5月11日、都内でマン島TTレースに参戦するTEAM MIRAI(チームミライ)の参戦発表会が行われ、マン島TTの電動バイククラス『TT Zero』を戦う『韋駄天X』がお披露目。発表会では登場したチームの代表であり監督を務める岸本ヨシヒロがニューマシンが解説するとともに、参戦に向けた意気込みを語った。
チームミライがマン島TTに参戦するのは5年ぶり。5年前の2013年、チームミライは松下ヨシナリをライダーとして参戦予定だったが、松下はマン島TTの他クラス参戦中、不慮の事故により亡くなった。以来、チームミライは2014年から2017年にかけてアメリカのパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに参戦し、マン島TTへ復帰するタイミングを図っていたという。
今回の参戦は、松下の盟友でありライダーを務めるイアン・ロッカーのレーシングチームTeam ILRとチームミライがコラボレーションしたもの。チーム監督は代表でもある岸本が務める。この日行われた発表会では、岸本により2018年のマン島TTを戦うニューマシン、『韋駄天X』がお披露目された。
発表会に登場した岸本は、ニューマシンについてこう説明する。
「今回は、『2ストロークバイクに近い電動バイク』の開発を目指しました」
マシン名である韋駄天というのは俊敏な動きをするイメージの神様のこと。2ストバイクのように俊敏なマシンを開発コンセプトとして、その名を冠した。
「パワーフィーリングがすごくよくて、マシンが軽く、俊敏。しかも、動力性能としては、2ストバイクのように、俊敏で軽いマシンを目指しました。今、日本ではほぼ新車で2ストバイクを買うことができません。それを電動バイクでやったら面白いコンセプトになるんじゃないかと思ったんです」
岸本の手によりお披露目されたチームミライの韋駄天Xは、確かに横に置かれた前モデル韋駄天よりも車格が小さめ。韋駄天XはホンダNSF250Rのフレームを使用し、車重は約140キロだ。プライベーターであるチームミライには使えるモーターやユニットに制限がある。そのため、できるだけマシンをコンパクト化し、少ないパワーで出力を上げられるようにした。
新たに搭載するインバーターはYPUとチームミライの共同開発で約2年かけて開発されたもの。バッテリーは中国製のものを使用し、モーターはゼロモーターサイクルズとのコラボレーションで造られたもので、予想される最高速度は時速約260キロだという。
■韋駄天Xは世界に類を見ない水冷と空冷のハイブリッドマシン
そして韋駄天X最大の特長といえるのが、水冷ユニットだ。インバーターとモーターが水冷化された。これがさらに、水冷でありながら空冷でもある、ハイブリッド。これまでの空冷のユニットを活かしながら、水冷化もされている。
「こういう方式のモーターは世界にほかにないと思います。思いつきがそのまま形になるのが電動バイクのおもしろいところですね」と岸本は語る。
また、この韋駄天Xには裏テーマがある。『JAPAN』、それが韋駄天Xが持つもうひとつのコンセプトだ。
「マシンカラーリングは歌舞伎の隈取をイメージしています。日本の伝統を表現したいというのもあって、歌舞伎を意識しました。チームミライのカラーであるブルーに加えた赤と白のトリコロールカラーは、過去・現在・未来を表しています」
同クラスには5連覇をねらうTEAM MUGENがいる。それについては「チームミライとしては、自分たちのベストを目指すだけ。前回の2013年のタイムを確実に更新します」と岸本。2018年マン島TTへの参戦に向けて、こう意気込みを語った。
「今年、5年ぶりの挑戦になります。マン島TTのレジェンドライダー10人に入る、考え方も人間性もすばらしいイアン・ロッカーというライダーとコラボして、再挑戦します。亡くなった松下さんのリベンジ、供養にもなると思います」
「やるからには結果を出したいと思っていますので、表彰台を目指して全力で頑張っていきます。応援よろしくお願いします」
またこの日、チームミライが岸本をライダーとしてパイクスピークスにも参戦することが発表された。これについては「(パイクスピークスは)コースレイアウトも魅力的。世界一の峠王決定戦だと言えるレースです。これに電動バイクで参戦できるというのも、すごく楽しみですね」と岸本。
発表会では岸本に加え、韋駄天Xの製作に携わった関係者によるトークセッションあり、チームのサポーターたちを交えたじゃんけん大会ありと終始和気あいあいとした雰囲気で進んだ。
マン島TTレースは5月30日から6月6日にかけて開催される。チームミライが、プライベーターの雄として5年ぶりにマン島TTに乗り込む。