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元NHK記者「強姦致傷」で懲役21年「殺人じゃないのに重すぎ」の声に元裁判官が答える

2018年04月28日 09:42  弁護士ドットコム

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女性3人に性的暴行を加えたとして、強姦致傷(強制性交等致傷罪)などの罪に問われた元NHKの男性記者の裁判員裁判で、山形地裁は4月25日、懲役21年の判決を言い渡した。求刑は懲役24年だった。


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毎日新聞によると、元記者は山梨県内(2013年、14年)、山形県内(2016年)で犯行に及び、計3人の女性が被害にあった。検察側は3つの事件現場に残されたDNA型が被告人のDNA型と完全に一致しているとして懲役24年を求刑。被告人は逮捕後から一貫して否認を続けた。


今回の「懲役21年」という判決を専門家はどのようにみるだろうか。2017年に刑法が改正された影響はあったのだろうか。元裁判官の田沢剛弁護士に聞いた。


●強制性交等致死傷罪と「無期又は6年以上の懲役」と重罰化

ーー改正前、改正後、どちらの刑法が適用されたのでしょうか


2017年(平成29年)7月13日に刑法が改正・施行されて、従来は強姦致死傷罪として「無期又は5年以上の懲役」とされていたものが、強制性交等致死傷罪として「無期又は6年以上の懲役」と重罰化されました。


ただし、憲法39条が定めた遡及処罰の禁止(事後法の禁止)に由来する刑法6条(法の不遡及)がありますので、今回の元NHK記者の行為に対しては、改正前の刑法が適用されることになります。それでも、裁判員裁判対象事件であることに変わりがありません。


ーーSNSなどでは、「殺人でもないのに、重すぎるのではないか」という声もありました。


元NHK記者に対し、殺人罪ではないにもかかわらず懲役21年という判決(求刑懲役24年)が下されたことに対しては、以前の殺人罪の量刑と比較して、バランスを欠く、あるいは重過ぎるといった印象を抱く方もいるかもしれません。また、2001年から2003年にかけて起きた「スーパーフリー事件」の主犯格に対し、懲役14年の判決が確定していることと比較しても、そのような印象は拭えません。


しかしながら、刑事裁判が国民の法感覚とずれているなどといった批判から2009年に始まった裁判員裁判のもとでは、それ以前に比べて重い刑罰が科されるようになってきています。今回の裁判もその流れに沿ったものであるとも言えそうです。


●「常習的で再犯のおそれがある」

ーー被告人は一貫して否認していました。そのことも判決には影響したのでしょうか。


論告において、検察官は、クロロホルムを使った悪質な犯行で、同種事件の中で最も重い部類だと強調しています。その上で、「(元記者が全面無罪を主張するなど)反省の態度が全くない。常習的で再犯のおそれがある」と指摘したようです。重い量刑となってしまうのも無理からぬところです。


今回の判決をもって、量刑が重過ぎると感じてしまうのは、それこそ過去の量刑相場に縛られて考えている証拠なのかも知れません。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
田沢 剛(たざわ・たけし)弁護士
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。
事務所名:新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
事務所URL:http://www.uc-law.jp