出産時の痛みを麻酔で和らげる「無痛分娩」や「和痛分娩」の事故に注目が集まる中、医療分野のリサーチを手がけるアンテリオは全国の産婦人科医180人を対象に実施状況を調査。5月10日に結果を発表した。
総合病院では、34%が患者の希望により無痛・和痛分娩を実施していることがわかった。医師が判断した場合のみ実施している病院は29%で、38%では実施していなかった。
産婦人科専門病院・診療所では、麻酔専門医が麻酔するのは1割以下
一方、産婦人科専門病院・診療所では、患者の希望があれば実施する施設が50%に上っている。医師が判断した場合のみ行う施設が16%、実施をしていない施設が35%だった。
無痛・和痛分娩を行う際、麻酔専門医が麻酔を担当する病院の割合は総合病院でも35%に留まり、産婦人科専門病院では8%にすぎない。帝王切開の場合でも、麻酔専門医が担当するのは総合病院で53%、専門病院では9%となっている。
無痛・和痛分娩を行っている医療機関に、実際に実施している対応を聞くと、最も多かったのは、「妊産婦に対し説明書を整備し、同意書を保存する」の83%だった。また「酸素ボンベなどの蘇生設備を使える状態で管理」している医師も69%に上る。
「マニュアルを作成する」については84%の医師が理想だとしながらも、実際に実施しているのは53%に留まっている。「麻酔を担当する医師は、定期的に産科麻酔の研修を受講する」ことが理想と答えた医師は58%にもなるが、実施しているのは19%。安全に無痛分娩を行うためにはまだまだ課題があるのが現状のようだ。
無痛分娩については、妊婦や新生児が死亡したり、障害を負ったりする事故が続発している。2017年10月にも、31歳の女性が帝王切開で出産中に呼吸困難に陥って亡くなった。
そのため今年3月には厚生労働省が安全性を確立するための提言を発表。麻酔に習熟した常勤医が麻酔管理者として責任を持つことなどを求めた。同省は初の実態調査にも乗り出している。
日本産科麻酔学会によると、日本では無痛分娩の割合はまだ2.6%にすぎない。一方、アメリカでは約61%(2008年)、フランスでは約80%(2010年)に上っている。また、イギリスでも23%(06年)、ドイツでも18%(02~03年)の女性が無痛分娩を行っている。