッとこらえて、また次のステップに行くためにどうしたらいいのかって。それはけっこう毎日の繰り返しですね。


一一ただ、マスの反応はそれぞれですけど、コアな現場、ライブハウスのフロアでは泣きながら歌ってる子が驚くほどいるんですよね。


KENTA:はい。そういう人たちがいるからテレビも出ていける。ライブで見る表情やったり、応援してくれてる人たちのことを思えば。なんか三人でテレビに出てるって気はしないですね。「みんなを代表して出てるんや」っていう意識をどれだけ強く持てるか。そこが大事で。それで歌が届いて、それぞれ一人ひとりの大事な歌になって、みんなが「これは自分の歌だ」って思えるものになっているなら、僕らが音楽やってる意味があるなって思います。


一一今回ツアーでは新曲「りんどう」も披露されました。バラードと言ってもいい、メッセージの染みる曲で。


KENTA:はい。これは熊本地震が起きて、改めてWANIMAにできることは何かなって考えたら、やっぱり音楽で。じゃあ音楽を通じて何ができるかなって考えたら、18年育った熊本、天草に気持ちが向いてました。りんどうって熊本の県花なんですけど、群れて咲かずに一本一本咲くんですよね。その姿を思い浮かべたら、みんなと変わんないなって。〈どこにいても枯れないように〉って歌ってるんですけど、そういう思いを込めて創りました。


一一群れないで、というメッセージも含まれてますか。


KENTA:んー、僕ら、「ともに」って言ってますけど、みんなで手ぇ繋いで一緒にゴールするっていう意味じゃないので。それぞれが自分の生き方をしながら、一緒にいなくてもたまに心で寄り添って、それで「ともに」生きていけたらなっていう意味なんです。簡単な同調とは違うから、言葉で伝えるのは難しいですけど。やっぱり……大切な人が突然おらんくなることも目の前で起きたりしましたし、あとはみんなからもらう大量の手紙を読んだり。そういうのに触れたりすればするほど、中途半端な意思の歌は届けたくないなって思いました。ちゃんと説明できる曲を世の中に残していきたい。


■「どんどんシンプルになっていく」(KENTA)


一一もう一つの新曲が「Drive」。これは映画『OVER DRIVE』のための書き下ろしで。タイアップの曲作りも増えましたけど、面白いものですか。


KENTA:……他のアーティストさんはわかんないですけど、WANIMAは「WANIMAらしく創ってよかよ」ってみなさん言ってくださるんですよね。だから余計に難しい。らしさって何だろう? って。でも、三人だけじゃないというか。チームで一緒になって創って、仲間が増えたっていう感じがあります。だから余計に期待に応えたくなっちゃうし。


一一最初のコーラスは三人の枠を超えた大合唱のように聴こえます。


KENTA:はい。ライブでみんなほんとに歌ってくれるじゃないですか。みんなと歌いたいことをアタマに持ってきました。みんなで歌うのをイメージできるように。実際ここは三人で何回も歌いました。


FUJI:大勢で歌ってるように。たくさん重ねて。


KENTA:やから大合唱っていうイメージはありました。みんなで歌ってるライブのイメージ。プラス、そこに映画を見た時のイメージを重ねていって。


一一この曲の〈何も手に入れてない 諦めたほうが楽で〉〈誰もが口を揃え 無理だと言い聞かす〉ところから、〈不可能を可能に変えて〉いくのは、ここまでのWANIMAのストーリーにも当てはまるものです。


KENTA:はい。ちゃんと向き合っていきたいと思ってます。どんな小さなことでも、ちゃんと温度が通うように。そこは意識してます。ひとつひとつ、WANIMAのことはWANIMAがちゃんと説明できるように。


一一自分たちが関与しないまま、勝手に動いてしまうものを見過ごしたくない。


KENTA:はい。なるべく、ないようにしてます。unBORDEとタッグを組んで、ピザの人たちと一緒にやっていく中で。やっぱり人が増えるとどうしてもそうなりがちだと思うんですけど、なるべくそれは減らしたい。


FUJI:だからミーティングとか、しっかり話しますよ。丸投げして誰かに任せたほうが楽だとは思うんです。でも思ったことを言わないと、やっぱり血が通わなくなるっていうか、WANIMAらしくなくなると思います。


一一そこがやっぱりライブハウスのバンドだなと思いますね。だからこそ、ツアーファイナルがメットライフドームというのも衝撃的なニュースで。


FUJI:はい。これはもう単純に「驚かせたい!!」っという気持ちで。


KENTA:もともと、アリーナの次はドームっていうのがあって。で、ドームでやるにしてもやっぱりスタンディングがいいってことで。メットライフドームが初のスタンディングを受け入れてくださったので。


一一二日間で7万人。凄いですよね。


KENTA:でもドームであろうとアリーナであろうとライブハウスであろうと、やることは変わらないです。ライブなんで。歌なんで。そう考えるとすっごいシンプルで。規模が大きくなるともっと豪華な音が欲しくなって、同期だったりが増えるのかと思ってたけど、いざ増やしてみると「や、やっぱWANIMAにはいらんね」って。どんどんシンプルになっていくんですよ。


FUJI:だから変わってないんですよ、自分たちでは。変わってないっていうか、より良くしよう、っていう気分だけが大きくなっていってる。


KO-SHIN:……(ボソッと)変わったとしたら、その気持ちだけです。


一一私、「さいたまアリーナの次にメットライフドームだ!!」って言われたら、少し気持ちが萎えてたかもしれない。でも幕張メッセの景色を見た今は、ドームがすごく楽しみになっていて。


KENTA:あぁ……ただ大きいところでやりたがってるだけじゃない、やらされてるんじゃないって感じてもらえたんですかね?


一一そうです。まさに。


KENTA:はい。やっぱり、音楽がしたい、届けたい。その思いが先にあります。そこは以前より強くなったし、強くさせてもらえてる。だから今は全力で音楽をやるだけで。僕たちが信じてることがWANIMAの歌には入ってるんで、それをみんなで歌っていけたらなと思います。(石井恵梨子)