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新井浩文はなぜドラマ・映画に重宝される? 『モンテ・クリスト伯』神楽役の演技を考察

2018年05月10日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ディーン・フジオカが復讐鬼に扮するドラマ『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)。主人公・柴門暖(ディーン・フジオカ)が、自身を幸せの絶頂からどん底へと陥れた3人の男たちへ、モンテ・クリスト・真海として復讐を仕掛けていく姿が話題となっている。


 3人の男たちの1人、神楽清を演じているのが新井浩文だ。神楽は暖にとって高校時代からの良き先輩で、「カグ兄」と呼ばれ慕われていた。しかし、神楽は社内で暖が高い評価を受けていることに嫉妬し、自分の進む道に邪魔となる暖を失墜させる。5月3日放送の第3話では、成功を果たした神楽に、いよいよ真海の手が迫りくる模様が描かれた。


 松田龍平が主演を務めた映画『青い春』での新井の怪演に、当時インパクトを受けたというライターの石矢達夫氏は、本作での演技について次のように考察する。


「第1話の冒頭では、暖の良き先輩として優しい人という印象でしたが、15年後となる第2話の終盤で見せた顔は全くの別人でした。新井さんは、映画『葛城事件』での葛城保役のような自身の気持ちを表に出せない気の弱いキャラクターを演じることもあれば、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』の裕也役のような誰もが恐怖を覚えるキャラクターを体現することもできる稀有な俳優です。本作の第1話でも、時折垣間見せる冷たい表情で、心の奥底に隠していた暖への嫉妬を漂わせていたのは見事でした。決して記号的なキャラクターにはならない、リアルな人間の感情を表現することができる貴重な役者だと思います。今後、真海の復讐の牙が神楽に向けられていきますが、単純にやられるだけでは済まさない、神楽の反抗が今後あるような気がしてなりません」


 また、新井浩文のキャリアを熱い眼差しで追いかけてきた完熟ライターの麦倉正樹氏は、新井がこれだけ重宝される理由を次のように分析する。


「デビューしたての頃は、映画を中心に犯罪者やチンピラなど、主人公たちを攻撃する立場にいる“強い役”が多かった印象がありますが、近年は“弱い役”が増えた印象があります。山田孝之さんのライバル役として登場する『ジョージア』のCMのサラリーマン姿が象徴的ですが、スーツ姿がグッと似合うようになりました。そんな共感できる小市民感がある一方で、『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系)や、『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』などの“歪んだ業界人”も巧みに演じています。『犬猿』のような怖い新井さんも健在ですが、年齢を重ねて演技の幅が広がったのでは。また、映画俳優のイメージが強かった新井さんですが、2015年の『アイムホーム』(テレビ朝日系)から、隙間なくドラマへの出演を続けています。2016年の『拝啓、民泊様。』(MBS・TBS系)では、黒木メイサさんとW主演を果たし、リストラされたことを機に、嫁に内緒で民泊ビジネスを始める頼りない旦那を好演していました。短い時間でも確実に存在感を残せる俳優なだけに、作り手たちから重宝されているのではないでしょうか。『モンテ・クリスト伯』の神楽は、悪党でもあり、小市民でもある両方を備えた人物なだけに、今の新井さんだからこそできるキャラクターだったと思います」


 ディーン・フジオカ、大倉忠義、高橋克典ら男同士の闘いが繰り広げられる『モンテ・クリスト伯』の中で、新井はどんな一石を投じていくのだろうか。(大和田茉椰)