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選択的夫婦別姓訴訟、第2次提訴「国会を後押ししたい」…憲法14条「信条差別」を主張

2018年05月10日 16:12  弁護士ドットコム

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婦別姓の婚姻届が受理されず、法律婚ができないのは違憲だとして、選択的夫婦別姓を求めるグループが5月10日、国に損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。東京地裁立川支部、広島地裁でも訴状が受理される見込みで、3か所同時の提訴となる。原告は東京都内のカップル3組と広島県内の女性1人の合計7人で、いずれも事実婚をしている。


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夫婦別姓をめぐっては、2015年12月に「夫婦同姓は合憲」とする最高裁判断が出されている。今回の弁護団代表も、前回の夫婦別姓訴訟で最高裁まで戦った榊原富士子弁護士が務め、この日の提訴を「第2次選択的夫婦別姓訴訟」と位置付けて新たな争点で挑む。


●新たな争点は「信条」による差別

訴状によると、夫婦同姓を義務付けた民法750条は、同姓を希望する者と別姓を希望する者を差別し、結婚の可否を生じさせていると訴えている。


原告は別姓で婚姻できないために、法律婚夫婦にのみ与えられている法的権利や利益、夫婦としての社会的承認を享受することができないと指摘。「すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定める憲法14条1項の「信条」による差別があると新たに主張する。


このほか、別姓を希望する者は、憲法24条1項の定める「婚姻の自由」を侵害されていることからも、法律婚から生じるさまざまな法的権利・利益等(相続権、税法上の特典等)を受けられないとした。


また、2015年最高裁判決の個別意見で、岡部喜代子裁判官(学者出身)が、同姓の規定について、「個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っており、憲法24条に違反するものといわざるえを得ない」と主張していたことを引用。国民の意識も変化していることを指摘し、選択肢なき夫婦同姓は、社会の変化とともに現在、合理性を欠いており、違憲であるとしている。


さらに、訴状では、選択的夫婦別姓を求めた「民法の一部を改正する法律案要綱」を法務省が1996年に公表してから20年以上が経っていることを指摘。国は正当な理由なく、民法750条の改正を怠っているとする。


●「国会を後押し、裁判を契機に前向きな議論を」

夫婦別姓をめぐっては、約40年にわたって活動が行われてきたが、いまだ実現していない。裁判を通じた動きとして、今年1月にソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久氏ら4人が戸籍法上の問題を指摘して、東京地裁に提訴するなど、夫婦別姓を求める声は根強い。


こうした動きに対し、この日、東京・霞が関の司法記者クラブで開かれた会見で、榊原弁護士は「前回の最高裁判断の後、非常にがっかりして遠のいたと思いましたが、なんとかしなければ、また、なんとかしてほしいという悔しさが世の中にたまっていたと思います。さらに世論調査でも夫婦別姓賛成が反対を上回るようになっています。急激に社会は変わってきていると思います」と語った。


また榊原弁護士は、法廷以外でも夫婦別姓を実現しようとしてきた国会議員や支援の人たちがいることに触れ、「さらに国会を後押しする必要があります。今回の一連の裁判を契機として、再び前向きな議論が広く行われ、新しい時代が拓かれていくことを強く願っています」とした。


今後、弁護団では、全国の裁判所でのさらなる提訴を予定している。


(弁護士ドットコムニュース)