2018年開幕戦クヌットストープのオープニングで表彰台を独占したPWRレーシングのセアト・クプラTCR TCR規定を採用して2シーズン目となるSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権の開幕戦が5月3~5日にクヌットストープで開催され、今季はフル参戦となるWorldRX世界ラリークロス王者のヨハン・クリストファーソンが大苦戦。オープニングはPWRレーシング・セアト・ディーラーチームのダニエル・ハグロフが、予選直前のBoP発動にもかかわらずワン・ツー・スリーの完勝を飾った。
このSTCCと同じ週末に開幕戦を迎えたTCRヨーロッパ・シリーズのポールリカール戦と同様に、TCRレギュレーションを運用するWSC Ltd.とFIAは最新のテクニカルレポートを発表。FK8型ホンダ・シビック・タイプR、ヒュンダイi30 N TCRを除く全車両に対し車高の10mmダウンと、セアト・クプラTCRに対しては10kgの車両重量削減などを発表した。
これでSTCCグリッド上での最多車種であるフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRの1325kgやアウディRS3 LMSの1335kgに対し、クプラTCRは1305kgと30kg近く軽量なマシンになるはずだったが、STCCオーガナイザーは週末2回のプラクティスセッションを終えた段階で独自BoPの発行を決め、5台のセアト全車に20kgのバラスト搭載を指示。予選前のわずか30分間で作業が行われた。
この決定に対し、PWRレーシングの代表兼ドライバーであるハグロフは「レースウイークの最中に車両重量を変更されれば、もちろんセットアップにも影響が及ぶ。まったく歓迎できる動きではないが、我々はプロフェッショナルとしてそれに対応する」と、懸念を口にしていた。
しかし、迎えた予選でポールポジションを獲得したのは、そのPWRレーシングの4台体制のうちで今季ルーキーとしてチームに再加入したフィリップ・モーリン(セアト・クプラTCR)となり、自身初のFFレースカーでありながら、TCR規定のコースレコードを記録するという見事なドライビングを披露。
フロントロウ2番手にハグロフが並び、セカンドロウ3番手には昨季の散発的参戦から代わってクリストファーソン・モータースポーツ(KMS)からフルエントリーを果たす、世界ラリークロス王者のヨハン・クリストファーソン(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)がつけることとなった。
昨季までの週末3ヒート制から、土曜レース1、日曜リバースグリッドのレース2へとフォーマットが改められたオープニングレースは、スタートからそのPWR勢が席巻。
チーム代表のハグロフがロケットスタートを決めてトップで1コーナーに飛び込むと、その後に続こうとしたKMSのクリストファーソンをポールシッターのモーリンが牽制。インサイドをキープしてWorldRX王者の鼻先を抑えると、その2台のアウトサイドからSTCC王者、ロバート・ダールグレン(セアト・クプラTCR)がまとめてオーバーテイクするチームプレーを見せ、一気に2番手に浮上。この時点でPWRレーシングが早々にワン・ツー・スリーのフォーメーションを築いた。
2周目以降、王者ダールグレンを引き連れたハグロフの先頭2台はペースアップしてマージンを広げていくと、3周目のターン2ではブリンク・モータースポーツのアウディRS3 LMSの2台、ミュッケ・オーソンとトビアス・ブリンクがそろってブレーキングを誤りワイドラン。グラベルに飛び込むアクシデントが発生。
オーソンのマシンは自力で脱出したものの、続く4周目には13番手走行中のアルビン・ワルネロ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)がクラッシュ。セーフティカー(SC)の出動となった。
9周目のリスタートでは、2番手を走る王者ダールグレンがハグロフのクプラTCRに仕掛ける動きをみせ、わずかにマシンをコンタクトさせるバトルを演じながらもポジションに変化はなし。
直後にはウェスト・コースト・レーシング(WCR)のアンドレアス・バックマンがターン6でクラッシュしたため、再度SCが導入されたが、再開後は19周の規定周回数よりも先にSC先導走行による走行距離上限に達したため18周終了時点でチェッカーを受けることに。
この結果、ハグロフが1.7秒差でチームメイトの王者ダールグレンを抑えてオープニングを制覇。3位にもポールスタートのPWRレーシング、モーリンのクプラTCRが入り、セアト艦隊が表彰台独占の開幕戦完全制圧を成し遂げた。
続く日曜午後のレース2は、前日6位フィニッシュでリバースポールから発進したレストラップ・レーシングのアンドレアス・ウェルナーソン(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)がライト・トゥ・フラッグの完璧なレースでチームにSTCC初優勝をプレゼントすると同時に、キャリア2勝目を達成。
2位にダールグレン、3位にKMSのクリストファーソンが入り、4位にWCRのフレデリック・エクブロム(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)を挟んで、ハグロフが5位までカムバックしてフィニッシュとなった。
「今週はチームにとって最高の週末になった。レース2でも9番手から5位になれたのは大成功だ」と振り返ったハグロフ。
「レース2では不運なパンクに見舞われたが、ルーキーのモーリンも選手権でトップドライバーとして戦える実力を証明した。それに、女性ドライバーのミカエラ(-アーリン・コチュリンスキー)もレース1でポイント獲得に迫る11位と健闘を見せた。PWRとしてとても満足しているよ」
一方、レース1では4位、レース2で3位と、なんとか表彰台の一角を確保したクリストファーソンは「ハグロフらのセアトには遊ばれている感覚しかなかった。それほど彼らのレースペースは速かった」と語り、スポット参戦すれば連戦連勝の昨季とは異なり、今季の苦戦を予想している。
次戦STCC第2ラウンドとなるのは、スウェーデン南部に位置するアンダーストープ、スカンジナビアン・レースウェイが舞台。かつてのF1開催トラックでの勝負は6月15~17日のスケジュールとなっている。