小林可夢偉、ホセ-マリア・ロペス、マイク・コンウェイが乗り込む7号車トヨタTS050ハイブリッド TOYOTA GAZOO Racingが2012年から参戦しているWEC世界耐久選手権の新シーズン、2018/19年“スーパーシーズン”がまもなく、ベルギーのスパ・フランコルシャンで開幕する。2018年5月から翌年6月のル・マン24時間まで1年を超えるロングシーズンに、トヨタは2度のF1チャンピオン、フェルナンド・アロンソを加えた新体制で臨み、悲願のル・マン初制覇ならびに2014年以来、2度目のWECタイトル獲得を目指す。
チームの本拠地であるドイツ・ケルンから約120kmの地にあるスパ・フランコルシャンでのレースは、トヨタにとって富士に次ぐ第2のホームレースといえるイベントだ。昨シーズン、同地でワン・ツー・フィニュシュを飾っているトヨタは、今季の開幕戦として行われるスパラウンドにル・マン24時間でも使用するローダウンフォース仕様のパッケージで臨む。
そんなトヨタは冬のオフの間にドライバーラインアップを一部変更。中嶋一貴とセバスチャン・ブエミの駆る8号車トヨタTS050ハイブリッドに“トリプルクラウン”の達成を狙うアロンソを加えた。
一方で昨年、ル・マンの舞台であるサルト・サーキットのレコードタイムを更新するなど、計3回のポールポジションを奪った小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ-マリア・ロペス組の7号車トヨタTS050ハイブリッドは体制が維持され、同トリオで2シーズン目を迎えることとなる。
オフシーズン中のプライベートテストやWEC公式テスト“プロローグ”などを通じ、通算2万5000kmにのぼる走行を重ねてきたトヨタのライバルとなるのは、先日、元F1王者のジェンソン・バトンの起用を発表したSMPレーシングや、ポルシェワークスドライバーのアンドレ・ロッテラー、ニール・ジャニらを擁するレベリオン・レーシングら、5つのプライベーターチームが走らせる合計8台のノンハイブリッドマシンだ。
エレクトリックパワーの有無によって生じる性能差を埋めるべく、シリーズはプライベーター勢に大幅な性能の緩和を許可。その数値はサーキット1周あたりの燃料量で49%、最大燃料流量は37.5%多く使用できるとし、マシン重量ではトヨタTS050ハイブリッドの878kmより45kg軽い833kgとなっている。
「LMP1クラスで新たな我々のライバル勢との性能差には、まだわからない部分が多くありますが、ファンの皆さまに白熱したレースをご覧いただけることを願っています」と語るのは村田久武チーム代表。
「冬のオフシーズンテストでは、徹底的に走り込みを行って参りましたが、実際のレースは別物です。スパの開幕戦は、ル・マンの準備のための重要なステップでもあります。昨シーズンは3連勝で締めくくり、我々の競争力をお見せすることができました。この流れを継続して今週末も表彰台の真ん中を狙いたいと思っています」
■一貴「アロンソと一緒に戦うのが楽しみ」
昨年はスパで優勝し、開幕2連勝を達成した一貴は「私にとって7シーズン目のWECになりますが、記憶に残るシーズンになってくれればと思っています。スパではさまざまな思い出がありますが、勝利を挙げた昨年のレースが一番です」とコメント。
「冬の間にフェルナンド(・アロンソ)とはともに多くのテストをこなしてきましたが、彼と一緒に実際のレースに臨むのはこれが初めてです。我々にとってもファンの皆さまにとっても、本当に楽しみなレースになると思います」
そのアロンソは冬のテストを楽しめたと語る。
「オフシーズンテスト中、チームは本当に頑張ってくれた。このチームとの開幕戦に臨めるのは素晴らしい気分だよ。ル・マンもあと1カ月半後に迫り、僕自身、身が引き締まる思いだ」
「僕にとって初めてとなるWECへの準備はとてもエンジョイできたし、セバスチャン、一貴をはじめ、チームのドライバー達とともにこなしてきたプログラムは素晴らしい経験になったよ」
また、7号車トヨタで可夢偉とマシンをシェアするコンウェイは、ローダウンフォース仕様のマシンで迎える開幕戦について次のように述べた。
「スパは大好きなサーキットのひとつで、またあそこに戻ってレースを戦える日が待ちきれないよ! ローダウンフォース仕様でスパを走ることになるというのも楽しみだし、オー・ルージュを高速で駆け上るのは間違いなく最高の気分だろう」
「僕はスパでのイベント自体が好きなんだ。ファンの皆はとてもレースに熱心で雰囲気もすごく良い。天気が良ければ格別だよね」
同じく7号車を駆る僚友のロペスは「オフシーズンが長く感じた」と語り、同時に開幕戦を心待ちにしていたとコメント。
「これまでハードワークを続けてきたから、マシンの高い競争力を期待しているよ。昨年、僕はシルバーストンで怪我をして、スパは参加できなかった。だからLMP1マシンでスパを戦うのは初めての経験になるんだ」
「この素晴らしいコースをTS050ハイブリッドで走れるというだけでわくわくするし、チームのためにも良い結果となるように頑張りたい」
シーズンのハイライトであるル・マン24時間の前哨戦として知られるWECスパ。今季は1年以上に渡って戦いが繰り広げられる“スーパーシーズン”のスタート地点となる注目の一戦は、5月3日(木)午後に予定されている90分間のフリープラクティスで幕が上がり、翌4日(金)のプラクティス、午後の公式予選を経て、5日(土)13時30分(日本時間20時30分)に6時間レースのスタートが切られる。