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2017-18イヤーカー、ボルボXC60の受賞理由に偽りなし/市販車試乗レポート

2018年05月07日 06:11  AUTOSPORT web

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2017-18イヤーカーに選ばれたボルボXC60。その受賞理由に偽りはなかった。
日本カー・オブ・ザ・イヤーの2017-2018イヤーカーに選ばれたボルボXC60。選考委員60人中9人が10点をつけ、294点を獲得し受賞した。ボルボ車の日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞は今回が初となる。並み居る国際車を退けたXC60とは、果たしてどのようなクルマなのだろうか。

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 XC60は、2008年にデビューした高級ミッドサイズSUVだ。日本で発売されたのは2009年で、当時は国内で初となる自動ブレーキ採用車として大きな注目を集めていた。今回受賞したXC60は、2017年10月にフルモデルチェンジした2代目となる。

 カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した理由は、扱いやすい手頃なボディサイズに、現代のSUVに求められる快適性、機能性、運転の楽しさなどが高次元でバランスされている点だ。そして、北欧デザインを感じさせる美しい内外装とクオリティの高さに加え、ボルボが力を入れている安全装備の充実も戴冠を強力に後押しした。

 XC60にはガソリンターボ、ディーゼルターボ、プラグインハイブリットと用途や輸出国のエネルギー事情に合わせ、豊富なパワートレーンが用意されている。今回はガソリンターボエンジンを搭載するXC60 T5 AWD Inscripiton(インスクリプション)を試乗した。

 まず目を引くのが車両の大きさだ。XC60はミッドサイズのSUVで、上位モデルにボルボXC90が存在するが、車体はけっして小さくなくダイナミックなイメージを与えるクルマであることに変わりはない。また、SUVと聞くと車高が高く、乗り降りがしにくいイメージだが、XC60は設計が巧みであるためスムーズに車内へ乗り込むことができた。

 受賞理由のひとつとなった内装に関しても、クオリティの高さがうかがえた。まず目についたのが物理的なボタンの少なさ。センターコンソールには、音楽再生用のボタンが3つと、デフロスタとリヤウィンドウデフォッガー、非常点滅灯スイッチの計6つしか存在しない。空調の管理や安全装備の設定などはすべて中央のタッチスクリーン式9インチディスプレイで操作する形だ。このディスプレイが実に優秀で、スマートフォン感覚で直感的に操作することができた。

 運転席のメーターパネルは12.3インチの液晶ディスプレイとなっている。ディスプレイは、4モードからグラフィックを選択することが可能だ。また、運転席側のフロントガラス下にはヘッドアップディスプレイが備わっており、速度や標識などが映る仕組みとなってるため、メーターを見なくても現在のスピードを知ることができた。目線を動かす回数が減ることは、さまざまなことを意識して運転しなければならないドライバーにとってはありがたいだろう。

■超豪華なオーディオシステム
 特に印象に残ったのはオーディオシステムだ。XC60の車内には、高級スピーカーブランドBowers&Wilkins(バウワース・アンド・ウィルキンス)製のスピーカーが15箇所に設置され、車内で音楽を流すとまるでコンサートホールにいるかのようなサウンドを楽しむことができた。ちなみに、このオーディオシステムはT5の場合はオプションで価格は42万円(税込)とかなり高価だが、専用設計された高級スピーカーが15個ついていると考えると安いと言えるだろう。

 エンジンは水冷直列4気筒DOHC16バルブの2リッターターボで、最大出力は254馬力を発揮する。アクセルを踏んで発進すると、ターボ車でしばしば感じる一瞬急加速するような感覚はほぼなく、スッとスタートを切ってくれる。また加速時も電子制御式8速ATのトランスミッションがいい仕事をしてくれるのだ。高速走行時にはアクセルを強く踏み込むと、気持ちよくエンジンが回ると同時に、メリハリの利いた変速制御で力強い加速を感じることができた。ただ少し気になった部分がアイドリングストップだ。エンジン停止後、発進するときの振動が日本車に比べて少し大きく、人によっては若干違和感を感じるかもしれない。

 そして、電子制御式のエアサスペンションも走りの楽しさ演出してくれる。このサスペンションは、ドライブモードや車速によって車高を一定に保ち、その時々の路面状況に応じた最適な調整を行うものだ。ドライブモードは5つ選択可能で、それぞれのモードでの違いを分かりやすく体感することができた。

 エアサスペンションのおかげもあって、おうとつが多い道路でも不快感なく走ることができ、スポーツ走行寄りのモードにすると少し速い速度でコーナーを曲がってもしっかりと足元をささえ、安定して曲がることができたのだ。もはやひと昔前のサスペンションの概念が通用しない領域にまで、このSUVの足回りは到達しているのだと感じた瞬間だった。

 様々なシーンに合わせて走りの質を変化させてくれる電子制御式エアサスペンションはXC60の最高グレード、T8インスクリプションには標準装備されている。ちなみにT5でこの走りを体感するには30万円(税込)のオプションパーツが必要となる。

 既報のとおり、走りの性能だけでなく、安全装備も充実していることもボルボ車の特徴でもある。ボルボは「2020年までに新しいボルボ車での交通事故による死亡者や重傷者をゼロにする」という「VISION 2020」を掲げており、安全装備に相当な力を入れているのだ。XC60でもそのコンセプトは変わりなく、全車速追従機能付アダプティブ・クルーズ・コントロール、ステアリングサポート、衝突回避・軽減フルオートブレーキシステム、360度ビューカメラといった安全機能が16種類以上も備わっている。これらは、XC60すべてのラインアップにオプションではなく標準で装備。安全装備に関しては多くのメーカーがオプションとして展開するが、それがすべて標準で装備されていることにボルボの安全性への本気度を改めて知らしめられた思いがした。T5 AWDインスクリプションの車両価格は679万円(税込)だが、搭乗者の命を守る装備が16種類以上も備わっていることを考えるとお得に感じる。

 今回、初めてボルボ車に試乗したが、受賞の理由に挙げられている点にまったくの偽りはないと感じた。走りの面ではエアサスペンションの効果がかなり表れていて、今回は持ち込めなかったが、峠道のようなコーナーが多いワインディングロードでも軽快に走ってくれそうだ。また車体も本格的SUVに近い見た目だが、そういった車両よりは少し小さいため、日本特有の細い道でも問題なく走ることができるだろう。XC60は、街乗り、買い物、長距離ドライブといったすべての走行シーンをカバーしてくる1台として使えるだろう。

【XC60 T5 AWD Inscription 主要諸元】
■車名・型式
ボルボ DBA-UB420XC<ボルボ DBA-UB420XCA>
■寸法・重量
全長(mm):4,690
全幅(mm):1,900
全高(mm):1,660
ホイールベース(mm):2,865
トレッド[前/後](mm):1,655
最低地上高(mm):215
車両重量(kg):1,830 ※1 <1,860> ※1
車両総重量(kg):2,105 ※1 <2,135> ※1
定員(名):5
■エンジン
種類:水冷直列4気筒DOHC16バルブ(インタークーラー付ターボチャージャー)[ガソリン]
型式:B420
内径×行程(mm):82.0×93.2
総排気量(cc):1,968
圧縮比:10.8
燃料供給装置:電子燃料噴射式
最高出力[kW(ps)/rpm]:187(254)/5,500 [ECE] 235(320)
最大トルク[Nm(kgm)/rpm]:350(35.7)/1,500ー4,800 [ECE]
使用燃料/燃料タンク容量(リットル):無鉛プレミアム/60
■トランスミッション
方式:電子制御前進8速A/T(ロックアップ機構付)ギアトロニック
変速比:
1速 5.250
2速 3.029
3速 1.950
4速 1.457
5速 1.221
6速 1.000
7速 0.809
8速 0.673
後退 4.015
最終減速比 前輪:3.329(前) 変向機(0.387)
最終減速比 後輪:2.583(後)
■駆動
方式:電子制御AWDシステム
■ステアリング
ハンドル位置:右
方式:パワーアシスト付ラック&ピニオンスプリット・ステアリングコラム
ロック・ツー・ロック(回転):3
■サスペンション
前輪:ダブルウィッシュボーン式
後輪:マルチリンク式
■ブレーキ
主ブレーキ:
パワーアシスト付4輪ディスクブレーキ
ABS付ダイヤゴナル
タンデム・マスターシリンダー式
スライディング・キャリパー方式
■ホイール
スチールラジアルタイヤ:235/55R19
リム(材質):7.5J×19(アルミ合金)
■最小回転半径(m)
5.7
■燃料消費率JC08モード(国土交通省審査値)※2 [km/リットル]
12.6
■平成27年度燃費基準
+10%達成 ※4
■主要燃費向上対策
筒内直接噴射
可変バルブタイミング機構
電動パワーステアリング
ブレーキエネルギー回生システム
エンジン・Start/Stop機能

※1チルトアップ機構付電動パノラマ・ガラス・サンルーフ装着車は、車両重量および車両総重量が20kg増加。
※2 燃料消費率は、定められた試験条件での値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)に応じて燃料消費率は異なる。
※3 ハイブリッド燃料消費率、充電電力使用時走行距離、電力消費率は定められた試験条件の値(国土交通省審査値)。実際の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)に応じて数値は大きく異なる。特に1日当たりの走行距離、バッテリーの充電状態、エアコン使用による影響を大きく受ける。
※4 T5 AWD Momentum、T5 AWD Inscriptionの場合、チルトアップ機構付電動パノラマ・ガラス・サンルーフ装着車とエアサスペンションの両方を装着した場合、平成27年度燃費基準+20%となります。
※本諸元のモード走行における表示は「JC08モード」。
※諸元データはメーカー発表の資料に基づくもので、国土交通省への申請値。なお、記載の諸元は予告なく変更される場合がある。
※< >はエアサスペンション装着時の数値。