ブレンドン・ハートレーがアゼルバイジャンGPで10位に入り、F1ドライバーとして初入賞を飾った。ニュージーランド人ドライバーのF1入賞は、1974年9月のカナダGPでデニス・ハルムが6位に入賞して以来の快挙となった。
今年のアゼルバイジャンGPも多くのアクシデントがあり、セーフティカーも出動する荒れた展開となった。もちろん、今回の入賞には荒れた展開がハートレーに味方したことは確かだが、運だけで獲得した1点ではない。
例えば、1周目のピットインだ。1周目にピットインしたのはハートレーを含めて全部で5人。ハートレー以外の4人がアクシデントを受けての緊急ピットインだったが、ハートレーはマシンに問題ないにも関わらず、ピットインした。田辺豊治ホンダF1テクニカルディレクターによれば、あのピットインは「戦略だった」という。
その理由を田辺TDは語らなかったが、自分よりも前からスタートしたドライバーの何人かがピットインしたため、そこで自分がピットストップしてもポジションを失わない、いわゆる『フリーストップ』という状況を上手に利用し、周りを走るドライバーのタイヤと異なる戦略を採ったのではないか。
一方、17番手からスタートしたピエール・ガスリーもスタート直後の混乱をうまくかわして1周目に11番手まで浮上することに成功。その後、7番手までポジションを上げたものの、徐々にポジションを下げていった。
この理由を田辺TDはこう説明した。
「金曜日のロングランが悪くなかったので、レースでも戦えると思ったんですが、実際、蓋を開けてみると厳しいレースになりました。路面温度が金曜日とは異なり、うまくタイヤを機能させることができなかったのかもしれません。そのへんをしっかりと解析し、今後のレースに生かしたい」
だが、理由はそれだけではなかった。ガスリーがオーバーテイクされたのが、ストレートだったからだ。
田辺TDによれば、「エネルギーマネージメントが最適化できなかった」という。回生エネルギーには限りがあるため、事前にどこでどれだけ使用するかをプログラムしておく。ラップタイム・ベストで走る予選と、バトルしながら走るレースでは場所も時間も異なるのだが、それが十分ではなかった。
「レースの展開の中でのエネルギーマネージメントも見直さなければなりません。レースの展開のすべてに対して、最適化できていなかった。それが今回の大きな反省です」
それでもガスリーは2回目のセーフティカーのときには11番手を走行。だが、セーフティカーがピットに入り、レースが再開されようとしていた48周目のストレートで幅寄せしてきたハースのケビン・マグヌッセンと接触。
「フロアの半分とミラーを壊され、ステアリングも曲がってしまった。接触がなければポイントを取れたかもしれないのに……」(ガスリー)
リタイアは免れたが、ポジションを落として12位に終わった。