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欅坂46は壁を越えて進み続けるーーデビュー2周年ライブで手にした“強さと自信”

2018年04月29日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 欅坂46がCDデビュー2周年を記念した単独ライブ『欅坂46 2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』を2018年4月6日~8日の3日間、武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナにて行った。2016年4月6日に『サイレントマジョリティー』でCDデビューを果たした欅坂46は、昨年同日に国立代々木競技場第一体育館でデビュー1周年記念ライブを敢行。今年は3日間にわたり、計2万4000人を動員する盛況ぶりをみせた。


 漢字欅(欅坂46)が本格的な単独ライブを行うのは、昨年8月に実施された初の全国アリーナツアー『欅坂46 全国ツアー2017「真っ白なものは汚したくなる」』以来約7カ月ぶり。けやき坂46(ひらがなけやき)を除く漢字欅のみでの本格的な単独公演はこれが初めてとなる。そもそも漢字欅は今年1月31日、2月1日に日本武道館で自身初の本格的な単独ライブを行う予定だった。しかし、開催を断念し、代わりにけやき坂46が1月30日の単独公演含め3日連続でライブを敢行。この突然課せられた重圧をけやき坂46は見事に跳ね除け、3公演を大成功のうちに終えグループの評価を上げる絶好の機会となった。


(参考:欅坂46はまだまだ面白くなるーー『欅共和国 2017』に感じたグループの真骨頂と課題


 この武道館キャンセルを経て、今年のアニバーサリーライブは漢字欅のみで敢行することとなったが、同時に平手の不参加も明らかに。さらにライブ直前には志田愛佳も欠席することが発表され、CDデビュー2周年を祝福するはずが「絶対的センターの不在、そして21人から2人欠けた19人での初単独ライブ強行」という試練の場となってしまう。かつて筆者が観覧した夏の全国ツアー名古屋公演(2017年8月16日)では当日に平手休演が発表され、ライブは平手のパートを空けたまま実施されるという異例の内容となったが、果たして今回の3公演ではどんなステージを繰り広げるのか。筆者のみならず、多くのファンがその内容に注目したはずだ。


 もっとも気になっていたのは、平手の代わりに誰がセンターポジションに立つのかというころだろう。最新シングル「ガラスを割れ!」のテレビパフォーマンスでは、平手の両サイドに立つ今泉佑唯と小林由依がダブルセンターという形でセンターポジションを務めたが、他の曲に関してはどうなるのか。「ガラスを割れ!」同様、今泉と小林が交互にセンターを担当するのか、あるいはけやき坂46兼任時にセンターに立つことが多かった長濱ねるが務めるのか……そんな思いを胸に、まずは初日6日公演に臨んだ。


 まず会場に着いて驚いたのが、その簡素なステージだ。廃墟、廃工場を思わせるセットは、どこか彼女たちの初単独ライブ(2016年12月、有明コロシアムで開催)を思わせるものでもあり、最新曲「ガラスを割れ!」のMVを彷彿とさせるものでもある。そんなセットの至るところにスクリーンが設置されているところは、昨年夏の全国ツアーにも似ている。


 定刻を過ぎ、オープニングSE「Overture」が爆音で流れ出すと、場内はペンライトで欅坂46のイメージカラーである緑1色に染め上げられる。そして「Overture」が終わると、壮大なSEに乗せてメンバーが1人、また1人とステージに登場する。最後に今泉と小林が登場し、ステージでフォーメーションを組むメンバーと合流すると、勢いよく蹴りをかます。そこからオープニングナンバー「ガラスを割れ!」に突入するのだが……メンバー全員が着用していたリバーシブルのロングサイズMA-1を、通常はセンターの平手が赤側、他メンバーが黒側にして着るところを、今回のライブでは全員が赤側で着用。今思えばこれは、メンバーの誰もがセンターに立つ可能性があること、また全員でセンターの不在をフォローするという意思表示だったのかもしれない。


 「ガラスを割れ!」はテレビパフォーマンスで見慣れていた編成ということもあり、若干の安心感を持って観ることができると思っていたが、曲が人を育てるのか、人とともに曲が育つのか、この曲で見せる今泉と小林の表情はどこか狂気じみたものすら感じられ、ゾクッとする瞬間が何度もあった。それは他のメンバーも同様で、凄みの効いた表情とパフォーマンスにはただ圧倒されるばかりだ。


 続く「避雷針」では渡邉理佐、「君をもう探さない」では菅井友香と曲ごとにセンターが変わっていき、客席からはどよめきと大歓声が響きわたる。ここで、今回のライブは曲ごとにセンターに立つメンバーを入れ替える、まさしく総力戦と呼ぶにふさわしい構成で挑むことが理解できた。昨年夏の名古屋公演では時間の関係などもあり実現できなかった形が、ついにここで実現されることになった。しかし、あのときと違うのはメンバーの覚悟。まだ昨年の時点では「平手抜きでもやり遂げる」という意志がそれぞれに足りていなかったのではないかと、ツアー終了後にメンバーにインタビューするたびに感じていたが、ついにここに来て腹を割ったのだろうか、とにかく1曲1曲から伝わってくる真剣さや思いが今までとは違ったのだ。しかも平手センターの印象が強い楽曲群を、代理を務めたメンバーたちは従来のイメージを壊すことなく、同時に自身の個性もしっかり打ち出している。もしかしたら潜在的に彼女たちの中に秘められていた実力・才能が、今回の逆境によって引き出されたのかもしれない。


 また、序盤4曲では曲間をスクリーンに表示される映像や次曲へとつながるキーワード的なポエムによって、ひとつの物語が進行しているかのような演出を見せる。これは昨年夏のツアーを踏襲したものでもあり、こういった世界観作りこそ欅坂46の真骨頂であることにも再認識させられた。


 4曲終えると、MCでは普段の柔らかいな笑顔のメンバーに戻る。この落差も欅坂46のライブにおける魅力のひとつかもしれない。特に今回はけやき坂46を欠いての単独公演だ。緩急をつけるという意味でも、公演中数少ないMCの場面は、観る者が一呼吸置く上でも重要なポイントと言える。


 MCを終えると、全9曲におよぶユニットコーナーに突入。今回の総力戦を語る上でも、このユニットコーナーは非常に重要なブロックだ。「バレエと少年」では中心に立つ小池美波と原田葵の豊かな表情や作り込まれた細かなしぐさなどから、昨年夏のツアー以降の成長が伺える。また、この2人は「AM1:27」にも加わり、鈴本美愉や小林に引けを取らないダンスを見せてくれた。志田が欠席したユニット、青空とMARRY(菅井、守屋茜、渡辺梨加、渡邉)は「波打ち際を走らないか?」で笑顔いっぱいのパフォーマンスを披露し、メンバーが1人足りないことを一切感じさせなかったし、「結局、じゃあねしか言えない」を歌う五人囃子(石森虹花、織田奈那、齋藤冬優花、佐藤詩織、土生瑞穂)が全体でのパフォーマンスとは異なる大人びた姿をアピールする。長濱も自身のソロ曲「100年待てば」、さらに尾関、小池を交えた「バスルームトラベル」をメルヘンチックな演出とともに披露した。


 そして、今泉はソロ曲「再生する細胞」を裸足で堂々と歌唱し、透明感のある歌声を響かせる。特に今泉は、最終公演でこの曲にアレンジを加え、落ちサビをアカペラで披露。こういった挑戦からも、彼女が日々成長していることが伺える。さらに、今泉と小林によるユニット・ゆいちゃんずが昨年のアニバーサリーライブ以来1年ぶりにファンの前に登場。昨年のツアーでは歌われることのなったアルバム『真っ白なものは汚したくなる』収録曲「1行だけのエアメール」と、最新曲「ゼンマイ仕掛けの夢」の2曲を披露し、息の合ったハーモニーを聴かせてくれた。そこには1年前、歌うことに対して自信を失いかけていた2人の姿はなく、随所でアイコンタクトを取りながら歌う様からはある種の余裕すら感じられた。


 ユニットコーナーを終えると、メンバー19人による総力戦を再開。「月曜日の朝、スカートを切られた」では渡邉の凄みを効かせたソロパートに対し驚きの声が上がり、「エキセントリック」では土生がセンターに立ち、この曲本来の独特なダンスを高身長の彼女ならではのパフォーマンスで表現してみせる。また、本公演ならではのサプライズとして坂道AKBの「国境のない時代」を欅坂46のメンバーだけで披露。原曲同様に長濱がセンターを務め、普段のソフトな印象とは異なるクールな表情でセンターをやり遂げた。


 今やライブの盛り上げには欠かせない「危なっかしい計画」からライブ終盤戦に突入すると、志田に代わって織田が観客を煽り、「風に吹かれても」では小林が堂々と単独センターを務める。特に小林はこの曲を通してセンターとしての自信を掴んだのか、最終日のパフォーマンスでは不敵な笑みを浮かべていた。


 そして本編ラストの「不協和音」では、キャプテンの菅井が鬼気迫る表情とドスの効いた「僕は嫌だ!」の絶叫で、圧倒的なパフォーマンスを披露。菅井は日を増すごとに凄みを増していき、最終日の「不協和音」では曲中、悲鳴にも似た叫び声まで上げるという壮絶さを見せる。普段の落ち着いたイメージを完全に払拭し、「不協和音」という楽曲の持つダークさと完璧なまでにリンクした菅井の姿に、平手の幻影を見た者も少なくなかったのではないだろうか。また、その菅井に負けじと完全燃焼するまで踊り続けるメンバーの姿から、彼女たちがこのライブにどのような思いで臨んだのかが瞬時に理解できた……そんなファンも多いはずだ。


 ライブ本編で披露された楽曲は、昨年の4thシングル『不協和音』(2017年4月発売)、1stアルバム『真っ白なものは汚したくなる』(同年7月発売)、5thシングル『風に吹かれても』(同年10月発売)、そして6thシングル『ガラスを割れ!』(2018年3月発売)の収録曲……この1年間に発表された楽曲のみで構成されていた。つまり、「サイレントマジョリティー」や「二人セゾン」といったヒットシングルを欠いた形のセットリストだ。そして順風満帆だったデビュー1年目を経て、さまざまな困難がグループを襲った2年目を象徴するこれらの楽曲群を、昨年よりも心身ともに強く成長した欅坂46が表現する。これこそが、今回のアニバーサリーライブの意味だったのではないだろうか。ライブから数日経った今、改めてそんなことを考えてしまう。


 また、序盤の4曲で改めて「欅坂46とは?」を問いかけるような凝った演出で、観る者にグループの世界観を再認識してもらい、続くユニットコーナーでメンバー個々の魅力を知ってもらう。一人ひとりを把握してもらったところで、再び総力戦に戻ることで、序盤の4曲とは異なる感じ方をしてもらう。メンバー個々の存在感に気づいたことで、欅坂46の世界観をより深く感じてもらう。そういった意味合いも、このセットリストおよび今回のライブには込められているように感じたのだが、いかがだろうか。


 さて、本題に戻ろう。アンコールではライブ本編でパフォーマンスされなかった「サイレントマジョリティー」「世界には愛しかない」「二人セゾン」の初期ヒットシングルを、日替わりで披露。「サイレントマジョリティー」では鈴本、「世界には愛しかない」では守屋、「二人セゾン」では小池&原田がそれぞれセンターを担当し、いつも以上に熱の入ったパフォーマンスを通じて個々の魅力が存分に引き出された。特に原田は、あの印象的な平手のソロダンスを彼女ならではのしなやかなダンスで表現してみせ、7日公演の「二人セゾン」パフォーマンス後にはセンターの重圧から解き放たれ落涙する場面もあったほどだ。そして3日とも、アンコールのラストは「太陽は見上げる人を選ばない」を歌唱し、笑顔でエンディングを迎えた。また最終日のみ、ダブルアンコールで「ガラスを割れ!」をプレゼントするサプライズもあった。


 菅井は公演中、「本当はここに21人で立ちたかった。それは、皆さんもそうだ(=21人のステージを観たかった)と思います。でも、今できることを頑張っていきたいと思いました。それが皆さんの心に届いていたらいいな。自分たちの力で、目の前のガラスを割っていきたい。これからも壁に立ち向かっていくので、応援よろしくお願いします」と挨拶する場面があったが、平手や志田の不在という“壁”を、昨年の全国ツアーでも大きな課題となった結束力で乗り切ることに成功した。


 今後、彼女たちがどのような形で活動を続けていくのかは誰にもわからないが、波乱が続いたデビュー2年目を経て、欅坂46は今までにない強さと自信を手に入れたはず。この3公演で目にした彼女たちの姿がすべて、もう余計な心配はいらない。彼女たちの言葉を信じて、今後もさまざまな壁を越えて進む欅坂46を見守っていきたい。(西廣智一)


■『欅坂46 2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』セットリスト
2018年4月6日(金)~8日(日)武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ
00. Overture
01. ガラスを割れ!
02. 避雷針
03. 君をもう探さない
04. もう森へ帰ろうか?
05. バレエと少年 [上村/尾関/小池/長沢/原田/米谷]
06. 波打ち際を走らないか?[菅井/守屋/渡辺/渡邉]
07. AM1:27 [小池/小林/鈴本/原田]
08. 再生する細胞[今泉]
09. 結局、じゃあねしか言えない[石森/織田/齋藤/佐藤/土生]
10. 100年待てば[長濱]
11. バスルームトラベル[尾関/小池/長濱]
12. 1行だけのエアメール[今泉/小林]
13. ゼンマイ仕掛けの夢[今泉/小林]
14. 月曜日の朝、スカートを切られた
15. エキセントリック
16. 国境のない時代
17. 東京タワーはどこから見える?
18. 危なっかしい計画
19. 風に吹かれても
20. 不協和音
En1. サイレントマジョリティー(6日)
  世界には愛しかない(7日)
  二人セゾン(8日)
En2. 世界には愛しかない(6日)
  二人セゾン(7日)
  サイレントマジョリティー(8日)
23. 太陽は見上げる人を選ばない
WEn. ガラスを割れ!(8日のみ)