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滝藤賢一が父親役で引っ張りだこ! 『半分、青い。』『花のち晴れ』で見せる対照的な父親像

2018年05月01日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)ではひょうきんな父親、『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS系、以下『花のち晴れ』)では厳格な父親という、まったく毛色の違うふたつの作品でタイプ違いの父親像を作り上げている滝藤賢一。この事実が示すように、彼は名バイプレーヤーのひとりとして、多くの作品に欠かせない存在だ。


 『半分、青い。』で彼が演じるのは、ヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁)の父・宇太郎。一家で経営する岐阜の小さな食堂の厨房担当であり、能天気でおっちょこちょいだが、持ち前の明るさは周囲をも明るくし、いざという時には頼りになる男だ。宇太郎について滝藤は『連続テレビ小説 半分、青い。 Part1』(NHK出版)にて、「これまでは神経質だったり暴力的だったりする役が多かったので、“普通の父親”を演じられるのは嬉しいですね」と語っている。思い返してみれば、『るろうに剣心』(2014)での佐渡島方治役などをはじめとし、彼が演じてきたキャラクターはエキセントリックなものが多かった。昨年の夏季クールに放送された『黒革の手帖』(テレビ朝日系)での、主人公・原口元子(武井咲)が勤めていた銀行の上司役や、同時期に公開された『関ヶ原』での、豊臣秀吉役の鬼気迫るキャラクター造形などは、記憶に新しい。


参考:原田知世&松雪泰子が美しい 『半分、青い。』母親たちの輝かしき魅力


 いずれの作品も、一度見たら忘れられないようなエッジの効いた芝居が印象的であったが、今作で演じているは宇太郎は、どちらかと言えば控えめでキャッチー。大なり小なりオーバー気味にも思える所作や台詞回しは、彼の大小高低自在な声と同様に、実にきめ細やかに変化させることで作品ごとにフィットさせている。控えめな芝居という意味では、映画『はなちゃんのみそ汁』(2015)での父親・安武信吾役などの前向きで穏やかなキャラクター像が、今作での宇太郎役とも通じるところがあるだろう。


 今作で、妻の晴(松雪泰子)が、「うーちゃん(宇太郎)がいると生きるのが明るくなる。鈴愛と同じで、ものごとの見方が明るい」と口にしているように、彼の登場によってお茶の間も明るくなる、そんな存在である。先述した滝藤自身のコメントの続きには「誰よりも晴さんのことをいちばんに考え、何があっても最後まで子どもたちの味方でいたいと思っています」とある。彼が見せる潤んだ大きな瞳は、“優しいお父さん”のまさにそれだ。


 一方『花のち晴れ』で演じるのは、名門高校である英徳学園を牛耳る「C5」のリーダー・神楽木晴(平野紫耀)の父・巌だ。日本屈指の大財閥の若き会長である巌は、眼光鋭く終始高圧的な態度の人物。息子の晴に対しては、「完璧な息子しかいらない」などと平然と言ってのけ、人の温かみというものが感じられない。出番は少ないながらも彼が圧倒的な存在感を示しているのは、物語上の特異なキャラ設定以上に、やはりこの手のキャラクターに滝藤が抜群にハマるというのが一番大きな理由だ。しかもこういった極端な人物こそ、一辺倒なキャラクター性に陥らないために、より繊細な芝居が要求されるだろう。それも若々しくフレッシュなキャスト陣が揃った作品なだけに、なお一層のことである。


 宇太郎とは瞳の印象すらまるで違う、完全に対照的な父親像だが、滝藤は出演発表時に寄せたコメントで「平野君の未知なる可能性とセッションできるのが今から楽しみでなりません!」と語っている。前クールの『海月姫』(フジテレビ系)では、“男子禁制”の「天水館」の実質的なオーナー、目白先生役として最終回にのみ出演。まさかの男性という設定に合わせて、滝藤のロングヘアでメガネ姿でのインパクトある登場は、一躍話題をかっさらった。『海月姫』でも、芳根京子らフレッシュなキャスト陣との見事なセッションを果たした滝藤なだけに、『花のち晴れ』でもどのような化学反応を見せるのか期待してしまう。


  よくよく考えれば、『半分、青い。』で鈴愛の幼馴染・律(佐藤健)の父を演じる谷原章介もまた、今作に加え、封切られたばかりの『ママレード・ボーイ』でもタイプ違いの父親役を好演中。昨年の朝ドラ『ひよっこ』(NHK)で主人公の父親役を務めた沢村一樹をはじめ、40代俳優が父親役で名演を見せている。この後の展開での、滝藤演じる2タイプの父親像の変化に注目だ。


(折田侑駿)