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中村アン、30年間彼氏がいないヒロインを好演! 遅い時間にゆるく楽しめる『ラブリラン』の魅力

2018年05月03日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 バラエティタレント、モデル、女優とマルチに活躍してきた中村アン主演作『ラブリラン』(読売テレビ・日本テレビ系)が第4話を終えた。2015年10月期から10クール連続でドラマに出演、着実にステップアップしてきて、現在女優業がメインになりつつある中村。本作でとうとう初の主演を射止め、3ヶ月間の記憶を失った30年間彼氏がいないヒロイン・南さやかを好演している。


参考:中村アン、嫌味のない策士っぷりを発揮! 『きみが心に棲みついた』仕事ドラマとしての一面を読む


 さやかは前髪をピンで固定し、いまどき田舎の村役場にもいないようなくすんだファッションで通勤する地味系女子。しかも彼氏いない歴=年齢といういわゆる高齢処女だ。しかし、記憶をなくした間に驚異的な女子力アップを遂げて同僚の年下男と同棲、処女喪失の果てに別れていた!? そんなアラサー女子の成長を描いた天沢アキの原作コミックを、キャラクターを変更しながら映像向きにストーリーにより緩急をつけ、軽やかなラブコメディに仕立てている。


 さやかは15年も幼なじみの亮介(大谷亮平)に片想いをしていたのに、気がつくと3ヶ月が過ぎていて、同僚の町田(古川雄輝)と付き合い、同棲し、しかも別れていた。メンタルは以前のままのさやかは失った3ヶ月をRERUNしようとするが、自分の変化と進化について行けずに失敗をくり返す。しかし、そのたびに町田のサポートでピンチを乗り越え、徐々に彼に信頼を寄せていく。


 古川雄輝演じる町田のキャラがズルい。いつもポーカーフェイスで洞察力が鋭く、正論ばかりをぶつけてくるが言葉の端々に優しさがにじむ。これまでイノセントな雰囲気を活かし、ダメ男や正気じゃないカリスマ少年など幅広い役柄を演じてきた古川。実際は帰国子女で理系、ダンスもできるというハイスペック男子としても知られ、公開中の映画『曇天に笑う』のスペシャルPVではサカナクションの主題歌『陽炎』に合わせ、ブレイクダンスを披露している。クロスフィットなどハードなトレーニングをこなす美ボディの中村が第3話で見事な腹筋をチラ見せしたように、古川の特技が披露されるシーンもつい期待してしまう。


 ヒロインがタイプの異なる2人のイケメンに言い寄られ、三角関係になるというラブコメの王道パターンから外れ、さやかは亮介にフラれ、町田のマンションに居候させてもらっているが、町田とは付き合っていない。相変わらず彼氏がいない状況だが、恋なんてもうどうでもいいんじゃないかと思うほどさやかはまわりの人間に恵まれ、愛されている。たったひとり心を許せる相手を見つけることも結構難しいのに、さやかには亮介、町田、友美、隼人という4人もの理解者がいるからだ。


 「いつでもさやかの味方だから」と言ってくれた永遠のお兄ちゃんの亮介。言葉はきついが誰よりさやかをよく見てくれ、背中を押し続けてくれる年下男・町田。さやかの愚痴や悩みを受け止めてくれる元ルームメイトの友美(佐津川愛美)。そして、出会いは最悪だったのにいつの間にか親友になった美容師の隼人(市川知宏)。


 なかでも隼人は他の3人と少し立場が違う。ゲイであることを友人の町田にもカミングアウトしておらず、しかもずっと町田が好き。さやかと事情は違うが隼人も片想いを拗らせていて、始めは町田の元カノのさやかを貶めようとしていたのに、いまやさやかを放っておけないようでもある。『セックス・アンド・ザ・シティ』のキャリーにスタンフォードがいたように、さやかには隼人がいる(しかもデート前には髪をセットしてくれるという特典付き!)。恋と仕事に奮闘する都会のアラサー女のさやかにとって、ゲイの親友は楽しくも頼もしい存在に違いない。


 少しずつさやかの記憶は戻ってきているが、なぜ記憶を失ったのか現時点では明らかにされていない。また、町田はさやかの記憶が戻ったら部屋を出て行ってもらうと言っているが、それはなかなか手の内を見せない町田の本心なのかわからない。かつて町田が付き合っていたモデルの杏子(大政絢)がさらなる波乱を巻き起こしていくだろうが、今後コミックとどこまで併走していくのかも見えず、中盤に差し掛かっているがまだ謎な部分が多い。と言うとまるでミステリーのようだが、記憶障害のヒロインなのに絶望的な深刻さは全くなく、ハッピーな空気で満ちている。1日を終えてリラックスする時間帯にちょうどよいゆるさが何とも心地よい。(古閑万希子)