昆虫といえば、小さい頃にカブトムシやバッタを飼育していたという人もいれば、見るのも嫌という人もいるだろう。昨今、そんな昆虫を食べる動きが高まっている。
2050年には世界の人口が約30%増加すると予測されており、今後どのように食糧を確保するかが問題となっている。その解決策として国連食糧農業機関は2013年、栄養価が高い「昆虫類」の活用を推奨する報告書を発表した。
日本でもイナゴやハチノコなどを食べる地域はあるが、ほとんどの人は昆虫食と言われてもピンとこないだろう。しかし今年4月にオープンした「昆虫食のTAKEO」(東京都台東区)では昆虫食を購入できる。店長の三浦みちこさんは「ここ1年だけでも昆虫食の知名度は上がったように思います」と話す。
「幼虫ミックスはパーティー、カブトムシ・タランチュラはプレゼントに人気」
同社は2014年に昆虫食のネットショップを開設。昆虫食に興味を持つ人が近年増えているといい、「売上も右肩上がり」だという。顧客からの「直接買いに行きたい」という声に応え、実店舗を構えるようになった。
購入者の多くは20~30代で、約6割が男性。しかしリピーターは女性の方が多いという。エスニック料理感覚で食べているのかもしれない。インスタ映えを狙って買っていく人もいるようだ。また近隣住民や小学生も興味を持って立ち寄ることもある。
最も売れている商品は4種類の幼虫が入った「幼虫ミックス」(1180円)。加熱処理した後に塩で味付けしてあるので、玄人レベルになるとスナック感覚で食べることができる。量が多いため、パーティーで出して大人数でワイワイ食べる人が多いという。
「他にも『カブトムシ』や『タランチュラ』も人気で、プレゼントにと買う人も多いですね。ちなみにカブトムシは大地の味、タランチュラはイカっぽい味で脚はサクサク食べられます」
「目指すは世界の昆虫食が手に入るセレクトショップ。昆虫食のビームス目指します」
これらの商品は昆虫の形そのままだが、「粉末バッタ」や「粉末カイコ」なども販売している。三浦さんは「食糧危機を考えて昆虫食に興味を持たれた人は、粉末を買って料理研究することが多いです」と話す。
「商品は昆虫食が日常的なタイから輸入しています。乾燥しているので少し風味は落ちますが、スナック感覚でいけます。でも、そのへんにいる虫も普通に食べられるんですよ。例えば『カメムシ』。茹でて食べるとパクチーの味がする種類もいれば、青りんごの風味がする種類もいます」
1年前から昆虫食に携わるようになった三浦さん。「ネットショップだけだと顔がわかりませんが、店舗だとコミュニケーションが取れる。私もまだまだなのでお客様から教えて貰うことも多いですし、うちの商品で喜んで貰えることを実感できて嬉しいです」と話す。
今後については「店舗では昆虫を使った料理を作ったり食べたりするイベントをして、昆虫食を楽しんで欲しい。ネット通販も含め、世界の昆虫食が手に入るセレクトショップになることが目標。昆虫食のビームスを目指します」と語った。
※虫画像注意!「アリはドライグランベリー、カブトムシはスルメ」
キャリコネニュース編集部も実際に商品を購入して食べてみた。「幼虫ミックス」のカイコの幼虫は、食感がカール。味は最もまろやかで食べやすい。
一方、じゃがりこ大のスーパーワームは最も大地の味がした。ベビースターの形状に似たザゴワームとミルワームは癖のある穀物のようだった。どれも醤油を付けたら非常に食べやすくなった。
「カブトムシ」(1280円)は甲虫なだけあって固かった。特に胴体は噛み切ることが困難。最初はすえた味がしたが噛むごとに甘みが増し、スルメに近い。
「アリ」(1480円)は酸味が強く、アイスクリームにかけて食べるとグランベリーのドライフルーツのようにも思える。一番美味しかったのはバッタをチョコでコーティングした「バッタチョコ」(1180円)だ。風味が抹茶のようで、食感がミルフィーユ。意表をついたバレンタインチョコとしてもいけるかもしれない。
調理してみた! 幼虫ペペロンチーノ、アリ添えカプレーゼ、アリディップ
しかし全てそのまま食べきるには量が多く、味にも物足りなさを感じてしまう。そこで料理に使ってみた。幼虫ミックスはどれも少し土っぽさがあるので、ニンニクをふんだんに使いペペロンチーノを作った。
幼虫を一緒に炒めると、ニンニクと穀物の香ばしいにおいが漂う。味も土臭さが気にならない。ただ虫にオリーブオイルが行き渡ったため少し柔らかく、かつ見た目もテカテカになったので、生きた虫のようにも感じられた。苦手な人はご注意いただきたい。
アリをかけたカプレーゼははたから見ればキャビアを載せたようにも見える。酸味はバジルに負けてしまったが、シャリシャリした食感を楽しむことができた。アロエヨーグルトも食感要員としかならなかったが、マヨディップはアリの酸味が際立った。
幼虫ミックスをかけたサラダは、ドレッシングをかけたにも関わらず結構虫が主張してくる。事前に油とニンニクと一緒に炒めるか、下味を付けて揚げるかすべきだった。
久々に「この食材をどう美味しくするか」ということに向き合った料理タイムだった。今後の食糧難に備え、いまから昆虫食をレパートリーに入れておくといいかもしれない。
取材先:昆虫食のTAKEO
東京都台東区松が谷1-6-10(営業時間:13~18時、不定休)