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世界中であらゆる記録を更新中『インフィニティ・ウォー』も、日本では動員ランキング初登場2位

2018年05月03日 14:31  リアルサウンド

リアルサウンド

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 4月最終週に中国などの一部の国を除いた世界各国で公開されて、数々のオープニング記録を塗り替えた『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』も、日本では『名探偵コナン ゼロの執行人』に阻まれて週末の動員ランキングでは初登場2位にとどまった。アメリカではオープニング3日間で2億5820万ドル(約284億円)の興収をあげて、事前には超えられないと予想されていた2015年12月の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の記録を更新。その時も日本だけは『妖怪ウォッチ』の新作が動員1位で、それがニュースとして世界中に発信されて衝撃を与えたわけだが、その歴史が繰り返されたわけだ。


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 4月28日、29日の『名探偵コナン ゼロの執行人』の動員は45万3000人、興収は6億1000万円。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の動員43万7000人、興収は6億7200万円。IMAXのスクリーンの比率の高さを背景にさすがに興収では上回ったものの、『名探偵コナン ゼロの執行人』は公開3週目である。このところ日本におけるアメコミ・ヒーロー映画の成績が初週に偏っていることをふまえても、今後も『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が1位になることはないだろう。


 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の公開初日4月27日から4月30日までの4日間の累計は動員83万6000人、興収12億6000万円。この数字をもってして「大ヒット」と謳うことはもちろん間違いではないのだが、気になるのは2015年7月に公開された(『アベンジャーズ』としての)前作『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』と比べても90%程度の成績であることだ。マーベル・シネマティック・ユニバース作品としては、直前の2月に公開(日本公開は3月1日)された『ブラックパンサー』が世界中で歴史的大ヒットを記録したばかり。アメリカで同作は『タイタニック』を抜いて歴代興収記録3位(上は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』と『アバター』のみ)の作品となったわけだが、その余韻の国内外の濃淡が、今回の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』ではそのまま数字となって表れたわけだ。


 世界中で社会現象を巻き起こしている大ヒット映画が、日本ではそこまで大きな社会現象にならない。自国特有のアニメ映画文化が幅広い年齢層にまで根づいているという意味では、そのこと自体が非難されるいわれはないだろう。ちなみに韓国での『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のオープニング3日間の成績は、日本円で換算すると約43億円。人口比を勘案すると日本と比べて10倍規模の空前の大ヒットを記録しているわけだが、同作が国内のスクリーンの85%を占拠していて、週末の国内興行の95%を稼ぎ出してしまったことが問題視されて、今後は一つの作品を上映できるのは40%以下のスクリーンになるように法律で規制される見込みだという。(参考:Infinity War’s Box Office Dominance May Lead to Changes in Korean Law)


 このように『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』クラスの超大作になると、上映されるそれぞれの国の興行を取り巻く特徴や課題を浮き上がらせていく。とりあえず日本の観客は、配給サイドの「大ヒット」(繰り返すが、それは間違いではない)という言葉に踊らされるだけでなく、そこに国内外における異常なまでの温度差があることだけは知っておいたほうがいいだろう。(宇野維正)