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ユースケ・サンタマリアが物語をかき乱す! 『あなたには帰る家がある』太郎役の存在感

2018年05月11日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 毎週金曜22時より放送中のTBS金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』でのユースケ・サンタマリアの演技が話題になっている。“夫婦あるある”が無数に散りばめられている本作の物語には、共感の声が多く上がる一方で、不倫パートについては悲鳴の声も続出。毎週、やっと夫婦が揃う時間が持てる週末を前に、家庭を冷や冷やとさせるブラック・コメディだ。


 本作でユースケが演じている茄子田太郎は、中学教諭で妻の綾子(木村多江)と息子の慎吾(萩原利久)、そして自身の両親とともに暮らす。一家の主として、「家族は俺が養っている」と横柄な態度をとり、仕事上での取引相手である真弓(中谷美紀)や、購入を勧められている住宅の担当者である秀明(玉木宏)をも刺激する。


参考:『あなたには帰る家がある』は現代のホラー? 中谷美紀の姿に見る“完璧”という呪い


 さまざまな番組の司会者としても馴染み深いユースケだが、キャリアのスタートは歌手デビューだった。今では、役者業もこなす日本を代表するマルチタレントの1人だ。ユースケにとって『踊る大捜査線』シリーズへの出演が大抜擢だったと語る完熟ライターの麦倉正樹氏は、俳優としてのユースケの演技の特徴について、次のように考察する。


「もともとは、ラテン・ロックバンド“BINGO BONGO”のボーカル&MCとして世に登場したユースケさんですが、『踊る大捜査線』シリーズのレギュラーキャストに大抜擢されたことをきっかけに、俳優としての活動も本格化させていきます。当時から、バラエティ番組などでは、“とにかく適当なことを言い続ける人”という印象の強かった彼が、『踊る大捜査線』シリーズで演じたのは、東大卒のキャリア組でありながら、どこかパッとしない、パソコンだけが取り柄の“真下正義”というキャラクター。のちに彼を主役としたスピンオフ映画『交渉人 真下正義』が作られるなど、それまでの本人のイメージとはまったく異なるこの役を好演し、人気を博したことが、ユースケさんの役者としての評価に繋がったのではないしょうか」


 その後、数々のドラマや映画などで、“冴えないけれど、どこか憎めない中年男”の役を好演し続けてきたユースケ。しかし近年、その役どころに、大きな変化があったと麦倉氏は言う。


「2011年に放送された上戸彩主演のドラマ『絶対零度~特殊犯罪潜入捜査~Season2』(フジテレビ系)に、“ラスボス”役として登場したあたりからでしょうか。昔から“どんなに面白いことを言っても、目が笑ってない”とは言われていましたが、その特性を活かして、単なる“冴えない中年男”ではなく、“冷徹で無表情なサイコパス”役を数多く演じるようになったのです。最近の作品で言えば、『火の粉』(東海テレビ・フジテレビ系)、『連続ドラマW コールドケース ~真実の扉~』(WOWOWプライム)などがそうですね。いずれも非常に恐ろしい、実に凶悪な役どころでした……」


 また、『あなたには帰る家がある』でユースケが演じている役柄について、ライターの佐藤結衣氏は次のように考察する。


 「ユースケさんが司会を務めていたバラエティ番組『『ぷっ』すま』での女性ゲストとのスキンシップの取り方に比べて、ドラマでユースケさんが演じている太郎の女性との接し方は、すごくいやらしく見える。絶妙なバランス感覚があるからこそ、その真逆をドラマの中では演じることができているのかなと感じます。言う人が言えばセクハラになるようなことを“お色気発言”にできるのは、その塩梅が分かっている人だからこそ。現実を観察しているからこそできる演技だと思います。また、ユースケさんは、太郎の何を考えているか分からないところをあえて強調して演じている気がします。真弓は視聴者の共感を得るポジション、秀明の不倫相手である綾子はいわば悪役、そして翻弄される秀明という、3人全員が説明調でストーリーを動かしていく。それに対して、物語がどうなっていくか分からない要素は太郎が担っている。いろいろな物事を太郎は知っているのか知らないのか、もし知っているならどこまで知っているのか……。ユースケさんは視聴者にとって見当もつかないような表情を浮かべているので、かき乱す役として見事に作用しています。ユースケさん自身、ふざけているのか真面目なのか分からないことが多いので、ひょうひょうとしているように見せるのが上手い人なんだと思います」


 ユースケ演じる太郎は今後どんな行動に出るのか。誰にも予想はできないようだ。


(大和田茉椰)