全日本ロードレース選手権第3戦のJSB1000クラス決勝レースが大分県日田市のオートポリスで行われ、渡辺一馬(カワサキ・チームグリーン)が優勝した。2位表彰台を獲得したのはチームメイトの松﨑克哉。天候に翻弄された日曜日、カワサキのホームコースでチームグリーンのふたりが奮起した。
決勝日はドライで行われた予選日から一転、朝から雨となり、午前中に予定されていた朝のフリー走行はスケジュールがディレイとなった。その後、雲は厚いものの天候はやや回復。
決勝直前の11時50分より15分間のフリー走行が行われた後、決勝レースは当初の予定から5周減算となる15周で、12時30分にスタートすることになった。スタート時点では路面はまだウエットながら、雨は上がっており、タイヤ選択が難しい状況だった。
好スタートを切ったのは2列目6番グリッドからスタートした高橋巧(チームHRC)。ポールスタートの中須賀克行(ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム)が1コーナー立ち上がりで抑えようとするが、高橋巧がトップを奪取する。
しかし、1周目の第2ヘアピンで中須賀が高橋巧のインをついてトップに浮上。オープニングラップを中須賀、高橋巧、渡辺一樹(ヨシムラ・スズキMOTUL)、秋吉耕佑 (au・テルル・MotoUP RT)の順で通過する。
4周目には徐々に秋吉が遅れ出し、トップ争いは中須賀、高橋巧、渡辺一樹の3人に絞られていった。この3人、レース中盤に激しいデッドヒートを繰り広げる。
6周目のホームストレートエンドで渡辺一樹が一気にトップに浮上すると、第2ヘアピンでは中須賀が高橋巧を交わして2番手に上がる。3番手に後退した高橋巧だったが、7周目の第2ヘアピンでトップを奪還。高橋巧はそこから中須賀と渡辺一樹をじわじわと引き離し始め、単独トップに立つ。
優勝争い、そして表彰台争いは完全にこの3人に絞られたか、と思われたが、この後に劇的とも言える展開が待っていた。
レースも折り返しとなったこのころ、スリックタイヤを選択した渡辺一馬がハイペースでポジションを回復し始めたのだ。レース序盤は17番手付近につけた渡辺一馬だったが、8周目に5番手、9周目に4番手に浮上。コースコンディションはドライともウエットとも言い難い、微妙な状況だ。
スリックタイヤを選択した渡辺一馬のペースは、レインタイヤを選択していた高橋巧より1周につき約5秒ほど速いラップタイム。渡辺一馬は怒涛の追い上げを見せ、上位陣の背後に迫る。
10周目には高橋巧の真後ろにつけると、第1ヘアピン先の高速の8コーナーであっという間に交わし、トップに浮上する。そこからも渡辺一馬はハイペースで周回を重ね、誰にも追随を許すことなくJSB1000初優勝を飾った。
2位に続いたのは、チームメイトで同じくスリックタイヤを選んだ松﨑。松﨑も渡辺一馬と同様に中盤以降、ハイペースでポジションをばん回。次々と上位陣を交わしてうれしいJSB1000初表彰台、2位入賞を果たした。松﨑は決勝中のファステストラップも記録している。
カワサキのJSB1000優勝は2010年の柳川明以来となる。ホームコースのオートポリスでワン・ツーフィニッシュを果たし、チームグリーンは最高の結果を残した。
3位には、10番グリッドからスリックタイヤをチョイスしてスタートした高橋裕紀(モリワキMOTULレーシング)が中盤以降、こちらもめざましい追い上げを見せて入賞。今シーズン初表彰台を獲得した。
高橋巧はレインタイヤで何とか踏ん張り、4位でゴール。さらに高橋同様にピレリのスリックタイヤをチョイスした星野知也(TONE RT SYNCEDGE4413)が20番手グリッドから5位に躍進した。
序盤にトップ争いを繰り広げた渡辺一樹は6位、中須賀は9位でチェッカー。フロントロウスタートだった津田拓也(ヨシムラ・スズキMOTUL)は11位に沈み、秋吉も12位でフィニッシュしている。天候やコースコンディションの判断、タイヤ選択に明暗が分かれるレースとなった。