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TOKIOの“建て直し力”に期待したい 一連の報道を受けて感じたこと

2018年05月08日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 TOKIOが東日本大震災以降続けてきた、福島県の農産品PRキャラクター。5月7日に内堀雅雄知事が、引き続きTOKIOを起用する意向を発表した。同県によると、400通を超える起用継続を願う声が届いたという。5月6日、山口達也はジャニーズ事務所との契約を解除。TOKIOは城島茂、国分太一、松岡昌宏、長瀬智也の4人で続けていくことになる。


(関連:TOKIO 山口達也の契約解除に国分太一がコメント「彼が普通の社会に戻る姿を僕は望んでいます」


 平穏が壊れたとき、人は悲しみに打ちひしがれ、呆然と立ち尽くしてしまう。どうしてこうなったのか、何が悪かったのか、なんとかならなかったのか……。起きてしまったことは決してなかったことにはならない。誰かが誰かを傷つけた罪は消えないし、どんなに誠意を尽くしても壊れてしまったものは元通りにはならない。それでも当事者はもちろん、その周囲の人は悲しみを背負って生きていかなければならないのだ。


 もちろん人は、すぐに気持ちの整理をつけられない。きっと、TOKIOについても“もう以前と同じようには見られない“という人もいるだろう。どんなに安全な農作物だとわかっても、以前と同じように食べられない人がいたように。それでも生活は続く。絶望から一歩踏み出すために必要なのは、問題を切り離して考える冷静さだ。長年TOKIOが積み上げてきた功績と、今回の悲しい出来事を分けて考えていくことから新しい歩みが始まる。


 TOKIOがこれまで続けてきた活動は、私たちが近代化と共に置いてきてしまったものに、改めてスポットライトを当てるようなところがあった。その土地々々に受け継がれてきた生きる知恵。隣人と協力して営む生業。そこには古き良き日本人の絆を感じさせるものだった。そして震災後、原発事故の風評被害に苦しんだ福島のために無償でPRキャラクターを買って出た。その事実も、CMを手掛けた福島県出身のクリエイターから明かされるという粋な計らいに“やっぱりTOKIOだ“と、うれしくなったのを覚えている。私たちはいつしかTOKIOに、日本人の良心を投影していたのかもしれない。だからこそ、今回の問題は日本中に大きな衝撃を与えたのだ。


 4人全員で矢面に立つ姿は、TOKIOの誠実さを象徴していた。同時に、強さがなければ、このグループにはいられないのだということも改めて感じた。国分は生放送番組『ビビット』(TBS系)で言葉を選びながら質問に答え続け、松岡は誰よりも厳しく山口の不祥事を糾弾し、長瀬は真っ先に被害者の立場を想像して心を痛めた。そして、リーダーの城島は山口の辞意を正面から受け止めた。失われた笑顔をいかに取り戻していくか、TOKIOに課せられたものは大きい。


 いろんな考えの人がいるこの世の中で、全員の意見が一致することはない。そんな正解がないなかで、関わりあうすべての人が前に進むためにはどうすればよいのか。今こそ彼らが持つ、失われた大地を耕し、建て直す力に期待したい。そして、私たちが愛した“TOKIOの男気”を信じたい。(佐藤結衣)