2018年05月11日 19:42 弁護士ドットコム
東京都墨田区のJR錦糸町駅前に居ついた1匹のカラスが、話題になった。駅利用者のICカードを奪うなど、いたずらしていることから「発券機カラス」として、テレビのニュース番組に取り上げられていた。
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そんなカラスがこのほど、一般人の女性によって捕獲された。許可のない捕獲だったことから、法律違反ではないかとして、さらに物議をかもしている。(弁護士ドットコムニュース・山下真史)
墨田区の環境保全課によると、区は4月中旬以降、JR錦糸町駅周辺で「カラスが通行人を襲撃している」という情報をキャッチしたという。通行人の頭や肩に飛び乗ったり、威嚇したり、駅利用者からICカード奪って切符を買うような仕草までしていたようだ。
GW明けの5月7日以降、市民から「駆除できないか」「いい方向で見守っていけないか」といったの問い合わせが増えた。ほとんどが、このカラスを取り上げたニュース番組を見たことがきっかけのものだったが、一部「子どもが襲われた」という相談もあったそうだ。
そんな中、一般人の女性が5月9日、このカラスを捕まえた。複数人で捕まえて、カゴに入れる様子を映した動画がインターネット上で拡散されている。その動画には、「ここにおいておいたら、(カラスが)殺される」という、この女性とみられる声も入っている。
環境省によると、野生のカラスなど「野生鳥獣」を許可なく捕獲した場合、鳥獣保護法違反に問われる(同8条)。罰則は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処する」と定められている。
5月10日放送の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)が、この女性に単独で突撃取材している。番組に対して、女性は、許可をもらわずにカラスを捕獲することが、法律違反であることを知っていた、と答えている。
捕獲した理由は、ニュースを見て「誰かに飼われていたカラス」だと確信したからだそうだ。自分でエサをとれず、「このままだと、カラスが弱っていく」ため、捕まえたという。女性は、このカラスを「タロウ」と呼んでおり、しばらく経過を見てから、同じ種の多いという長野県の山で放すとしている。
今回のケースでは、鳥獣保護法の「許可」を与える主体は、東京都だ。
都の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「捕獲の情報は入っている」と回答した。一方で、鳥獣保護法違反の可能性があるとしながらも、「(捕獲者を)特定できていないため、許可がないものだったかどうか、現段階ではわからない」とコメントした。今後、警察と情報共有しながら、対応を検討するとしている。
同担当者によると、5月から6月にかけては、カラスがヒナを育てる時期にあたる。巣に近づこうとする人間に対して、危害を加えることがあるという。そのような場合で、公園など公共施設内につくられた巣だったら、都が駆除(捕獲)に乗り出すという。
ある行政担当者によると、今回のカラスも、女性に捕獲されないままだった場合、行政によって駆除(殺処分)される可能性が高かった。通行人たちがスマホで撮影するなどして、カラスを驚かせる中で、凶暴化していくことが予想されるからだという。
(弁護士ドットコムニュース)