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WEC開幕戦:トヨタ、圧倒的速さでポールトゥウイン。アロンソ「何としても結果を残したかった」

2018年05月06日 15:01  AUTOSPORT web

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ポール・トゥ・ウインを飾った8号車トヨタのセバスチャン・ブエミ(左)、中嶋一貴(中央)、フェルナンド・アロンソ(右)
WEC世界耐久選手権第1戦スパ・フランコルシャン6時間レースは5月5日(土)13時30分から決勝レースが行われ、シリーズ最高峰のLMP1クラスに参戦するTOYOTA GAZOO Racingは、8号車トヨタTS050ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ組)がポール・トゥ・ウインを達成。予選時の事務的なミスにより1周遅れでのスタートとなった7号車トヨタ(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)が総合2位に入り、トヨタが2018/19年シーズン開幕戦でワン・ツー・フィニッシュを飾った。
 
 山間部の急な天候変化、通称“スパウェザー”が度々サーキットを襲うスパ・フランコルシャンだが、今週末にかけては晴天に恵まれ、5日の決勝も清々しい青空の下で6時間レースのスタートが切られた。
 
 ポールポジションからスタートする8号車トヨタはブエミが第1スティントを担当し、1周目から総合2、3番手スタートとなったLMP1プライベータのレベリオン・レーシング勢とのギャップを広げていく。
 
 後方ではグリッドに着いた33台のマシン全車が1周目を走り終えてから、コンウェイの駆る7号車トヨタがピットレーンからレースをスタート。コンウェイはいち早くリードラップへ復帰するべく、ファステストラップを叩き出しながら上位を猛追。スタートから45分後に訪れた1回目のピットストップ時には総合6番手まで順位を回復してみせる。
 
 一方、首位を走る8号車トヨタはスタートから1時間後に導入されたセーフティカー(SC)ランによって、レース序盤に後続に築いた30秒あまりのギャップを失ってしまった。
 
 このSCラン中に8号車トヨタは2回目のピット作業を行い、ブエミからアロンソにドライバー交代。アロンソにはSCラン明けのポジションキープという使命が与えられる。しかし、そこは百戦錬磨の現役F1ワールドチャンピオン。わずかなテスト期間と練習走行のなかでしか経験していないバックマーカーの処理も無難にこなしながら、このミッションを成し遂げ約1時間30分後にピットイン。チームメイトの一貴にバトンをつないだ。

 その一貴は、ピットアウト後にシートベルトの調整が必要であることを無線でチームに伝えたのちに緊急ピットイン。首位でコースに復帰するが、約5分後には1コーナーで単独スピンを喫するなど、後続とのギャップを減らしてしまう。
 
 この間、コンウェイからマシンを引き継いだ7号車トヨタの可夢偉は3スティント連続走行に入り一気にポジションを回復。スタートからまもなく3時間を迎えるタイミングで総合2、3番手を走る2台のレベリオン勢に追いつくと、またたく間にこれをオーバーテイクし3時間経過時点でトヨタがワン・ツー体制を形成した。
 
 その後、約1分の間隔を保ちながら走行続ける首位8号車トヨタと2番手の7号車トヨタだったが、レース残り1時間となったタイミングで導入された3回目のSCランによってギャップはわずか6秒に。
 
 それぞれアンカーも任された8号車トヨタのアロンソと7号車トヨタのコンウェイは、時にテール・トゥ・ノーズとなるほどまで接近するが、無用なバトルはせず。レース残り25分で最後の給油行った後も2台は僅差での走行を続けながらファイナルラップを迎え、最後は0.144秒差で8号車トヨタがトップチェッカー。7号車トヨタが総合2位でフィニッシュした。
 
 この勝利により8号車トヨタの一貴とブエミはWECスパ2連覇を達成するとともに2017年のWEC富士ラウンドから続く連勝を4に伸ばしている。また、新加入のアロンソにとっては国際F3000シリーズ以来、18年ぶりにスパ・フランコルシャンでのレースを制することとなった。

「チームとして最高の“優勝”という結果を残すことができて嬉しい限りだ!」と喜びを語ったアロンソ。

「冬の間の走行テストとともに、トヨタの東富士研究所とTMGでは全力で開発を続けてくれていた。その努力に報いるためにも何としてもレースで結果を残したいと思っていたんだ」

「僕にとって初めてとなるWECのレースで優勝でき、例えようもないほどうれしいよ! ともに戦ったセバスチャン(・ブエミ)と(中嶋)一貴には本当に感謝している」

 これに対してブエミは「自分と一貴にとってフェルナンドと初めて一緒に戦うとても大切なレースだったと」とコメント。

「6時間の間に何度かセーフティカーが入り、その度にリードが失われてドキドキしていた。特に最終盤は見ていられないほどだったよ。結果的に優勝できたが、ル・マンに対しては序章でしかなく、これで気を抜くことなく集中していくつもりだ」

■可夢偉「もちろん勝ちたかったので2位という結果は残念」


 レース中盤のスティントを担当した一貴は「最初のスティントでは、さまざまなアクシデントが起こり、セーフティカーが入ったことでリードを失い、なかなか厳しい状況でした」と自らの置かれた状況を説明。

「前半はミスをしてしまう場面もありましたが、慌てずに、そこから自分のリズムを取り戻すことができました。3スティント目はタイヤの摩耗もあって辛い状況でしたが、何とか自分がすべき仕事はできたかと思います」

「今後も今回のようなレースが続くと思いますので、しっかりと準備に取り組みたいと思います。何はともあれ、素晴らしいシーズンのスタートとなりました」

 一方、予選後のペナルティにより厳しい出だしとなるなかで、見事に2位表彰台を獲得した7号車トヨタの可夢偉はレース後、次のように語った。

「上位争いに復帰するのには本当に苦労しました。予選後の裁定の後、ここまで戻るまでにチームの全員が本当に頑張ったと思います。今日の僕らクルマはとても速かったですし、それはル・マン24時間レースへ向けては良い仕上がりにつながると思います」

「もちろん勝ちたかったので2位という結果は残念ですが、チームにとっては良いスタートになりました。明日からル・マンへ向けた準備が始まります」

 また、チームメイトのロペスも「最後尾からのスタートはとても厳しかったが、(皆が全力で戦った結果)最後には勝利を争えるところまで復帰できた。7号車のポテンシャルは示せたと思う」とコメント。スタートとアンカーを担当したコンウェイは「可夢偉とホセ(-マリア・ロペス)は今日も素晴らしい働きをしてくれた。勝てなかったのは残念だけど、ワン・ツー・フィニッシュはチームにとって完璧な結果だ」と語っている。

 TOYOTA GAZOO Racingの村田久武チーム代表は、チームにとって最高とも言える結果に「とても満足しています。昨日の予選でのミスを挽回するためにチーム全員が頑張りました。皆の必死の努力を本当に誇りに思います」と総括。

「新しいシーズンスタートに際し、素晴らしい結果になりましたが、最大の目標であるル・マン優勝に対しては、ほんの小さな成果でしかありません。ライバル勢も同じかもしれませんが、我々にも改善、改良すべき部分が多く見つかりました。ル・マンでの厳しい戦いに向けて明日からまた全力を尽くします」と悲願達成に向け、さらなる前進を続ける姿勢を示した。