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「ダンまち×キノの旅」奇跡のコラボが生まれた舞台裏とは…大森藤ノ先生&時雨沢恵先生インタビュー【前編】

2018年05月10日 19:53  アニメ!アニメ!

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「ダンまち×キノの旅」奇跡のコラボが生まれた舞台裏とは…大森藤ノ先生&時雨沢恵先生インタビュー【前編】
スマートフォン向けゲームアプリ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~』(以下、ダンメモ)では、『ダンまち』×『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series(以下、キノの旅)』によるスペシャルコラボイベントが開催中。『迷宮の国と異邦の旅人』というタイトルの下、オラリオの街にやってきたキノたちが、『ダンまち』でおなじみのキャラクターと濃密なやり取りを繰り広げている。


今回、原作者の大森藤ノさん&時雨沢恵一さんにインタビューを行い、Wシナリオ原案という異例のコラボの舞台裏をたっぷりと語っていただいた。

前編では今回のコラボが生まれた経緯を中心に、トークの模様をお届けしていく。インタビューのキーワードは、「斉藤壮馬」「エルメスに乗ったヘルメス」「成田良悟」、そして「ステーキ」だ。
[取材・構成=小松良介]

スマートフォン向けゲームアプリ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~』
http://danmemo.com/

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■「すべての始まりは斉藤壮馬さんとの会話から」(時雨沢)

――まずは今回のコラボレーションのきっかけを教えていただけますか。

時雨沢恵一(以下、時雨沢)
そもそもは私と、斉藤壮馬さんの会話がきっかけだったんですよ。昨年『キノの旅』がアニメ化した時、アフレコ現場で彼が言ったんです。「実は『ダンまち』でヘルメスもやっているんです」って。私も「そいつは面白い。(エルメスと合わせて)日本一のヘルメス声優ですね。コラボしたら一人二役ですな、わっはっはー」なんて冗談半分で返したものの、まさか実現するとは。完全に瓢箪から駒でした。

大森藤ノ(以下、大森)
自分はそのお話を時雨沢先生からお聞かせいただいて……。

時雨沢
仕事そっちのけの飲み会を作家仲間で時々しているんですけど、そこで大森さんにお話したんですよね。

大森
時雨沢先生が「いやー、エルメスに乗ったヘルメス見たいですわー」とおっしゃった時、斉藤さんとの経緯をまだ知らなかったので、「この方はこれを言いたかっただ!」と思いました(笑)。
でも率直に、出版社さんは違うけど実現できたらすごく面白いなあと思いまして。ちょうどグリーのプロデューサーさんから「『ダンメモ』で何かコラボ企画やってみませんか?」とお話をいただいていたので、自分のほうから「実はこんなお話が……」と。そしたらすごく前のめりで「面白い!」と言ってくださったので嬉しかったです。そこからは本当にトントン拍子で制作が進んでいきました。

時雨沢
斉藤さん、私、大森さんでポンポンポンとボールをパスしていたら、ゴールに入っちゃった感じでしたね。しかもヘスティアとフォトを演じているのが水瀬いのりさんというミラクルもあって。

――(笑)。スタジオでの冗談から本当にコラボが実現するなんて、まさに青天の霹靂ですね。

大森
なかなか過去に前例がないくらい、すごい企画だと思います。その後に時雨沢先生とお会いして、「なんか行けそうですよ?」とお話した記憶があって。

時雨沢
私も「まじか」みたいな感じでした(笑)。どうにも半信半疑だったんですよ。何より出版社が違いますから、そこでNGが出るんじゃない?と考えてました。だから大森さんにも「もし実現しそうになったら連絡ください」と答えた気がします。

■Wシナリオ原案が生まれた舞台は、池袋のステーキハウス

――そこからおふたりのWシナリオ原案という、全面監修のビッグプロジェクトが動き出しました。

大森
「これはOK出そう」とほぼ確信した時点で時雨沢先生をお誘いして、ふたりでプロットを考えたんですよ。

時雨沢
あれは池袋でしたね。

大森
時雨沢先生が「今日はおなか空いたんですよ」とおっしゃるので、自分は「どこにでも付いて行きます!」という感じで。それでステーキハウスに行って……。

時雨沢
あまり隣の席が近いと内容がダダ聴こえになっちゃいますから、落ち着いて話ができそうなお店が良かったんですよ。それでステーキハウスに入って、二人でステーキをもりもり食べて。

大森
(笑)。300グラムくらい食べましたよね、しかも炭水化物抜きで。

時雨沢
おなかいっぱいになりましたね。

大森
自分はミディアムレアをいただいて。

時雨沢
私はミディアムだったかなあ。あまりレアを頼まない人なので。ステーキ美味しかったです。

――時雨沢先生はミディアムだった……と。あれ、お店に入ってからステーキしか食べていませんが、打ち合わせもちゃんと行われたんですか?

時雨沢
もちろん2時間ぐらいかけて、プロットの完成稿をバーンと作りました。最終的な骨子、アイデアはほぼそのまんまです。それがいつ頃でしたっけ?

大森
昨年の秋ごろだったと思います。時雨沢先生のアイデアをお聞きしながら、自分はへらへらと笑いつつ必死でメモを取ってました。

時雨沢
どんなコラボにしようかと考えた時に、「やっぱりキノたちが『ダンまち』の世界に行くしかないよね」というのはすぐに決まったんですよ。ただ、どういう話になるのか、両作品のどのキャラクター同士が触れ合うのかなどを色々と詰める必要があって。
あと、私がその時に言っていたのは、キノとシズみたいな別々の一行がコラボの中で会っちゃうと、本編に影響しちゃうのでそれだけはダメだという。みんな同じ場所に行っても、並行してて会わないようにって。それさえ押さえておけば、あとは何をやっても良いんじゃないかなみたいな感じで、わりとノリノリで話してましたね。

大藤
そうですね。それぞれのタブーだけは絶対に侵さないように、根本的な部分を深く話し合いました。あとはもうテンポ感重視で。『ダンメモ』は 会話のテンポがすごく良いゲームなので、時雨沢先生にも実際にゲームを触っていただいて感覚を掴んでもらいながら進めていきました。

――作品の表に出ていない、裏の部分も含めてガッツリと組めたコラボだったわけですね。

時雨沢
なにせ我々は原作者なので、そのふたりが密談を交わせば、まだ明かされていない作品の裏の部分も含めてけっこうヤバい話が飛び交うわけです。大森さんからも『ダンまち』の色々な秘密を聞いたんですけど、もう忘れたことになっているので何も言えません(笑)。

大森
いえこちらこそ、色々と踏み込んだお話が聞けてすごく新鮮でした。

■「カラオケの一夜から時雨沢先生にはメロメロです」(大森)

――そもそものお話で恐縮ですが、おふたりの面識はいつ頃まで遡られるんですか?

時雨沢
たしか別の作家仲間が飲み会を企画された時にお会いしたのが最初だったかな?

大森
2015年頃だったと思います。でも、あの時どうして自分が誘われたのか、経緯がまったく分からなくて……。

時雨沢
誘ったのって、成田良悟さんですよね?

大森
そうです、成田先生。『デュラララ!』と『ダンまち』のイラストが同じヤスダスズヒトさんという縁で交流はあったのですが、あの日は「なんか面白い飲み会があるから行かない?」という塩梅で、現地に行くまで何の集まりなのか全く知らなかったんですよ。アレって本当は電撃文庫の作家さんの飲み会ですよね?

時雨沢
あー(笑)。たしかに電撃の編集さんや作家さんたちが中心でしたね。

大森
現地に行って気付いて「えっ、ええー!?」みたいな衝撃を受けて。成田先生って、ご本人も折原臨也みたいなところがありますよね……。あの時は右往左往して、ひたすら正面にいる成田先生にしか話しかけられなかったです。

――初めて時雨沢先生とお会いした印象はいかがでしたか?

大森
時雨沢先生、でっかいバックパックを持っていらっしゃいましたよね。成田先生に「時雨沢先生は何を持って来ているんですか?」と聞いた記憶があります。そしたら「時雨沢先生はいつ地球が滅んでもいいようにサバイバル道具を常に持ち歩いているんだよ」なんて、またウソかホントか分からないことを言われて。

時雨沢
いや、半分は本当です(笑)。あの時は鞄だったんですけど、寝袋とかが入ってたと思います。

大森
そうなんですか(笑)。その後、カラオケにも連れて行っていただいたんですけど、時雨沢先生って本当に歌が上手なんですよ。しかも、別の日に行った時は『ダンまち』のエンディング曲で分島花音さんの「RIGHT LIGHT RISE」を歌ってくれたんです! 女性シンガーなので音域が高いのに、めちゃめちゃ渋い声でしかも上手いという。

時雨沢
いやいや。ちゃんとキーは変えて歌いやすくしてますよ?

大森
ともあれ、自分は時雨沢先生にメロメロになりました(笑)。すっかりもう嬉しくなっちゃって、動画に録って家宝にすればよかったです。それがご縁になりまして、時雨沢先生にお誘いしていただけるようになったんだと思います。

時雨沢
大森さんとはその日からお会いする機会が増えましたね。私も電撃文庫以外の作家さんとは顔の広い成田さんとかがきっかけになることが多くて。あとはフットサルとかかな。私は最近行ってないんですけど、大森君も来てたよね? 作家のフットサルチームがあって、そこに興味があったら来てねみたいな。

大森
はい、夜とかに時々顔を出させてもらってます。いやー、いつもかわいがっていただいてありがとうございます(笑)。

――今回のコラボの原点に成田さんも関わっていらしたとは。

時雨沢
そういう意味ではたしかにそうですね。知り合って仲良くなっていないとコラボみたいなお話は振れませんから。その上で、斉藤壮馬さんのネタがあって話が進んだという。

大森
不思議と言いますか、やっぱり出会いって良いなあって思いました。

■「いきなりプロット見せたらグリーのみなさん笑顔が引きつっていた」(大森)

――実際にコラボシナリオをつくってみていかがでしたか?

時雨沢
キノたちって旅人として色々な国に行って、そこで何らかの出会いがあって、去って終わりというエピソードが基本なので、正直な話、その国に行ったという体(テイ)にしちゃえば、後は何でもいいんです。
今回も『ダンまち』の世界に行くというコラボだったから、ちょうど上手くハマったと思います。逆だったら相当大変なことになっていたでしょうね。キノの世界に来るという……。
でも、そのためにはやっぱり街ごと来てもらうしかないから、結果的に同じなんですよ。キノは呼ばれればどこへでも行けるので、そこはあまり悩まず、スパスパと決められたのかなと思います。

――そこで組み上げられたプロットを大森さんが持ち帰ってまとめて、グリーさんにお渡しされたわけですね。

時雨沢
見開きでノート2ページ分ぐらいありました?

大藤
それぐらいありましたね。その後、グリーさんと打ち合わせで「じゃあプロットどうしましょうか?」という流れになった時、目の前に原案をドンと置きまして。あの時のプロデューサーさんたちの引きつった笑顔をすごい覚えてます。ああもう、これはKADOKAWAさんに許諾を取りに行くしかないなと観念した感じで……。

――(笑)。さぞかしグリーのみなさんも驚かれたでしょうね。

大森
正直ちょっと『バクマン。』みたいに、「実はかなりできてます!」みたいなことをやりたいなと思っていて(笑)。

時雨沢
大森さんが原案提出をして進めてもらって。私はグリーさんのゲームシナリオライターさんから上がってきた第一稿から参加して、内容をチェックさせていただきました。その時点で要望通りのものができていたんですけど、セリフとかを膨らませてさらに濃くしたみたいな感じだと思います。

■「『キノの旅』で味わった感覚をいつかどこかで書いてみたい」(大森)

――今回のようにゲームやアニメ、漫画といった小説以外の作品に触れることで、ご自身の作品にフィードバックされる感覚はありますか?

時雨沢
そうですね。私の場合はどんなものでもインプットになると思います。

大森
自分も時雨沢先生に同じですね。「このネタ面白いな」と思ったらストックして温めてます。『キノの旅』だったら「花火の国」(文庫第VI巻収録 )みたいな描写はすごく面白いなと思っていて、いつか参考にしたいなと付箋を貼ってあります(笑)。

――時雨沢先生は最近、Twitterで『ゆるキャン△』について呟いていらっしゃいますね。

時雨沢
そうなんですよ。好きなものの影響はやっぱり受けます。ただ、すぐにやっちゃうとそのまんまの表現になっちゃってパクリに見えてしまうので、みなさんの『ゆるキャン△』熱が落ち着いた頃にやろうかなと。

大森
そのお話、たしか前に飲み会で時雨沢先生から言われた気がします。「ネタに困っているんですよね」と言ったら、すごい頷きながら「大森さん、みんなが忘れた頃にアイデアを借りればいいんだよ」みたいな(笑)。

時雨沢
何かを作る時に、何らかの影響は必ず受けるんですよ。むしろ影響を受けなきゃ作れない。熟成されることで自分ならではの表現が生まれますから。

大森
これは持論なんですけど、今のクリエイションって0から1を作り上げるパターンは多分ほとんどなくて、どちらかと言えば1を2にする作業じゃないかと思ってます。まだデビューして5年目の人間が生意気かもしれませんが。

――作家さん同士の飲み会だと、やっぱりそういった会話もあるんですね。

時雨沢
まあ創作論を戦わせるというよりは、色々な話をしますね。影響を受けた作品はこれとか、あれが面白かったとか。ちょっと前の映画『バーフバリ』なんて盛り上がりましたね。作家仲間がみんな「バーフバリ!バーフバリ!」って叫んでて。あの映画は大変勉強になりました。『(機動武闘伝)Gガンダム』みたいな無駄に熱い盛り上がりが最高でした。

大森
作家同士の交流は、アンテナを張っていないところの情報が入ってくるので良いですよね。

――お互いの作品のアドバイスを聞いたりとかそういう感覚じゃないんですね。

時雨沢
あんまりないですね。ただ、たとえば私は銃やバイクが好きなんですけど、「こいつにどんな銃を持たせたらいい?」みたいな相談はあります。それぞれ詳しい人に教えてちょうだいって。

大森
あとはふつうに飲み会らしいバカ話ですよね。

■「本当に自分たちで作ったコラボという実感がある」(時雨沢)

――今回の経緯をお聞きすると、実際にコラボとして一番理想的なカタチじゃないかと思いました。原作者さんの間で密なやり取りがされていて、そのうえで実装に向けて内容が作られていくという。

大森
自分は何より時雨沢先生とふたりですごく楽しみながら作れたことが一番嬉しかったです。『ダンまち』も『ダンメモ』も『キノの旅』も関係者のみなさんがすごく熱くて、面白いことをやろうと思っている方が多いなと感じていて。だからこそみんなが幸せというか、一緒にやれて良かったという気持ちでいっぱいでした。

時雨沢
本当に自分たちで作った感があるコラボではありましたね。今までも『キノの旅』や、4月から放送されている『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』などで色々なコラボをやらせていただいていますが、基本的に相手側から企画や大筋のプロットをいただいて、それを受け身でチェックをすることが多いんですよ。
今回は自分たちがアイデアを出しながら楽しいなアハハって作ったのが、採用していただいたというか。完全に順番が逆なんですよね。だからこそ「よっしゃやってやろう!」と、チェックも今まで以上に熱が入りました。

大森
本当にそう思います。逆に今回の企画ってけっこう原作者同士が好き勝手に動いてしまったんじゃないかな思うので、グリーさんをはじめ、関係各所のみなさんにはすごい申し訳ないなと思う部分もあって。

――斉藤壮馬さんが言った一言が、成田さんが取り持った縁でおふたりにつながって企画が生まれるという。本当に奇跡みたいなコラボになりました。

大森
そうですね。個人的なノリとしては「ステーキに出会いを求めるのは間違っているだろうか」ぐらいの気持ちがあります(笑)。

【インタビュー後編に続く】

ダンメモ×キノの旅コラボを記念してキノ役の #悠木碧 さんと、エルメス役&ヘルメス役の #斉藤壮馬 さんから特別メッセージをいただきました!以下のボタンからツイートしてメッセージをチェックしよう! https://t.co/71RiJy3GpQ— ダンまち~メモリア・フレーゼ~@500万DL突破! (@danmachimemoria) 2018年5月2日


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