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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『孤狼の血』

2018年05月11日 19:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、リアルサウンド映画部の一番悪い奴・ロン毛担当の宮川が、白石和彌監督最新作『孤狼の血』をプッシュします。


参考:松坂桃李、日本映画界に欠かせない俳優に 『不能犯』『娼年』『孤狼の血』まで、その演技を考察


 2016年には『日本で一番悪い奴ら』と『牝猫たち』、2017年には『彼女がその名を知らない鳥たち』、そして2018年は『サニー/32』が2月に公開されたばかり。ここ数年は年に1~2本のペースで新作を発表し続けている白石和彌監督が放つ新たな傑作が、本作『孤狼の血』だ。


 柚月裕子の同名小説を映画化した本作の舞台は、昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島の架空都市・呉原。破天荒な捜査で警察内部からも暴力団からも一目置かれている、呉原東署刑事二課部長で暴力犯捜査係主任のベテラン刑事・大上(役所広司)と、県警本部から赴任した一流大学出の新人刑事・日岡(松坂桃李)が、暴力団も警察をも巻き込んだやくざの抗争に身を投じていく模様が描かれる。


 「警察じゃけぇ、何をしてもえぇんじゃ」というキャッチコピー、サングラスにタバコ、拳銃など、“いかにも”なアイテムとともに切り取られた男たちの姿……。人気漫画の実写化作品や、主に女性をターゲットにしたラブストーリー/人間ドラマが量産される現在の日本映画界において、ここまで男臭い映画は久しぶりではないだろうか。


 冒頭の養豚場でのシーンから男性器の中に埋め込まれた真珠を取り出すシーンまで、生ぬるい表現は一切なく、目を覆いたくなるほどの過激な描写も満載だ。最近は落ち着いた役柄の多かった役所広司が、今回のぶっ飛んだ役柄に対してそれを超えてくる演技を見せ、現在の日本映画界において飛ぶ鳥を落とす勢いを見せる松坂桃李が、後半からアクセルが全開になっていく。ほかにも、江口洋介、竹野内豊、中村倫也、音尾琢真、真木よう子、阿部純子などのキャスト陣が、出演シーンの大小に関わらずが強烈なインパクトを残す。


 原作者の柚月裕子が本作誕生のきっかけだと語っているように、本作は深作欣二監督の『仁義なき戦い』をはじめとする『東映実録シリーズ』を彷彿とさせる。久しぶりの「これぞ東映!」と思えるこの映画が、ついに完結してしまった北野武監督の『アウトレイジ』シリーズのようになってくれることを切に願う。(リアルサウンド編集部)