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技能実習後「最長5年」就労可能に…弁護士「労働力の確保だけで先走るべきではない」

2018年05月06日 09:42  弁護士ドットコム

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来年度から、外国人労働者向けに新しい「在留資格」ができると報じられている。日本経済新聞によると、技能実習を終了した外国人に対して、国は、さらに最長5年間就労できる資格をあたえるという。


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そのあとも、試験に合格すれば、家族を呼び寄せたり、もっと長く国内で働いたりできる資格に移行できるようだ。現行の技能実習制度は、最長5年間の実習期間が過ぎれば、実習生は帰国することになる。就労資格で残すことで、深刻になりつつある人手不足に対応するかたちだ。


技能実習より待遇がよくなるため、移行を希望する外国人が多いのではないかという期待もあるが、一方で、現在の技能制度をめぐって、実習生たちに過酷な労働環境をしいているという指摘もある。技能実習制度を批判してきた指宿昭一弁護士は「新制度でも人権侵害がなくなると思えない」と話す。指宿弁護士に聞いた。


●「短期間の労働者や留学生の受け入れも、移住者としてとらえるべきだ」

――今回、報道されている新制度をどうとらえたか?


技能実習制度の存続を前提とした外国人労働者受け入れ制度には賛成できません。技能実習制度は、職場移動の自由がなく、受け入れの過程での中間搾取や人権侵害の危険が排除できていないという構造的な問題があり、そもそも廃止すべきです。新制度によって、技能実習生に対する人権侵害がなくなるとは思えません。


――外国人労働者を受け入るならどうすればいいか?


まずは、労働者の人権を守り、多文化共生施策の下で地域社会に受け入れ、社会保障や教育も含めた対応をしっかりと考えるべきです。スイスの作家マックス・フリッシュが「われわれは労働力を呼んだが、来たのは人間だった」と言っていますが、都合よく使える労働力だけに着目して、生活する労働者という「人間」に注目しないような考え方は誤りです。


外国人労働者の受け入れは、かならず、移住労働者政策・移民政策を必要とします。短期間の労働者や留学生の受け入れも、移住者・移民としてとらえて、受け入れ政策を持つことが必要です。そのために、きちんと国民的な議論をするべきです。


労働力の確保だけで先走って、受け入れに伴う覚悟や負担の点を考えないようなことは許されません。報道によると、臨時国会で法改正をして、来年4月から施行するというスケジュールですが、そうではなく、公聴会などを各地で開催して、外国人労働者やその支援者も含めた多様な意見を聞くべきです。


●「韓国の雇用許可制度を参考とすべき」

――外国人労働者を受け入れるにはどんな方法があるのか?


いろいろな方法がありえます。参考になるのは、韓国の雇用許可制度です。2国間協定の下で、送り出し国政府と受け入れ国政府が、責任をもって受け入れをするので、ブローカーによる中間搾取や、人権侵害が排除できます。職場の移動の自由も一定程度認められています。


――今回の案が、技能実習制度を前提としないものだったらどうか?


今後の検討の1つの案とはなりうると思います。一度、5年程度で限定的に受け入れて、一定の要件の下で、別の在留資格に切り替える可能性を認めるのも良いことです。


ただし、そもそも5年間も家族を同行できないというのはおかしいと思います。ほかの在留資格の外国人との差別にもなります。ほかの在留資格の場合は、一定の要件の下で、家族の同行が認められて、家族は資格外活動許可を取れば、一定の範囲で仕事をすることもできます。同じことを認めるべきでしょう。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
指宿 昭一(いぶすき・しょういち)弁護士
労働組合活動に長く関わり、労働事件(労働者側)と入管事件を専門的に取り扱っている。日本労働弁護団常任幹事。外国人研修生の労働者性を認めた三和サービス事件、精神疾患のある労働者への使用者の配慮義務を認めた日本ニューレット・パッカード事件、歩合給の計算において残業代等を控除することは労基法37条違反かどうかが争われている国際自動車事件などを担当。
事務所名:暁法律事務所
事務所URL:http://www.ak-law.org/