日本で1年間に食料廃棄処分される食料は621万トン。「フードロス」が問題視される中、廃棄せざるを得ない食事とユーザーをマッチングさせるフードシェアリングサービス「TABETE」が4月下旬、正式にリリースされた。
同サービスを提供するのは、フードシェアリング事業を行うコークッキング。ロスが発生しそうになった登録店舗が食品の情報を「TABETE」に掲載する。その情報を見た一般ユーザーが食品をネット上で購入し、期限までに店頭に取りに行き"レスキュー"するというものだ。
正式にリリースから約1週間後の5月8日現在、登録店舗数は東京近郊の飲食店約110店舗で、ユーザー登録数は約1万5000人。1日平均3食前後、合計70食程度レスキューされているという。
弁当、居酒屋メニューにケーキまで! 出品数は夕方~夜にかけて増える傾向
筆者も同サービスに登録し、レスキューを試みた。登録料は無料で、購入する際は事前にクレジットカードで支払う。平日16時頃に公式サイトを確認すると、3店舗の「レスキュー待ちの商品」が掲載されていた。
六本木にあるヴィーガン料理の「Veganic to go」からは有機イチゴのカスタードタルト、表参道の「ハラカラ。南青山店」からはオニオンリングが出品されていた。仕事帰り、夕食を手に入れたい筆者は、人形町のカレー屋「バシカレ」のタンドリーチキン弁当を選択した。
価格は通常650円のところ500円のワンコイン。店舗側は出品理由として「雨で売れ残りが多く、賄いで食べるには多すぎるのでどなたかお願いします!」とコメントしている。店側が指定した引取予定時間も22時までだったのが、ありがたかった。
購入時に入力した情報は「引取予定時間」「購入個数」「メールアドレス」「クレジットカード情報」のみ。手続きは簡単だ。すぐ注文詳細が記載されたメールが送付された。
ちなみに19時頃、再度サイトをのぞくと700円の商品が300円、居酒屋料理の詰め合わせが500円でレスキュー待ちとなっているなど、非常にお得な商品が掲載されていた。この時の掲載数は6店舗。夕方から夜にかけて掲載数が増えるようだ。
現在は東京近郊のみ 今後は全国でも利用可能になる予定
退勤後、弁当を受け取りに向かった。メールから商品受取用のページを開き、店舗側に確認してもらうとすぐ弁当を渡された。店舗側が受取時間に合わせて用意してくれていたため非常にスムーズに受け取ることができた。
「TABETE」のステッカーが貼られた弁当には、白米にゴロゴロしたタンドリーチキンが8つ、春巻き、ナスの煮浸し、卵焼きなどが入っていた。品数も量も多く、空腹を満たすには十分だった。特にタンドリーチキンはビールが進んだ。
今回は電車代がかかったため、トータルでは元値より高くなってしまったが、会社や自宅付近、通勤・通学途中に店舗あれば食費削減に一役買ってくれそうだ。個人的には「捨てられてしまうものを救いに行った」という印象が強く、弁当を買いに行っただけだが良いことをした気分になった。
コークッキング取締役の篠田沙織さんは「昨年9月から今年4月にかけて試験的にβ版での運営をしていました。日本ではまだ『フードロス』という言葉は浸透していないと思っていたのですが事前登録者は1万7000人に及びました」と語る。
「ユーザーからは『食べ物を救っている実感が得られた』『TABETEがきっかけで行ってみたかったお店に行くことができた』、店舗からは『有効活用できて嬉しい』『サービスを通じてお客様とコミュニケーションを取ることができた』などの嬉しい言葉をいただきました」
β版では東京近郊の店舗のみが対象だったが、全国各地の飲食店から「導入したい」という声が寄せられ、今後は全国展開を予定している。また出品情報はツイッターで通知しているが、現在開発中のアプリ版に通知機能を実装し、タイムリーに情報が届くようにする予定だ。
今後の展望について篠田さんは「TABETEと同じ志を持つ人とフードロス削減に向けて手を取り合い、さらなるムーブメントを醸成していけたらと思っております」と話した。