2018年05月08日 09:12 弁護士ドットコム
東京都内に住む会社員の女性、恵里さん(35)の朝は忙しい。電動アシスト付自転車で自宅から15分くらいのところにある保育園に3歳の長男を送り、また自転車で最寄駅まで向かう。自宅から徒歩数分の保育園を希望したが、人気園で入れなかったため、自転車で少し離れた場所の保育園に通う日々だ。
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その日も、いつものように保育園へ長男を送り、最寄駅に向かう途中、交差点の車道で赤信号のために停まっていたところを、後ろから来た原付バイクに衝突されてしまった。恵里さんは転倒、頭や腕、足などに全治2週間のケガを負った。
恵里さんが追突された事故現場は毎日利用している道とはいえ、会社が認めている自宅から最寄駅までの道とは異なる。「仕事のために保育園に子どもを預けているのだから、労災保険の対象になるのでは?」と恵里さんは話す。本当に労災保険はおりるのだろうか。 前島憲司弁護士に聞いた。
認められていない通勤経路でのケガは通常、労災に認定されるのだろうか。
「労働者災害補償保険法では、通勤の途中であっても、住居から勤務先までの『合理的な経路及び方法』の範囲内であれば労災保険の補償の対象となるとされております」
では、毎日使用している保育園送迎の経路でのケガは、通勤経路でなくても労災保険の対象になる?
「厚生労働省の通達上、共働きの夫婦など他に子供を監護する者がいないような場合は保育園への送迎の途中であっても『合理的な経路』にあたるとされています。
したがって、自宅から最寄駅からの通勤経路から逸脱していたとしても、保育園の送迎の経路で事故にあったとのであれば、労災保険の補償の対象になります。
そして、『会社が認めている通勤経路及び方法』と労災保険の対象となる『合理的な経路及び方法』は必ずしも一致しません。
会社によっては、会社が認めていないから労災保険の対象にならないという扱いをするところもありますが、会社が認めている経路とは異なるものであっても労災保険の対象となることもありますので、会社から労災保険の申請はできないといわれてもあきらめる必要はありません」
保育園送迎で事故が起きてしまう前にとるべき対策は?
「認定について議論になったり担当者の勘違いを誘発する恐れもあります。懸念材料をあらかじめ消しておくという意味で、あらかじめ通勤途中に保育園への送迎をする場合があることや、道順を届けておくことが対策になると思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
前島 憲司(まえじま・けんじ)弁護士
神奈川県弁護士会所属・横浜家庭裁判所・家事調停委員。弁護士になる前に裁判所書記官として10年以上勤務した経験がある。商工会議所の役員やロータリークラブに所属するなどして地域経済に貢献する活動も行っている。鉄道模型や鉄道に乗る「乗り鉄」など鉄道趣味のほか、日本史や神社の歴史をたどるのも好き。
事務所名:弁護士法人前島綜合法律事務所
事務所URL:http://www.law-maeken.jp