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小田和正、aiko、ENDRECHERI、KIRINJI、アイルネ……各作品から感じる“エバーグリーン”な魅力

2018年05月01日 10:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 小田和正、aikoのニューシングルから、J-POPカバーを続けてきたアイドルネッサンスのベスト盤まで、様々な世代による新作を紹介。エバーグリーンな佇まいを備えた楽曲、そこに込められた音楽的意図やメッセージを感じ取ってほしい。


(関連:小田和正が“J-POP界最強”である理由 サウンドクリエイターとしてのストイックさを紐解く


■小田和正『この道を / 会いに行く / 坂道を上って / 小さな風景』
 小田和正のニューシングル、『この道を / 会いに行く / 坂道を上って / 小さな風景』。クラシカルなピアノを軸にしたミディアムバラード「この道を」、軽快なメロディと華やかなストリングスが朝の日差しを想起させる「会いに行く」、ノスタルジックな旋律とともに切なくも愛おしい青春時代を振り返る「坂道を上って」、<きっと僕は 君の心の/小さな風景に 気付かなかったんだ>というラインが心の琴線を揺らす「小さな風景」に共通しているのは、すべての音、すべての言葉に一切の無駄がないということ。年齢、性別、音楽の好みを問わず、リスナーの個人的な記憶や感情を呼び起こし、忘れていた何かを取り戻させてくれるーー小田和正の普遍的な魅力は、楽曲を構成するすべての要素を精査、研磨し続ける冷徹なスタンスによって担保されているのだと改めて気付かされる。


■aiko『ストロー』
 1曲のなかで<君にいいことがあるように>と10回繰り返す表題曲「ストロー」は、切なさ、爽やかさ、愛おしさが入り混じる“これぞaiko!”なポップチューン。この曲に関して彼女は「『小さいけどなんか前向きになれる嬉しい事が好きな人にたくさん起こったらいいな』と思って作りました」とコメントしているが、その根底には“明日も好きな人と一緒にいられるとは限らない。だから、せめて今日はいい日であってほしい”という切なる願いが込められている。この無常観は、aikoの表現の源泉であり、彼女の楽曲が強く支持され続ける理由につながっていると思う。独特のブルーノート感を軸にしたaikoらしさをきちんと保ちつつ、ハッと耳を引かれるフレーズを随所に詰め込んだOSTER projectのアレンジも冴え渡っている。


■ENDRECHERI『HYBRID FUNK』
 KinKi Kidsの堂本剛のソロプロジェクト・ENDRECHERIの新作『HYBRID FUNK』。山下達郎がギタリストとして参加した「HYBRID ALIEN」、トライバルなビートを軸にした「END RE CHERI」、Sly & The Family Stone直系のアッパーチューン「MusiClimber」、80年代のブラックミュージックを想起させる「YOUR MOTHER SHIP」、華やかなパーティムードに満ちた誕生日ソング「おめでTU」、日本的な抒情性と濃密なソウルネスが溶け合うバラードナンバー「シンジルとウラギル」など、多彩な歌詞の内容、さまざまな音楽要素を取り入れたサウンドメイクを含め、まさにハイブリッドなファンクアルバムに仕上がっている。“鋭利なアナログサウンド”と呼びたくなる音像も印象的だ。


■KIRINJI『時間がない』
 KIRINJIが5人体制で初めてリリースするシングル『時間がない』表題曲は、堀込高樹の作詞・作曲によるナンバー。冒頭の<あと何回、君と会えるか/あと何曲、曲作れるか>というラインは、彼と同世代のリスナーにとって、切実な意味を持っているはずだ。人生の折り返しをとっくに過ぎ、残された時間のなかで何ができるかを真剣に考え始めるーーそんなミドルエイジのシリアスな思いを堀込は、洗練の極みとしか言いようがない極上のポップソングへと導いている。AORの進化形とも言えるサウンドメイクのなかで“人生後半、大切な人たちに愛を伝えて生きたい”という願いを込めた歌を響かせるこの曲から、デビュー20周年イヤーをスタートさせるKIRINJI。“残り少ない人生、やりたいことをやらねば”といったモードに入った彼らに対する期待は高まるばかりだ。


■アイドルネッサンス『アイドルネッサンス』
 2月24日のYokohama Bay Hall公演をもって解散したアイドルグループ、アイドルネッサンスの2枚組ベストアルバム『アイドルネッサンス』。2014年1月に始動、80年代~10年代までの楽曲をカバーする“名曲ルネッサンス”をテーマに活動してきたアイルネ。デビュー曲「17才」(Base Ball Bear)をはじめ、「YOU」(大江千里)、「Funny Bunny」(the pillows)などのシングル曲、さらに「Happy Endで始めよう」(大瀧詠一)、「タイム・トラベル」(原田真二)といったJ-POPのスタンダードを収めた本作からは、“優れたソングライターの青春ソングを10代の少女たちが歌う”というこのグループのコンセプトのおもしろさがたっぷりと伝わってくる。日本の優れたポップスの再発見にもつながる、意義深い作品だと思う。(森朋之)