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スーパーフォーミュラ:関口雄飛 2018第1戦鈴鹿 決勝レポート

2018年05月01日 12:51  AUTOSPORT web

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2位表彰台を獲得した関口雄飛(左)
2018年全日本スーパーフォーミュラ選手権 開幕戦鈴鹿
悪夢の赤旗で予選14番手に沈んだ関口雄飛は、決勝で圧倒的な速さを見せ、トップを追い続け、見事2位表彰台をゲット!!

 4月21日~22日、三重県、鈴鹿サーキットにおいてスーパーフォーミュラ第1戦が開催されました。今シーズもITOCHU ENEX TEAM IMPULから19号車でエントリーする関口雄飛は、在籍3年目となる今年の目標をシリーズチャンピオン獲得に掲げ、シーズンオフのテストから、順調にマシンを仕上げてきました。
 
 速さとタイヤマネージメントに自信を持つ関口雄飛にとって、今年新たに採用された2スペックタイヤ制の導入は、レース戦略を組み立てる上で非常に重要なファクターです。ミディアムタイヤと比較して、グリップ力が高い反面、耐摩耗性に劣るソフトタイヤをいかに労わりながら使い切るかが、勝負のテーマとなるからです。
 
 金曜日のフリー走行では、あえてソフトタイヤを投入せず、レース後半を意識して中古のミディアムタイヤでセットアップを進めた関口雄飛は、まずまずの感触を得ていました。土曜日朝のフリー走行で、中古のソフトタイヤで非常に良い感触を得たこともあって、予選には絶大の自信を持って挑みました。しかし好事魔多しのことわざのごとく、いきなりの悪夢が関口雄飛を襲います。
 
 予選Q1をミディアムタイヤで順調に通過した関口雄飛でしたが、ソフトタイヤを投入して迎えた予選Q2では、タイヤを温めてアタックラップに突入した最中に赤旗中断。
 
 セッションは残り3分、計測1周をもって再開という非常事態を迎えました。関口雄飛は、予選Q3用に温存するつもりだった新品のソフトタイヤをあえて導入し、予選Q3進出を目指しましたが、アタックラップのセクター1で遅いマシンに引っ掛かってしまい、決勝レースのことを考え、タイヤの摩耗を極力減らすためにアタックを中断。ゆっくりとしたペースでピットに戻りました。
 
 結果は予選Q2最下位の14番手。ソフトタイヤできちんとアタックできていたら、ポールポジション争いをする権利がある速さはあったので、チームも本人も、予選赤旗中断の悪夢を呪いました。不運は不運と割り切り、気持ちを決勝レースへと切り替えて、チームは土曜日の遅くまで決勝レースの戦略を練りました。

■決勝

 昨年の開幕戦は総走行距離250kmの戦いでしたが、今回のレースは300kmの戦いです。燃費を考えると、最初のピットインは15周以降でなければ、自動的に2ピット戦略を取るしかありません。最後の合同テストでソフトタイヤのロングランを実施できなかった関口雄飛にとって、予選14番手からの開幕戦は、いきなり予想もしなかった、試練の戦いとなりました。
 
 決勝当日、朝のフリー走行では、マシンのバランスの良さを再確認。決勝レースに向けて闘志が高まってきます。もはや失うものは何もないポジションなので、ライバルたちと同じ戦略ではそれを抜くことが難しく、攻めの戦略を取ることを覚悟していました。
 
 今年からチームの戦略アドバイザー的なポジションに就任した星野一樹選手が、スタート前のグリッドで各車のタイヤをチェック。先頭集団が概ねミディアムタイヤでスタートすることを確認すると、ソフトタイヤでのスタートをアドバイスしてくれました。関口雄飛はグリッド上で、ふたつ返事でその提案を受け、覚悟を決めました。
 
 ソフトタイヤでのスタートにおける勝利の鍵は、燃費とタイヤ摩耗です。それをドライビングでコントロールできるか、否かが今回のレースの焦点となりました。
 
 実際、決勝レースが始まると、上位陣がミディアムタイヤで均衡したバトルを展開し、あえてソフトタイヤを選択したチームや、軽い燃料搭載量でスタートしたマシンが素晴らしいパフォーマンスを見せましたが、数周でタイヤがタレはじめ、早めのピットインをせざるを得ませんでした。
 
 一方の関口雄飛は、チームから寄せられた期待に十分応え、燃費走行をしながらソフトタイヤの特性を生かしたハイペースで周回を重ねます。1周目に12番手でコントロールラインを通過すると、15周目に11位、16周目に10位、19周目に9位へとポジションアップ。誰よりも多くソフトタイヤで走り切った関口雄飛は、24周目、14番手から大きくポジションを上げ、6位という入賞圏内でピット作業に飛び込みました。
 
 ITOCHUENEXTEAMIMPULの勝利への執念が一丸となって、関口雄飛をピットストップ最短時間となる13秒8でミディアムタイヤに交換し、コースに戻しました。チームメイトの平川亮選手の前でレースに復帰した関口雄飛でしたが、タイヤがすでに温まっている状態の平川亮選手がヘアピンで関口雄飛のインを刺そうとして左前輪をロックさせてしまい、2台は接触。平川選手のマシンは宙を舞って、そのままスポンジバリアに突き刺さりました。
 
 一瞬、あわやと思わされたアクシデントでしたが、幸い関口雄飛のマシンに致命的なダメージはなく、気を取り直してふたたびハイペースな燃費走行で前を追います。
 
 レース終盤、トップ集団の中から2台が2ピット作戦のためにピットイン。労せずして関口雄飛は2位まで浮上すると、そこから1周1秒から2秒近いハイペースでトップのマシンを追い詰め始めました。40周目に10秒以上あった差を、45周目に8秒6、46周目に7秒4、47周目に5秒8、48周目に4秒2と縮め、トップのマシンがその視野に入るところまで追い続けましたが、最終的に1.7秒まで詰めたところでチェッカーとなりました。
 
 その結果、関口雄飛は、開幕戦の鈴鹿で、2位表彰台に登ることができました。レース後、星野監督は、「今日の関口は凄いよ。優勝以上に価値ある2位だ。予選の不運がなければぶっちぎりだったかも知れない速さだ。本当、最高に気分いいね。いいレースだった」と満面の笑顔で語りました。
 
■関口雄飛のコメント

「予選14位という結果が不本意だっただけに、今日の決勝レースの結果は、素直に嬉しいです。決勝スタート直前までタイヤ選択で悩んでいたのですが、星野一樹さんのアドバイスでソフトタイヤを選び、腹をくくりました」

「レース序盤はソフトタイヤをいかに摩耗させずにハイペースで走りつつ、かつ燃費走行をしなければならない難しい状況でしたが、誰よりも長く引っ張ってピットインできました。たぶんタイヤにとって、グリップレベルのダウンから言っても、あれが限界だったと思います」

「平川選手とのアクシデントは、自分はアウトラップでまだタイヤが温まっていなかったからペースが彼より悪かったのですが、勝負ですからポジションを譲るつもりはありませんでした。平川選手はクラッシュしてしまいましたが、怪我がなかったので本当に良かったです」

「ミディアムタイヤに交換してからも燃費走行を心がけたのですが、終盤はプッシュしても良い状況になり、トップを狙って走りました。残念ながら1.7秒届きませんでしたが、苦手な鈴鹿で2位表彰台は、充分満足できる結果だったと思います」

「鈴鹿で表彰台に立ったのは、スーパーフォーミュラの3年間で初めてですし、ここがシリーズ中、2イベントあって重要な場所なので、シリーズチャンピオン獲得に向けて、いいスタートが切れたのかなと思います」

「今年こそはタイトルを獲得すべく、シーズンオフの間にしっかりと準備を整え、頑張ってきたかいがありました。皆さん、応援ありがとうございました。次のオートポリス戦は優勝目指して頑張ります」