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ママレード・ボーイ、となりの怪物くん……今春の“キラキラ映画”主題歌はエピローグの役割に

2018年05月04日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 映画を観終わったあとの余韻を高めてくれる重要な役割を果たす主題歌。映画館の大音量で聴く音楽は、ふだんiPodなどで聴く音楽とは一味も二味もちがう別格な印象を与えてくれる上、その楽曲の世界観が映画の世界とシンクロしていればいるほど、気持ちは高まる。とりわけ少女漫画を原作にしたいわゆる“キラキラ映画”の主題歌は、それを歌うアーティストであったり曲調、また歌詞などが映画作品と密接な関係にある場合が少なくない。


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 このゴールデンウィークには2本の“キラキラ映画”が公開されている。90年代に一斉を風靡した伝説的コミックを映画化した『ママレード・ボーイ』と、アニメ化も好評を博した青春群像劇の『となりの怪物くん』。どちらも主題歌を務めるアーティストはティーン世代のみならず全世代から人気の高いアーティストであるという点、そしてキャッチーなフレーズで映画の世界観を踏襲した楽曲であるという点で共通している。


 まず昨年メジャーデビュー10周年を迎え、彼らの結成の秘話を描いた映画『キセキ -あの日のソビト-』が公開されるなど、ふたたびブームの兆しがただようGReeeeNが主題歌『恋』を歌う『ママレード・ボーイ』。彼らの醍醐味である、ストレートな歌詞でつづられるラブソングは、同作のような少女漫画にはまさにぴったりなのだが、意外なことに彼らの楽曲がそのまま少女漫画原作映画に使われるのはこれが初めて。


 過去には代表曲の「愛歌」や「キセキ」が妹分であるwhiteeeenのカバーによって『ストロボ・エッジ』と『青空エール』に起用されているのだが、満を持して本家が書き下ろしで提供するこの「恋」はそれらを凌ぐ、まさに10年前の全盛期のころのGReeeeNを思い起こさせる神曲といっても過言ではない。<いくつになってもキミのこと>と始まるサビの歌詞は、様々な偶然が重なって出会い、惹かれ合うようになった主人公カップルの心情を物語っているかのようで、それがエンドロール中の映像と見事にシンクロしていく。


 一方で今年デビュー10周年を迎える西野カナもまた、率直な歌詞で主人公の心情を歌い上げる「アイラブユー」を『となりの怪物くん』に提供している。しかも同作の劇中には、主題歌となるこの楽曲以外にも「best friend」「Call me baby」「LOVE&JOY」「このままで」「Wishing」と西野の人気曲が5曲も挿入歌として使われるのだ。


 一つひとつの歌がそれぞれ、しっかりとした物語を持っている西野の楽曲が、映画の物語と並走していき、最終的に「アイラブユー」ですべてまとめ上げられていく。<やっぱり私はキミでよかった>のフレーズしかり、曲の締めくくりとなる<キミに出会えてよかった>のフレーズが、この『となりの怪物くん』と完全に重なる。


 また、すでに今年の春に公開された同ジャンルの作品も同様で、『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』はダブル主演の一角、小瀧望が所属するジャニーズWESTの歌う「プリンシパルの君へ」で彩られた。さらにKing & Princeの平野紫耀と平祐奈の『honey』は作品のターゲットとなる層からの人気が高いSonar Pocketが「108~永遠~」を、広瀬すずが主演を務める人気シリーズの完結編『ちはやふる-結び-』では前作に続いてPerfumeが「無限未来」を提供。


 いずれの楽曲もストレートでシンプルな歌詞が絶妙に映画の世界とリンクしていくだけでなく、気をてらわないメロディと歌声で映画の余韻を損なわずに、きちんと耳に残る楽曲として仕上げられている。そしてすっと映画の世界から現実へと心地よく解放させてくれるのだ。ある意味で主題歌は、映画の“エピローグ”としての役割を果たしているということだろう。


■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。