私たちの期待通り、ホンダがレッドブルへ2019年からパワーユニットを供給することになった場合、来シーズンの開幕までにクリアしなければならない課題があることも忘れてはならない。
復帰以降これまで、ホンダは2チームへPUを供給したことがないからだ。自然吸気時代にはウイリアムズ&ロータス、マクラーレン&ロータス、BAR&ジョーダン、ホンダ&スーパーアグリなど複数チームへの供給を行ってきた経験はホンダにもある。
しかし、現在のPUは自然吸気時代とは比べ物にならないほど複雑になっており、PUを始動させるだけでも多くのPUマニュファラクチャースタッフが関わらなければならない状況だ。つまり、現場でのスタッフの数を大幅に増員しなければならない。しかも、現場スタッフというのは失敗が許されないため、ある程度の経験が必要となる。
幸い今シーズンから現場で仕事するエンジニアが入れ替わっているため、エンジニアに関しては即戦力となる人物がHRD MK(イギリス・ミルトンキーンズにあるオペレーション拠点)やHRD Sakura(栃木県さくら市にあるホンダのF1研究所)にいる。
HRD Sakuraでの開発は1チームから2チームへ増えたからといって、単純に2倍のスタッフが必要になることはないが、HRD MKで行うオペレーションなどはトロロッソとレッドブルでそれぞれ独立させなければならず、人員の補強は必要だ。
確かに、ホンダは昨年のいまごろ、マクラーレンに加えて、ザウバーにも供給しようとしていたため、拡充する準備は進めていたが、その後状況が次々と変更となり、2チーム供給に向けて増強はストップしていたからだ。
山本雅史ホンダF1モータースポーツ部長も「もし来年レッドブルと組むことになれば、再び体制を強化しなければなりません」と語っている。
物理的な問題だけではない。クオリティの問題もある。レッドブルがホンダと提携する際の技術的なレベルは最低でもルノー以上の性能が必要だ。現在、ホンダとルノーの性能差はほぼないと言われているが、それで安心していてはいけない。
そのことは山本雅史モータースポーツ部長も認識している。
「レッドブルとの契約はホンダだけでなく、契約した相手も良くなる、ウィン・ウィンの関係が築けないと提携する意味はない。やるべきことはまだまだたくさんある」
本当のトップチームであるレッドブルとの交渉によって、ホンダの組織力と技術力はワンランク、レベルアップしようとしている。