2018年05月09日 10:52 弁護士ドットコム
夫に秘密で行った「不倫証拠」の取得は何かの罪に問われたり、訴えられたりする可能性はあるのでしょうかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこうした相談が寄せられました。
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相談者は、夫が寝ている間にスマートフォンの指紋認証に夫の指をあて、ロックを解除した上でメールやLINEの内容を確認したそうです。さらに、LINEのトーク履歴を夫のスマホからメールで転送したといいます。
こうした行為は法律上、どのような問題が生じるでしょうか。離婚を申し入れる際に問題となるでしょうか。澤藤亮介弁護士に聞きました。
ーー法律上、どのような問題になるでしょうか
「まず大前提として、論理的には法律上問題となる行為(例えば民法上の不法行為に該当する)が実務上で実際に問題になるか否かは別問題であることを押さえることが重要です」
ーーどういうことでしょうか
「例えば、論理的には、夫のスマホの指紋認証を解除してメールやLINEを見る行為は、夫婦間とはいえプライバシー権侵害の不法行為に該当する可能性があり、さらにそのデータを転送する行為は、民法上の不法行為に加え刑事処罰の対象となる不正アクセスに該当する可能性が出てきます。
また、民事、家事事件の裁判では刑事事件の裁判ほど厳格ではないものの、証拠収集の方法の違法性があまりに強い場合は証拠から排除される可能性もあります。
しかし、実際の離婚事件の調停や裁判においては、これらの証拠が提出されることはよくあることであり、違法な証拠として排除されることや相手方からプライバシー権侵害等を理由に反訴されることはほとんどないというのが実情と言えます」
ーーほとんどないのはなぜですか
「その理由としては、相手方(その代理人弁護士も含め)がこれらの点についてさほど問題視していないこと、仮に主張をしても訴訟上の利点が見受けられないこと、反訴することの費用対効果が望めないことなどが考えられます。
先ほどのとおり、論理的には問題視しうる行為になりますので、相手方の出方次第では離婚の調停や訴訟で問題とされる可能性もあると考えておくといいでしょう」
ーー他に気をつけるべき点はありますか
「少し話はそれますが、入手したメール等のデータを裁判上で証拠として提出するのではなく、誰もが閲覧可能なインターネット上に載せてしまうようなことまでしてしまうと、プライバシー権侵害の程度が著しくなり、相手方から慰謝料請求を受ける可能性は高くなると言えるでしょう。
不倫は一般的には隠れて行われるため、その被害者(本件では妻)がその証拠収集のために法律上やや問題がある行為に及ぶことはある程度やむを得ない部分もあり、実際の裁判でもある程度大目に見ているところはあるかと思われます。
しかし、相手方から問題提起される可能性があることや収集したデータの用い方次第では大きな問題に発展する可能性があることは予め知っておくと損はないでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。離婚、男女問題、労働問題などを中心に取り扱う。自身がiPhoneなどのデバイスが好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。
事務所名:新宿キーウェスト法律事務所
事務所URL:http://www.keywest-law.com