2018年05月04日 09:41 弁護士ドットコム
日々の生活から切っても切り離せない「税金」。身近なようで、中身のことになるとよくわからないという人は多いはず。特に会社勤めの人は、源泉徴収により、税金に向き合わない「思考停止」状態になっていたとしても不思議ではありません。
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税理士の中には、顧客の法人(個人)と向き合いつつ、税金そのものをより身近なものにしようと様々な活動をしている人がいます。自らが酒場のマスターとなる「確定申告酒場」を開いたり、経費について考えるプロレスを催したりと、精力的に活動している高橋創税理士に話を聞きました。
ーーどのようにしたら税金や税理士というものが身近になると思いますか
「そうですね。お茶の間の皆さんがわかるような『スター税理士』を作りたいと思っています。『美人すぎる税理士』とか。税理士って内向きで、目立ち方を知らないし、何をやってるかよくわからないと思われているんです。世の中では税理士と税務署の違いがわからない人もいるでしょう。
私は目立つ活動をして、若い人に道筋を作ってあげたいんです。私自身、5月からYoutuberになります。いろんなところに税理士の席を作りたいと思っています。ワイドショーの席も、税理士が座ってもいいようなところに経済評論家が座ってる。メディアの人に聞くと、誰に聞いていいかわからないから、手近な知ってる人に声をかけるだけなんだそうです」
ーーご自身にとって税金や税理士というものはもともと身近だったのでしょうか
「父親が税理士なので、自分にとって税理士は身近でした。ただ、僕の記憶だと日刊SPA!の『合コン四季報』に税理士が出てこないんですよ。税理士というだけでモテるようになりたいと思っています」
ーー確定申告酒場ではどのような手応えがありますか
「確定申告酒場は年2回、新宿ゴールデン街のバー『無銘喫茶』で確定申告の時期にやっているのですが、みなさんの疑問点がわかってとても勉強になります。
例えば医療費控除も、医療費が安くなるというような認識をしている方がいました。正確には払った税金が戻ってくるということ。つまり、ざっくり言えば払っていない人は関係ないということなんです。こういう説明をして、がっかりされることもありますね。
確定申告酒場にわざわざ足を運んでくれるようなお客さんだからかもしれませんが、最終的にみんな税金には興味あるな、面白がってくれるなとは感じます。税金は、みんな払うのは嫌いだけど、知ることは好きなんじゃないかと」
ーー確定申告酒場は仕事獲得につながっていますか
「2010年から始めて、もう8年になるんですが、正直に言って苦労してやるほど、そんなに仕事にはつながりません。ただ繰り返しやっていると、面白い人だと勝手に思ってもらえるかなぁと思っています。いくつかのメディアには取材にも来てもらいましたし」
ーー最近おかしいと思う税制はありますか
「ありますね。まずは仮想通貨の課税関係。雑所得だと国税庁は言ってますけど、僕は納得できない。譲渡所得だと思っています。まず、所得税では『資産の譲渡による所得は譲渡所得』と定められています。そしてこの仮想通貨というものは様々な方面から考えると『資産』というものに該当するのではないか考えられるからです。
そして、ふるさと納税の寄附金控除です。税法上、反対給付がないことが寄附の概念のはずなんですが、返礼品競争になっていますよね。本当におかしくて嫌いな制度だけど、お金は大事だから、制度がある以上、自分もやります。寄附金の上限は年収に応じて変わるので、お金がいっぱい使える人が得する制度であることもおかしな点です」
ーー会社勤めの人たちが税金にもっと関心を示すにはどうしたらいいでしょうか
「みんなが確定申告をするようになるしかないでしょうね。でも、税務署の負担が大きくなるから現実的ではない。全員が電子申告をするようになったとして、ようやく実現可能性が出てくるかなぁという感じです」
【プロフィール】
高橋 創 (たかはし・はじめ)税理士
資格予備校講師(所得税法)、会計事務所勤務を経て、2007年に独立。
事務所名 : 高橋創税理士事務所
事務所URL: http://namahage-tax.jp/
(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama
(弁護士ドットコムニュース)