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吉沢亮と一つ屋根の下で暮らすドキドキ感! 『ママレード・ボーイ』“非現実”という設定の魅力

2018年05月02日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 吉住渉の人気少女コミック『ママレード・ボーイ』が、桜井日奈子&吉沢亮のW主演でついに実写化された。『りぼん』(集英社)に原作が連載されていたのは、実に25年前。両親同士がパートナーを交換し、2つの家族が一緒に暮らすというブッ飛んだ設定ながら、“普通の女子高生”光希と、“カッコよすぎる”遊の試練だらけの恋愛模様に、多くの女子たちがときめいた。何を隠そう筆者も『ママレード・ボーイ』ど真ん中世代。記憶の奥深くに大切にしまってある名作が実写化されるとなれば、劇場に足を運ばずにはいられなかった。


参考:『ママレード・ボーイ』場面写真


 ある日突然、両親から離婚を告げられた女子高生・小石川光希(桜井日奈子)。父・仁(筒井道隆)と母・留美(檀れい)が、旅先で出会った松浦夫妻と意気投合し、留美がその夫・要士(谷原章介)、仁がその妻・千弥子(中山美穂)と恋に落ちたため、パートナーを交換して再婚すると言うのだ。両親どちらかと離れて暮らすことを嘆く光希に、留美は「6人で一緒に住もうと思っているの」と、あっけらかんと提案。光希は納得できないまま、松浦夫妻とその息子・遊(吉沢亮)と一緒に暮らすことになる。


 『ママレード・ボーイ』の魅力といえば、やはり非現実ともいえるその設定。クールで甘いマスクのモテモテ同級生男子と一つ屋根の下で暮らすというドキドキ感はハンパじゃない。はじめは不満ばかりの光希だったが、同マンガを代表する名場面“保健室でのキス”をきっかけに遊を意識しはじめ、徐々に思いを通わせていく。


 映画全編を通して感じたのは、音と光の秀逸さ。小鳥のさえずり、カラスの鳴き声、車の通過音、そして、眩しい日差しや家の中に差し込む西日が、非日常ともいえる少女マンガの世界を日常に近づけてくれる。それは保健室でのシーンも例外ではない。静まりかえった保健室内とは対照的に、外からうっすらと聞こえてくるザワザワとした学生たちの声、カーテン越しの柔らかな光……誰もが経験したであろう“学校の保健室で眠る”というあの感覚が蘇ってくる。そして、そこにふと訪れた遊からの突然のキス。これには胸キュンせずにいられない。


 突として出会い、「好きにならない」と宣言していたにもかかわらず恋に落ちる。前半では、そんなキラキラとした少女マンガ的展開が描かれる『ママレード・ボーイ』だが、ある時突然、遊は楽しかった思い出を断ち切るように、光希のもとから離れていく。そして、その先にある2人の決断が描かれるまでの後半は、前半とは打って変わってシリアスだ。


 もちろん原作に沿ったストーリー展開なのだが、物語が進むに連れて「あれ? 『ママレード・ボーイ』ってこんなに重い話だったっけ?」という感覚に陥ってしまう。実際、原作者の吉住氏も「マイナビニュース」のインタビューで「映画はすごく真面目なラブストーリーになっていましたね」(https://news.mynavi.jp/article/20180426-622791/2)と語っており、両親のパートナー交換という突拍子もない設定から始まった物語とは到底思えない、重みのある恋愛映画に仕上がっている。


 少女マンガが実写化されると、その再現度ばかりが注目されがちだが、光希を演じた桜井が「ホン(台本)読みのときに、原作がマンガだからという勝手な思い込みでデフォルメしたお芝居をしたら廣木隆一監督に『気持ちが全然伝わってこない』と言われて。それからは監督に求められる、普段の生活の一部のようなナチュラルな芝居にかなり苦戦しました」(https://natalie.mu/eiga/pp/marmaladeboy)と語っているように、そもそも廣木監督は原作をそのままスクリーンに映し出すことを意図していない。


 遊と光希が思い出作りのために出かけた北九州旅行のシーンは、2人だけの世界観を出すためにiPhoneで撮影。スマホのカメラで互いを撮影し合うというのは、90年代に描かれた原作ではあり得ない世界だが、映画『ママレード・ボーイ』には、新たな名シーンとして刻まれている。そんな風に原作と現代が融合するおもしろさが、今作の見どころのひとつ。“両親S”に隠れて付き合うというスリリングな日常や、印象的なセリフの数々など、原作を知っているからこそ楽しめる場面も多いが、なによりフレッシュな気持ちで映画を観ることが、作品を楽しむポイントと言えるだろう。


 実家の本棚からコミックを引っ張り出し、全巻読み直してから映画を鑑賞した筆者だが、美しい顔面をフル活用した吉沢と、初々しくキュートな桜井が紡いだ現代版『ママレード・ボーイ』鑑賞後には、また原作を読みたくなるという無限ループに突入。少女マンガの金字塔『ママレード・ボーイ』、やはり名作中の名作である。


(nakamura omame)