スーパーGT開幕戦の岡山でホンダNSX陣営がエンジンパフォーマンスを大きく向上させ、決勝ではワンツーフィニッシュを飾ったが、ライバル陣営も黙ってホンダを野放しにするわけはなく、この第2戦富士ではレクサス陣営がエンジン面を見直し、出力を上げて対抗してきた。
2017年のレース中のファステストタイムは1分30秒480で、今回はMOTUL AUTECH GT-R、ロニー・クインタレッリの1分30秒460とファステストタイムの差は小さい。だが、500kmレースの決勝走行時間を比較すると、2017年の2時間52分28秒に対し、今回は2時間52分02秒と”26秒”タイムがアップしている。
ピット作業時間や燃費改善による給油時間なども影響しているが、単純に110周のレースで考えると、1周あたり0.2秒、GT500はアベレージ速度が上がっている計算になる。もちろん、今回は予選日の午前練習走行が雨と濃霧で走行中止となっており、練習走行がドライで予定どおり行われていれば、昨年よりもタイムアップ差は多くなったと推測される。
車体、エンジンとパフォーマンスが上がり、その出力を支えるのが足下のタイヤになるわけだが、今回の富士では残念ながらGT500のヨコハマタイヤ装着車3台に、それぞれタイヤトラブルが起きてしまった。
24号車のフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rは3度、19号車のWedsSport ADVAN LC500は2度、MOTUL MUGEN NSX-GTは1度、レース中にタイヤトラブルに見舞われてしまい緊急ピットイン。幸い、大きな事故にはならなかったが以上の3チームは実質、このトラブルでレースでの勝負権を失うことになってしまった。
開幕戦の岡山は1周の距離が短く、高速コーナーが少ないためタイヤへの負荷は大きくはない。しかし、今回の富士は直線速度が速く、1コーナーそしてダンロップコーナーではハードブレーキングによる縦方向の負荷、そしてコカ・コーラコーナー、100Rの高速コーナーでは横方向の大きな負荷がタイヤに掛かる。
24号車フォーラムエンジニアリング GT-Rは3度とも左フロント、そして19号車WedsSport LC500、16号車MOTUL NSX-GTは左リヤタイヤにトラブルが起きてしまったように、富士では左側のタイヤの負担が大きい。
GT500のヨコハマユーザーすべてにトラブルが起きてしまったこともあり、レース後、ヨコハマタイヤのエンジニアたちは夜中まで長いミーティングに入り、取材することはできなかった。
ただ、トラブルが起きてしまったからと言って安全性の高いタイヤ開発ばかりにしてしまっては、当然、ライバルタイヤメーカーに勝つことはできない。パフォーマンスを求めつつ、耐久性、安全性を高めていくという、非常に難しいハードルがGT500のタイヤメーカーに求められているのだ。
今回、不調に終わったホンダNSX陣営も、レース前半は一時5番手まで順位を上げていたが、後半に失速。夕刻になって気温が下がったことにより、タイヤのマッチングが上手くいかなくなったブリヂストンユーザーが多かった。
もともとホンダは富士でのテスト機会が少なく、走行データがレクサス、ニッサン陣営より少ない。その上で、今回のように予選日の練習走行時間が大きく減ってしまうと、決勝に向けての合わせ込みがデータ不足でライバル2メーカーより厳しくなる。
また、ミシュラン陣営でもCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rがスタートで同じミシュランのMOTUL AUTECH GT-Rと異なるタイヤを選択したことが裏目に出てしまい、序盤で大きく順位を下げて戦線離脱することになってしまった。
ヨコハマユーザーだけでなく、ブリヂストンユーザー、そしてミシュランユーザーも、タイヤ選択、そしてタイヤとクルマのセットアップのマッチングが上手くいかなければ、決勝では決定的な差となって大きなギャップを築かれてしまう。
スーパーGT第2戦富士は、GT500クラスの厳しいタイヤ戦争の一面が露呈されることになった。