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『ブラックペアン』二宮和也&小泉孝太郎、対立の行方 “患者を救う”テーマが鍵?

2018年05月07日 09:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 誰でもできるといわれた“スナイプ手術”だったが、第1話でも第2話でも予期せぬトラブルに見舞われ患者は死の淵に追いやられる。それを“オペ室の悪魔”との異名通りの華麗な手さばきを持つ渡海征司郎(二宮和也)が救う。そうして先進技術である“スナイプ手術”と医者としての熟練の技術がぶつかり合ってきたTBS系列日曜劇場『ブラックペアン』。


 ところが5月6日に放送された第3話では、はやくもその流れが覆される。難易度の高いスナイプ手術を高階権太(小泉孝太郎)に代わり渡海が執刀することになるのだ。ドラマのベースとなるような流れが変化することによって浮き彫りになるのは、医療ドラマはもちろんのこと医療行為の本質ともいえる“患者を救う”というシンプルで最も強い信念だろう。


 医師としての価値を左右させる「インパクトファクター」を獲得するためにスナイプ手術の症例を増やす必要に迫られた高階。そんな中、東城大病院に心臓を患う2人の患者が入院してくる。そのうちの1人が厚労省の次期事務次官候補の息子・田村隼人(高地優吾)。早急に彼のスナイプ手術を行うことが決められるが、検査によって肥大型心筋症であると判明し、佐伯清剛(内野聖陽)は渡海に執刀を命じる。ところがそんな渡海は手術室に入るなり、心臓のわずかな動きから隼人の心尖部の筋肉が弱く、スナイプを挿入する角度を少しでも誤れば大出血につながりかねないことを見抜くのである。


 スナイプチームとして結束しなくてはいけないにもかかわらず、いつも通りの一匹狼を貫く渡海に、高階は理事長選を控える西崎啓介(市川猿之助)からのプレッシャーを感じながらも、患者を救う1人の医者として奔走する。世良雅志(竹内涼真)とともに3Dプリンターで心臓を再現し、ミリ単位で挿入角度の研究を行うのだが、ようやく見つけた結果を渡海に告げても相手にされない。渡海は独自にスナイプ手術を成功させる方法を発見していたというのだ。


 「論文は医者のすべて」と宣言したように“研究”に徹する高階と、「手術職人」と形容されてもニヤリと微笑むだけの“実践”の渡海。これまでは“理想”と“現実”の対立だった2人が、同じ手術を同じ方法で行うことによって、より具体的していく。しかし、対立しながらも渡海の類い稀なる才能に驚嘆する高階の姿。そしてミリ単位でも失敗すれば死に至るほどの難易度の高いスナイプ手術を一時的に託したり、同時進行で行う別の患者の手術の仕上げにスナイプ手術を選択してそれを高階に委ねる渡海。徐々にこの2人の隔たりが“患者を救う”という共通のテーマで解消されていく予感がしはじめてきた。


 それにしても、手術に到達するまでのパートをごく最小限に絞り、手術シーンだけでこのエピソードの放送枠の半分近くを占める展開には驚かされる。ある意味では医療ドラマとは違う“手術ドラマ”という新しいジャンルを開拓するのではと思わせるほどだ。しかも、描かれる手術はこれまでのドラマでは見たことのないほど映像としての派手さが皆無の、指先のわずかな動きが生死を左右させるスナイプ手術。今後も回を増すごとに、手術シーンの緊張感は高まる一方だろう。(久保田和馬)