スーパーGT第2戦富士500kmの予選日は、濃霧による午前中の練習走行中止によって、予選のスケジュールが急きょ変更。予選約1時間前に30分間の練習走行時間が設けられた。天候の悪化と走行時間の短さによって、ドライバー/チームとしては持ち込みのセットアップから大きな変更ができず、ほぼありのままのセットアップで予選に臨むことになった。
さらに、ドライバーふたりがそれぞれQ1、Q2を担当するノックアウト方式から、20分勝負の計時方式へと予選方式が変わり、実質、ドライバーはひとりでマーキングされた2セットのタイヤを使用してのアタック合戦となった。
ここで若干、やっかいなのが、予選に使用できる2セットのタイヤを30分の練習走行前にマーキングしなければならなかったこと。つまり、練習走行を経てのタイヤ選択ができず、ドライバー/チーム側としてはまったく走らない状況で予選用のタイヤを決めなければならず、実質、予選用の2セットのタイヤは同じ種類を選ばざるを得なくなった。
また、予選アタックがひとりでOKになったため、事前の30分の練習走行ではその予選に合わせた微調整にメニューが費やされ、予選を担当しないドライバーはこの予選日、ほとんどのチームでまったく走行機会がないまま終えることになってしまった。もはや、悪天候、濃霧を恨むしかない状況のなかでの予選だった。
それでも、ポールポジションのZENT CERUMO LC500から最後尾までの差は約1秒。そのなかに15台がひしめく形となったことからも、パフォーマンス差としては全車、見た目の順位以上の大きな差はなかったものと推測される。
ただ、そのなかでも気になったのが、ホンダNSX陣営の低迷だ。特にブリヂストン(BS)ユーザーのNSXは、開幕戦の強さから、この富士でも上位に食い込んで来るものと予想されたが、実際はNSX+BSの組み合わせのトップはRAYBRIG NSX-GTの11番手(セッション後、カルソニック IMPUL GT-Rのベストタイム抹消で10番手に繰り上がり)。RAYBRIGの伊与木仁エンジニアが話す。
「もうちょっと行けたかな。タラレバですが、セクター3で少し(山本尚貴が)失敗したそうですので、あとコンマ2秒くらいは行けたと思っています。タイヤ選択も正直、想定していた気温が低くて、路面が良くないので、岡山と同じような状況になってしまいました」
伊与木エンジニアの言葉どおりなら、タイヤのウォームアップ性に若干、問題があったようで、そのタイヤ選択+アタックが決まっていれば5~6番手前後の順位は望めたようだが、いずれにしても今回はポールポジションを狙える速さはなかったようだ。
また、ニッサン陣営では3番手にMOTUL AUTECH GT-Rが入り、ZENTより6kgウエイトハンデが重いことを考慮すれば、同等の速さがあったと言っても過言ではない。この予選日に1周も走ることがなかったMOTUL GT-Rの松田次生が、予選日を振り返り、明日の決勝のポイントを話す。
「今日は1周も走っていなくて、いきなり明日、ぶっつけ本番なので大丈夫かなと(苦笑)。予選はすごく僅差でしたし、みんな、似たようなところにいますよね。明日のレースも500kmの長丁場ですけど、ワンミスもできないような接戦のレースになりそうですね」
「あとはタイヤのデグラデーションがブリヂストンとミシュランでどっちがいいか。予選でのピークのパフォーマンスは同じくらいだったと思うので、あとはレースでどこまで持つかですよね。その点、事前の富士テストでウチはエンジンが壊れてしまったこともあって、ロングランができていないので心配はあります」
「決勝は2回ピット作業があるのでうまく燃費とかを考えて、ウチのチームはそこでタイムを稼げるでしょうし、アウトラップもミシュランは悪くないと思います。本当に怖いのはロングランのペース、そこだけですね」
次生が話すように、この富士500kmのポイントはロングランのペースと、ピット作業などのチーム力に絞られる。近年はニスモやトムス、インパルにセルモなどのトップチームに優勝が限られているのも、第2戦というウエイトハンデの差が比較的小さいなかでの、500kmレースならではのポイントだ。
「レースはもう、天候と気温が分からないので、分からないね(苦笑)」と、多くのエンジニアが話すように、予選のタイム差を見る限り、当日のコンディションに合ったチームが突然躍進するという、まったく読めない展開になりそうな気配だ。
そのなかで抜け出すチームは果たしてどこか。少なくともトップ5にエンジン出力を見直したというレクサス+BSの組み合わせが4台入っており、この4台の感触がホンダ、ニッサン陣営よりも悪くないのは明らかだ。