2018年04月28日 09:42 弁護士ドットコム
セクハラ問題が、世間の注目をあつめています。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、職場でのセクハラ被害の相談がいくつも寄せられています。その中には、上司からのセクハラを同僚に相談したところ、あとから言いふらされてしまった、というものがありました。
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セクハラ内容は、職場の直属の男性上司から「性的行為」を要求されたというものです。その上司は既婚者でしたが、女性は「仕事に支障が出ること」をおそれて、断りきれなかったそうです。
それでも、相談者の女性は非常に悩んでしまって、信頼していた同僚の女性にその事実を打ち明け、精神の安定を保っていたようです。その後、上司は会社を退職しました。
安心して仕事ができると思っていた矢先、元上司と同僚たちが参加した飲み会で、相談していた同僚が、彼女と元上司の間で性的行為があったことなどを暴露したというのです。
相談者の女性は、言いふらした同僚に対して、損害賠償(慰謝料)を求めることはできるのでしょうか。村上英樹弁護士に聞きました。
――セクハラ被害を相談した同僚に言いふらされた場合、損害賠償を求めることはできるでしょうか?
その同僚に対して損害賠償を求めることは十分考えられます。
セクハラの事実は、被害者が表にしたくない事実であり、個人の名誉と密接に関わるものです。それにもかかわらず、元上司や同僚たちが参加している飲み会という不特定または多数に知れ渡りそうな場で、セクハラの事実を暴露することは、状況によって名誉毀損にあたる場合もあります。
名誉毀損とまでいえない場合であっても、女性のプライバシーの侵害として不法行為になる可能性が高いといえます。
――会社も法的責任を問われるのでしょうか?
セクハラをおこなった上司や同僚が、女性に対する不法行為責任を負う場合には、会社も使用者として、女性に対して法的な責任を問われます。このような事態を防ぐためにも、会社として、しっかりした体制作りをすることが重要です。
まずは、事前のセクハラ防止策として、トップによるセクハラ防止のメッセージやルール作り、実態把握、教育研修、社内への周知などが必要です。また、事後の対策として、相談窓口を設置することも必要です。
そして、被害者の申告や相談などについてはプライバシー性の極めて高い情報であること、意に反して人に伝わらないようにすべきものであるという考えを会社全体でしっかり持っておくことも、社内での研修等を通じて実施しなければならないと思います。
――相談窓口を設けているところもありますが、もし、そんなところからセクハラの事実が漏れた場合はどうでしょうか?
相談した人が望まないのに故意や過失(不注意など)によって、情報が漏れた場合には、会社が女性に対して損害賠償しなければならないでしょう。
会社は、男女雇用機会均等法によって、労働者の就業環境がセクハラで害されないように、セクハラを受けた労働者からの相談に応じて、適切に対応できる体制づくりなど、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。
そして、相談窓口は、被害者のプライバシーを保護するための必要な措置が講じられたものでなければならないことが、厚生労働省の指針で定められています。
それにもかかわらず、会社の落ち度によって、セクハラ相談窓口から情報が流出した場合には、会社が労働者に対する法的責任を問われることになると考えられます。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
村上 英樹(むらかみ・ひでき)弁護士
主に民事事件、家事事件(相続、離婚など)、倒産事件を取り扱い、最近では、交通事故、不動産問題、労働災害、投資被害、医療過誤事件を取り扱うことが多い。法律問題そのものだけでなく、世の中で起こることそのほかの思いをブログで発信している。
事務所名:神戸シーサイド法律事務所
事務所URL:http://www.kobeseaside-lawoffice.com/