残念ながら雨の中で行われることになった、富士スピードウェイでのスーパー耐久公式テストの夜間走行。それでも『夜間』に『雨』という厳しい状況にも関わらず、走行したドライバーたちからは「コースは明るくて見やすかった」「全然、問題ない」との声がほとんどだった。24時間レースを開催するに当たって、富士スピードウェイはどのように夜間走行の対策を進めてきたのだろう。
今季、50年ぶりに復活を遂げることになった富士スピードウェイでの24時間耐久レース「富士SUPER TEC 24時間レース」。24時間という長丁場での戦いには、普段とは異なるさまざまな要素が求められる。その中でも24時間レースの醍醐味であり、そして安全管理が難しいのが夜間走行だ。
夜間走行に関しては、走行時の照明設備や安全確保などのインフラ整備はもちろんのこと、地元地域の理解という要素も見逃せない。
富士スピードウェイでは21時までの走行については地元の理解を得られていたが、今回の24時間開催にあたり、小山町や地域住民への説明会を開催。近隣の裾野市や御殿場市にも相談するなど地域社会への理解を求めた。地域の自治体にとっても、富士スピードウェイを起点に地域の経済が活性化することから、24時間開催についてもポジティブに受け入れてくれたという。
モータースポーツの魅力としてエンジンの排気音やタイヤのスキール音など、音の魅力は外せないが、富士スピードウェイと小山町を中心とした地元地域はモータースポーツへの理解が深い関係になりつつあるようだ。
また、設備面でも単純に夜間走行に備えて照明を増やせばいいという問題ではない。どの角度ならドライバーの視線に入らず、また、スタンドのファンから見やすいか。そして、コントロールタワーからの監視モニターに死角はできないかなど、さまざまな視点を加味して照明の設置場所、そして光量が決まる。
さらに取材を進める上で驚いたのが、TGRコーナー(1コーナー)のCARGUYスタンドで観戦するファンのためにブレーキングで赤く燃えるブレーキローターがきちんと見えるようにも照明が配置されているという点。
これは根っからのモータースポーツ好きで知られる、富士スピードウェイの原口英二郎社長のこだわりでもあるのだとか。社長自ら、モータースポーツファンにレースを楽しんでもらえるよう細かく配慮しているところに、今回の富士スピードウェイの24時間レース開催への意気込みの強さを感じさせる。
コースだけでなく、ピット前&ピットロードもチームがスムーズに作業できるよう、そしてメインスタンドからのファンが見やすいよう、照明の数が増加された。雨の中だったとはいえ、公式テストの夜間セッションでは煌々と照らされたピットロードは明るいだけでなく、幻想的な雰囲気でもあった。
暗闇の中に浮かぶようなピットロード、そしてと隣のメインストレートをヘッドライトを付けて駆け抜けるマシンとそのエンジン音を体感すれば、モータースポーツファンならずとも、不思議な高揚感が起きてくる。ひと言でいえば、夜間走行はとにかく『アガる』のだ。この感覚は実際に体感しないと沸き起こらないものなのかもしれない。
富士24時間の最大の見どころは夜間走行で間違いないが、他にも富士スピードウェイはTGRコーナー(1コーナー)イン側や13コーナー、レクサスコーナーのイン側の路肩を改修して、スピードバンプやアスファルト舗装に改修。縁石を大胆にカットするラインを防止し、さらに排水溝を設けるなどで安全性を高めている。
さらにコースサイドにはLED型表示パネルを設置。スーパー耐久で運用されているフルコースイエロー(FCY)に対応するだけでなく、夜間走行時の視認性を高めて安全面に配慮している。
6月の富士SUPER TEC 24時間レース、そして8月にはスーパーGT第5戦富士500マイル、10月にはWEC第4戦富士6hoursと、『耐久の富士』を印象づけるとともに、イベントの安全面とファンへの魅力の訴求と、さまざまな部分で進化しつつある富士スピードウェイ。まずは50年ぶりに開催される富士での24時間走行をその目に映せば、モータースポーツの楽しみを再確認すること、請け合いだ。