F1シーズンを転戦していると、いろいろな人との出会いがある。そんな人たちに、「あなたは何しに?」を尋ねる連載企画。今回は南アフリカ出身の売れっ子ジャーナリスト、ディーター・レンケンだ。
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アゼルバイジャンGPの木曜日の記者会見で、ある記者からの質問を受けたダニエル・リカルドがこんなことをつぶやいた。
「また、ディーター・レンケンか……」
ディーター・レンケンとは、南アフリカ出身のジャーナリストで、南アフリカはもちろんイギリス、オーストラリア、ドイツ、ロシアなどのモータースポーツ誌やウェブサイトに寄稿している売れっ子だ。
南アフリカでトヨタの市販車の工場でエンジニアをしていた経歴を持つレンケンがこの世界に入ったのは1997年のイギリスGP。この異色の経歴によって、レンケンはF1をスポーツという側面からだけでなく、経済的な側面からも取材している数少ない記者へと成長させた。
レンケンの名を世に知らしめたのは、2013年。当時、門外不出と言われていたFOMの分配金に関する情報を手に入れ、イギリス・オートスポーツ誌にスクープしたのだった。
2年後には、F1に復帰したばかりのホンダの当時の総責任者だった新井康久への単独インタビューで「ホンダはルノーより20馬力上回っている」という発言を引き出し、大きな話題を集めた。
そのレンケンに、今年のアゼルバイジャンGPで目をつけられたのが、リカルドだった。理由はリカルドとレッドブルとの契約が今シーズン限りで切れるからだ。木曜日の会見ですでにリカルドに質問を浴びせていたレンケンだが、納得の行く回答が得られなかったのか、2問目の質問を行なった。
「ダニエル、次の契約であなたが最も大切にしていることは何ですか? というのも、F1は2020年からレギュレーションが変わるからです」
するとリカルドは苦笑いしながら、冒頭のコメントを発した後、「でも、これこそがディーター・レンケン。ただ残念ながら、契約に関する質問はこれ以上どう答えていいかわからないよ(笑)」と困り果てていた。
しかし、レンケンの真実を追い続けようとする取材力には、F1ドライバーだけでなく、チーム関係者も一目置いていて、アゼルバイジャンGPの会見後もリカルドと握手していた。
そんなレンケンも、今年のアゼルバイジャンGPが見事300戦目の記念グランプリとなった。301戦目にレンケンに目をつけられるのは、果たしてだれになるのだろうか。