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視聴者に近い竹内涼真の存在に注目 二宮和也主演『ブラックペアン』医療界の課題を浮き彫りに

2018年04月30日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 先週のTBS系列日曜劇場『ブラックペアン』第1話で描かれた東城大学医学部付属病院初のスナイプ手術は、“スナイプ”が活躍する部分こそ成功したとはいえ、執刀した高階権太(小泉孝太郎)が患者の胃に動脈瘤があることを見落としたまま手術を行い、結果的に渡海征司郎(二宮和也)の巧みな手腕によって患者の命が救われる結果になる。


参考:第3話出演の高地優吾&二宮和也ツーショット【写真】


 そして4月29日に放送された第2話で行われた2度目のスナイプ手術では、この医療界の“未来”ともいえる技術が抱える新たな課題が浮き彫りになっていく。


 急患で運ばれてきた患者の小山(島田洋七)に対するスナイプを用いた僧帽弁置換手術で執刀することになったのは、これまで難易度の高い手術では助手としてつき、渡海に任せっきりになっていた関川文則(今野浩喜)。入念な練習を重ねたにも関わらず、彼は心室内に人工弁を脱落させてしまうという失態を犯してしまうのである。


 スナイプ推奨派の高階が標榜する“誰にでもできる”という言葉自体には大きな間違いはないのかもしれない。しかしながら、その段取りがひとつでも崩れてしまったとき、そのミスを補填することは“誰にでもできる”ものではないということが証明されてしまうのだ。しかも、今回は高階でさえも補うことのできない事態に発展し、またしても渡海の力を借りることに。


 第2話にしてすでに、ある意味で時代劇や西部劇的な基本プロットが確立してきた本作。患者の手術をスナイプ手術で執り行うが、何らかのミスが起き、それを絶対に手術を失敗しない渡海が救っていく。今後同じようなプロセスを辿っていったとしても、スナイプ手術が成功を遂げる瞬間が確実にやってくるはずだろう。そのときにこのドラマの展開にどのような変化が起きるのか、早くも気になってしまう。


 ところで今回のエピソードでも、先週に続いて研修医の世良雅志(竹内涼真)の存在にフォーカスが当てられて物語が運ばれた。縫合の練習を積みながら「すべては練習の中にある」と、サッカーの神様・ペレの言葉を引用し、「手術は博打」という渡海の言葉に怯え外科医を辞めようとも考える努力と葛藤のキャラクターは、決して身近とはいえない医療ドラマにおいて重要な、視聴者に最も近いキャラクターといえよう。


 そんな彼の葛藤を前に、高階がかける「ひとりも殺していない君が外科医をやめるのか?」と「無責任ではないか」という言葉。未来ある外科医が減ることで、未来に救われるはずだった命を殺すかもしれないという高階の考え方に対し、渡海の持論は正反対にも「未来で殺すはずだった患者を助ける」と表現されていく。


 “理想”によって未来を思い描くタイプの高階と、“現実”を見据えて今そこにいる患者を助けることにしか興味のない渡海。これまで多くの医療ドラマで幾度となく描かれてきた“医者に未来はあっても、患者には今しかない”というテーマが、このドラマにおいては一種のジレンマのように作用していくことだろう。(久保田和馬)